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日本財政の臨界点。我が国のバランスシートが示す「2020年危機」=吉田繁治

政府の資産と負債を対照させたバランスシートは最近どうなっているか。小泉改革の2003年度から、企業会計に準じたバランスシートが公開されています。一般会計(歳出96兆円:15年度)と、複雑な特別会計(歳出純計195兆円:15年度)の資産・負債を連結したものです。

この貸借対照表を最初に作った2002年3月末の資産は765.3兆円、負債は992.7兆円、債務超過は227.4兆円と、まだ穏やかな金額でした。その後、2013年3月末までの11年間で、債務超過額は490.4兆円へと263兆円増加しました。1年平均で23.9兆円です。

政府の債務超過額は、資産の増加より負債の増加の速度が速いため、1年にほぼ23.9兆円平均で増加します。

政府の債務超過は、2020年までの近い将来に問題になるのか。問題になるとすれば、どういった内容か。問題でないとすれば、それはどういったことか。政府の資産と負債の内容を踏まえて今後の見通しの検討を行います。(『ビジネス知識源』吉田繁治)

【関連】高橋洋一氏「日本の借金1000兆円はやっぱりウソでした」論は本当か?=吉田繁治

「国のバランスシート」を読む~財政破綻を防ぐ対策は3つしかない

政府資産の中身を正しく理解する(1)

【政府資産:2013年3月末時点】

現金・預金 18.6兆円(現金と、日銀などへの預金)
有価証券 129.0兆円(財務省が管理している外貨準備)
貸付金 137.9兆円(自治体や政府系金融機関への貸付金)
運用預託金 104.8兆円(公的年金の基金の運用をGPIFに預託)
固定資産 177.7兆円(道路・河川、公共の建物、省庁の土地、建物、防衛、空港設備など)
出資金 66.3兆円(特別会計の独立行政法人、国立大学、国際機関への出資金)
その他資産 20.1兆円(未収金11.9兆円、前払い費用1.3兆円、その他資産6.9兆円)
資産合計 652.7兆円

平成25年度「国の財務書類」のポイント(一般会計・特別会計合算) – 平成27年1月 財務省主計局[PDF]
※1143兆円の負債に対応する不足資産は490.4兆円で、これが債務超過分です

【現金・預金:18.6兆円】

まず18.6兆円の現金・預金です。これは政府の省庁が管理している現金と日銀への資産です。これは政府の資産としてみていいでしょう。

【有価証券:129.0兆円】

次に有価証券です。主に、財務省が管理している外貨準備です。輸出で得たドルは、企業が銀行で円に交換します(ドル売り・円買い)。財務省は銀行に溜まったドルを買い上げ、外貨準備としています。外貨準備は、輸入するとき、銀行を通じて輸入企業が買うものです。貿易収支が黒字のときは、外貨準備は増える傾向になり、赤字になると減ります。

ただし財務省が貿易にかかわらず、通貨相場に介入するとき、主にドル売り(円高/ドル安を誘導するとき)やドル買い(円安/ドル高を誘導するとき)に使います。外貨準備の内訳は、なぜか財務省は公表していませんが、推計では80%くらいがドル預金やドル国債、15%くらいがユーロ、その他(ポンドや元など)でしょう。

外貨準備は、政府の資産と言えるかどうか。財務省は税金収入(政府の所得に当たる)でドルを買っているのではないからです。発行に国会の承認が要らない政府短期証券という短期国債をつくり、日銀と金融機関に売って円を得て、その円で買っています。

このため、政府の負債である政府短期証券(101.5兆円)が、ほぼおなじ額になっています。国のマネーを担当する日銀ではなく、財務省が外貨準備を管理するのは、自己の権益の拡張のためです。

【貸付金:137.9兆円】

貸付金では、地方自治体への貸付けが53兆円程度、郵政金融公庫16兆円、その他は、政府の所轄である独立行政法人への貸付けです。都市再生機構10兆円、奨学金の学生支援機構4.5兆円、日本政策投資銀行4.3兆円、国際協力銀行3.5兆円などです。約30の独立行政法人への貸付けです。国有空港もあります。全部が官僚機構と言えます。

