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安倍政権「消費増税の影響は小さい」は大嘘、庶民は必死に生活防衛している=斎藤満

10月の消費増税について、政府見解では事前予想も10月以降の評価も「影響は小さい」というものでした。しかし実際には、駆け込みも反落も起こっています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年11月22日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

やっぱりあった駆け込みと反落。景気悪化はさらに加速する?

消費増税、政府見解は「影響軽微」

10月からの消費税の引き上げについては、事前予想も、10月以降の評価も「影響は小さい」というものでした。

政府日銀からは、そもそも税率引き上げが前回の3%に対して今回は2%であること、食料などに軽減税率が適用されたこと、10月以降、自動車や住宅購入に減税をするなど、各種駆け込み抑制策の措置をとったこと、などが挙げられました。

実際、14日に公表された7-9月期のGDP(国内総生産)を見ると、家計消費が実質で0.4%増に留まり、4-6月の0.6%増よりむしろ低い伸びとなっていました。

これを見て、多くのエコノミストの評価も「やはり駆け込みは小さかった」ということになりました。

しかし、ここには大きな落とし穴がありました。

実際には小さくなかった

4-6月期の前期比0.6%(年率2.4%増)という消費の伸びが、あたかも実勢の伸びと考えること自体が間違いです。

今年の大型連休で家計消費が大きく盛り上がり、実力以上の伸びとなっています。実際、その後6月、7月にはその反動減が見られました。

内閣府の消費総合指数では、7-8月の消費水準は4-6月水準を0.8%も下回っていました

そこへ9月に大きな駆け込みがあって、最終的に7-9月全体が0.4%増となったのですが、これは9月の消費総合指数が前月比4.1%増と大きく盛り上がった結果です。

日銀の消費活動指数でも9月は前月比で3.5%増となり、総務省の家計調査(2人以上世帯)では前月比5.5%増と、大幅な増加が見られました。

家計調査の結果を世帯別に分けてみると、前年比の増加ベースで、勤労者世帯が8月の1.4%増から9月は7.7%増に高まったのに対し、無職世帯(年金世帯)では8月から3.8%増に高まっていて、さらに9月は11.9%増に高まっています。

つまり、収入が限られ、先細りの年金を考え、高齢者が必死に増税前の駆け込みで生活防衛をしていた姿が伺えます。

つまり、7-9月全体が穏健な伸びであったことをもって「駆け込み」が小さかったとすることはできず、ベースの消費力が低下している中で、必死に駆け込んだ結果が、7-9月の0.4%増につながったと考えられます。

そうであれば、10月以降の消費に相応の反動減が予想されます。

Next: やっぱりあった駆け込みと反落。自動車・百貨店・スーパーの売上で一目瞭然に



10月のデータに反落

実際、まだ限られたデータしかありませんが、10月の結果が判明している一部の消費データには、明らかに「反落」が見て取れます。

まず、駆け込み、反落の影響を緩和するために10月から減税手当てをした乗用車販売を見ると、9月の登録台数が前年比13.6%増と、8月の4.9%増から大きく高まった後、10月は25.1%減と、大きく反落しています。

また百貨店売り上げも9月には高額品を中心に大きく伸びましたが、大手5社についてみると、9月の売り上げが前年比26.8%増となったあと、10月は18.6%減と、やはり大きく反落しています。

自動車も百貨店売り上げも、消費増税以外に10月は異常な豪雨で店舗が閉鎖されたり、営業時間が縮小したりという天候要因もあったと見られます。

そこでこれらの影響が比較的小さいと見られるナウキャストのJCB消費ナウや、日経CPIナウでスーパーの売り上げをみると、いずれも9月の前年比9%台の増加から、10月は6%余りの減少となっています。

結局、大方の予想に反して、最後には相応の「駆け込み」があり、その反落の影響が実際に見られます

今後に出るほかの指標でも、同様の弱い動きが予想されます

台風の影響が追い打ち

10月以降の消費データには、この消費税前の駆け込みの反動、増税による実質購買力の低下がダブルで効いてくるうえに、今回の台風並びに豪雨災害の影響も出ます。

3つの重しが当面の消費を抑制します。

そして台風被害の修復コストが、消費増税とは別の形で被災者のコスト増となります。このコストは、一部住宅の修理として「住居費」の増加をもたらし、家財の買い替えが消費支出を増やす面があります。

前者は主に11月以降住宅関連支出の増加をもたらす一方、後者は一部10月から買い替えの影響が出る面がありますが、これは被災者の購買力を大きく圧迫します。

その購買力圧迫が、その後かなり長期間消費を圧迫する可能性があります。10-12月の個人消費には災害による大きなマイナス効果と、使えなくなった家財の買い替えが重なる面があり、年明けにはこの損失効果がしばらく尾を引くと見られます。

災害復旧が進む過程では「復興需要」も出ますが、これは主に公共事業分野と住宅投資が中心となります。一方、個人消費面では、被害を受けた家財の購入を考えても、当面はマイナス面がより大きいと見られます。

政府は急遽、台風被害を「激甚災害」指定し、政策支援に乗り出しましたが、応急住宅修理に向けての居住者への救済の多くは12月以降にずれ込み、景気対策では電線の地下埋め込みなどを計画しています。

これらは年明けのGDPに反映される可能性があります。この結果、今年10-12月期のGDPは大きなマイナス成長となる可能性があります。

Next: 消費増税のダメージは小さくない。「歴代最長」安倍政権には厳しい船出



消費増税のダメージは小さくない

10月以降、キャッシュレス化によるポイント還元で、コンビニの客足は増えているようですが、全体としてみると、消費税の影響は、予想以上に大きかった駆け込みの反落と、消費増税効果、そして台風被害が重なって、政府のシナリオよりは厳しい結果となりました。

歴代最長となった安倍政権には、厳しい船出となりました。

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2019年11月配信分
  • 駆け込み消費は小さくなかった(11/22)
  • 今日版金融危機のマグマが蓄積(11/20)
  • 過去最長の景気拡大を更新する米国(11/18)
  • 世界に波紋を広げる香港の混乱(11/15)
  • トランプ再選阻止を狙う真の敵は(11/13)
  • 国民と乖離した改憲論議(11/11)
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  • バブル相場の様相(11/6)
  • FRBの判断を揺るがす3つの力(11/1)

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マンさんの経済あらかると』(2019年11月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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