皇居をめぐって虎の門や霞が関あたりをぶらぶら歩くと、こうした、大小の、一般に、知られていない独立行政法人がいっぱいありますね。

この貸付金も回収が可能かどうかは別にして、政府の資産と言えるでしょう。国債で調達されたマネーが、司法自治体と独立行政法人に流れています。

Next: 政府資産の中身を正しく理解する(2)固定資産は公共投資のカタマリ



政府資産の中身を正しく理解する(2)

【運用預託金:104.8兆円】

運用預託金は、公的年金(厚生年金、国民年金)の掛け金が政府に預けられたもの(国民の年金基金)を、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が預かって、内外の国債、内外の株、内外の債券で運用しているものです。年金積立金管理運用独立行政法人というような長い名前をつけるのが、行政の特徴ですね。

2015年の7月末(第1四半期)では以下の構成です。年金基金の運用総資産141兆円のうち、

・国債:53.5兆円(38.0%)
・国内株:33.0兆円(23.4%)
・外国債券:18.5兆円(13.1%)
・外国株:31.4兆円(22.3%)
・短期資産:4.7兆円 (3.3%)

2014年以前は、年金では長期で安全な運用が必要として、国債が65%でした。2014年11月からは、株を上げるという政府の意向を受け、国内株25%、海外株25%の運用枠に変更しています。

50%をリスク資産での運用に変えたのです。日本と米国の株価が上がるときはいい。問題は下がったときです。現在は平均すれば年間で20%の幅(VI:ボラティリティインデックス)で株価は上下しています。

このVIは1年間で現在の株価(1万9230円:12月11日)が、2万3000円へと20%上がる確率と、1万5380円へと20%下がる確率が50:50ということを意味しています。1万5000円付近に下がれば、大きな政治的問題になります。

2015年9月期には、中国株ショックからの下落で7兆円の運用損を出したと話題になりました。今後、大きな損を出すと、世論から、厚労省が「またやった」と非難されるでしょう。

GPIFの運用額は、国内株でも33兆円(15年6月末)と巨大なので、買ったものを売ることはできません。GPIFが損切りで売りに出たとすれば、株価は一層下がるからです。

「中長期(向こう3年)」で問題になるのは確実です。下がったら、どうするのでしょうか。安倍内閣の失政になることも、50%の確率で想定できます。

【出資金:66.3兆円】

高速道路保有・債務返済機構(6.6兆円)、日本郵政株式会社(4.5兆円)、日本政策金融公庫(3兆円)、国際協力銀行(2.3兆円)、政策投資銀行(2.5兆円)、日本たばこ(2兆円)、日本電信電話(1.8兆円)、その他空港、道路等、約30の独立行政法人、国立大学、政府系研究センター(100ヶ所くらい)への出資です。

これらはほぼ全部が「天下り先」です。政府が出資する必要があるのかどうか疑問です。日本タバコなどなぜ出資するのでしょうか。小保方さんの理科学研究所も混じっています。ただし、政府資産としては、勘定できるでしょう。

【固定資産177.7兆円】

固定資産は、まず国有財産が27.7兆円です。これは、土地11.9兆円、建物3.1兆円、工作物(橋など)が2.9兆円です。他に山林7兆円、船舶(自衛隊など)があります。

次は普通財産5.0兆円に分類されている土地4.3兆円や建物と工作物0.7兆円です。

更に公共用地38兆円と分類されるものがあります。河川の治水18.1兆円、道路19.7兆円、港湾、漁港などです。

加えて公共財産施設が106兆円です。内訳は海岸2.6兆円、土地改良4.9兆円、河川の治水47.5兆円、道路45.7兆円などがあります。

以上の合計が177.7兆円です。公共投資のカタマリが、政府の固定資産です。

Next: 換金性のある資産は、652.7兆円のうち37%の242.9兆円しかない



換金性のある資産は、652.7兆円のうち37%の242.9兆円しかない

以上の固定資産は、資産ではあります。しかしこれらをまとめた、

は、民間に売って換金できるものではありません。

金銭である国債の負債に対応する資産とは言えない。土地は、明治の過去から、政府が管理してきたものです。省庁の建物も売れるものではない。

河川に加えた治水工事(65.6兆円:国有資産の37.%)や、道路(65.2兆円:同37%を買う民間会社はない。例えば利根川を買っても、事業用資産としては意味がありません。公共投資をした資産ではあっても売れないもの買われないものは、換金性の資産価値はありません。

民間会社が、誰も買わない土地をもっていても、バランスシートでの有効な資産ではないことと同じです。

河川と山林は政府の管理ですが、ほとんど換金性がない。わが国の国土で山林は2500万ヘクタールで67%(2/3)です。世界平均の山林率は30%ですから、日本は世界より山林面積の割合が2倍多い。

政府は公共であり、その点で特殊です。しかし会計のバランスシートで負債と対照する資産では、換金性があるものでないと有効ではないように思います。

以上の観点で、資産のうち、会計的に有効なものを抽出すると以下になるでしょう。

【換金性の観点からの、資産の内容検討】

・現金・預金:18.6兆円(現金と、日銀などへの預金)
・有価証券:129.0兆円(財務省が管理している外貨準備)→政府短期証券と相殺される
・貸付金:137.9兆円(自治体や政府系金融機関への貸付金)→資産として有効
・運用預託金:104.8兆円(公的年金の基金の運用をGPIFに預託)→年金基金と相殺
・出資金:66.3兆円 →換金性あり
・固定資産:177.7兆円(道路・河川・山林、公共の建物など)→換金性が薄い
・その他資産:20.1兆円 →換金性あり

これらのうち、換金性のある資産は、[現預金18.6兆円+貸付金137.9兆円+出資金66.3兆円、経過勘定のその他資産20.1兆円=242.9兆円]です。総資産とされている652.7兆円のうち37%です。

財務省が資産として示す652.7兆円のうち、有価証券129.0兆円は、政府短期証券と相殺されます。運用預託金104.8兆円は、国民のものである年金基金と相殺されます。

河川と道路が130.8兆円(74%)である固定資産の177.7兆円は、ほとんど換金性がありません。

政府は、河川の工事に大きなお金を使っています。計上された土木工事費は、50年の耐用年数として減価償却された後のものです。河川工事には、100兆円以上が使われているでしょう。

次は、負債を見ます。

政府の負債1143.1兆円は、すべて換金性のあるもの

【負債の内容】

・政府短期証券:101.8兆円(外貨準備を買うための短期国債)
・国債:855.8兆円(建設国債260兆円、赤字国債449兆円、年金特例公債5.2兆円、財投債104兆円、復興債9兆円、原子力支援の交付国債1.3兆円など)
・借入金:28.4兆円 (原子力賠償支援などの借入金)
・年金預かり金:112.2兆円(国民年金、厚生年金等の基金)
・その他負債:45.1兆円(未払い金11兆円、預託金7兆円、責任準備金9.4兆円、退職給与引当金9兆円、その他負債8兆円など)
以上の負債合計:1143.3兆円

政府の負債1143.1兆円(2013年3月期)は、全部が換金性のあるものです。この中から対応している資産と相殺できる、政府短期証券101.8兆円(外貨準備と相殺)、及び年金預かり金112.2兆円(運用預託金と相殺)を引くと、929.2兆円になります。

以上を勘案し、換金性の資産と負債により、正味の政府B/Sを作ると以下になります。

資産 負債
現金・預金:18.6兆円 国債:855.8兆円
貸付金:137.9兆円 借入金:28.8兆円
出資金:66.3兆円 その他負債:45.1兆円
その他資産:20.1兆円
換金性資産合計:249.2兆円 負債合計:957.7兆円
債務超過:708.5兆円

多くの検討は、ここで終わっています。

必要なことは、

  1. 中央政府の税収の13年分もある債務超過の政府が、その後も新規の国債(利付き借用証)を、なぜ発行できているのか
  2. 10年後にしか返済されない国債が1%以下という低い金利で、金融機関に売れているのか

の検討でしょう。借り入れにおける金利の低さは、一般には、信用の高さを示します。

以上をどう判断したらいいのか、考えます。

債務超過の708.5兆円は、一般会計の税収(54.5兆円:2015年度)の13年分の債務超過です。税収は企業の粗利益に相当します。

1万分の1にすると、年間粗利益54.5億円の企業において、その13年分の資産(708.5億円)が不足していることになぞらえることができます。

民間企業なら、とうの昔に信用をなくし、支出に必要な借入ができずに破産しています。しかし実際には、政府は破産していません。

Next: 「日本政府の信用」という要素を加味して考えると?



「日本政府の信用」という要素を加味して考えると?

理由は、将来の収入(税収)や増税ができるという信用を政府がもっているとみなされているからです。国債の信用は、それを買う側が認定します。社債の信用を買う金融機関が決定することと同じです。この信用を金額にして入れると、以下のような想定バランスシートになるでしょう。

【信用という資産を入れた、政府のB/S】

資産合計:249.2兆円 負債合計:957.7兆円
将来の税収という信用:708.5兆円 債務超過:0

将来の税収が、債務超過を減らし、最終的にはなくしていくという想定信用を、資産としていれたものです。

個人になぞらえると、この意味は分かるでしょう。換金性の資産がゼロで、500万円の借り入れできたとします。債務超過が500万円です。これでも借り入れができたのは、貸した銀行が、将来の所得を予想し、(所得-消費=貯蓄)から返済ができると見ているからです。上のB/Sは、これと同じ考え方です。

【債務超過額は年々、大きくなる】

ただし問題になるのは、この債務超過額が年々大きくなることです。毎年の財政赤字のため、1年平均で23.9兆円は増えて行きます。ここをどう考えるか。

2017年4月からの消費税の増税(8%→10%)が、食品の軽減税をめぐって政治問題になっています。消費税1%は、2.5兆円の税収に相当します。2%で5兆円です。

この消費税を、ほぼ20%に上げることができ、政府支出が同じならなら、単純計算では、税収は25兆円増え、政府財政はバランスします。単純計算とは、増税によるGDPの低下を考慮に入れないものです。

ただし実際は、2015年現在で125兆円の、政府の消費的支出が年間で数兆円は増えているので、25%から30%の消費税になります。

【要点:日本は消費税25~30%に?】

国債を買う金融市場は、時期は不明でも将来は、日本は消費税25~30%になりえると見ているのでしょう。可能性がないなら、すでに国債は不良な債券です。現実は、不良な債券ではない。背理法ですが、健全債券とみなされるのは、将来の増税が期待されているからです。

5.社会保障の総体:政府=(一般会計+特別会計)

1年30兆円から40兆円の赤字を続ける財政の中で、最も大きく、しかも増えている社会保障費の内容を見て、今後どうなるかを考えます

年金と医療費が大きくなった政府の財政支出の減額は、実行されても、可能な額がとても小さいのです。最大限の可能性も、増えるのを止めるくらいです。社会保障費(116.8兆円)の支出と、その財源は以下です(2015年度)。

【政府、つまり、一般会計と特別会計を合算した社会保障支出】

支出 財源
年金:56.2兆円 保険料:64.8兆円
医療費:37.5兆円 政府負担:31.8兆円
介護費:9.7兆円 自治体負担:12.8兆円
その他福祉:13.4兆円 政府の資産収入:7.3兆円
支出合計:116.8兆円 財源合計:116.8兆円

社会保障費のうち保険料でまかなわれているのは、支出総額(116.8兆円:GDPの23%)のうち、55%です。45%にあたる52兆円です。

社会保険料(年金や医療費の掛け金)で足りない分は、政府負担31.8兆円、自治体負担12.8兆円、政府の資産収入からの補填7.3兆円、合計で51.9兆円の、政府部門の負担になっています。

それにしても、GDP(国民所得)が変わらない中で、年金、医療、介護を中心とする社会保障費は大きくなっていますね。数年前に100兆円を超えたと言っていましたが、今は116.8兆円です。2000年には78兆円でした。1年に2.8兆円(約3兆円:ほぼ3%)増えてきたのです。
日本の財政関係資料[PDF]社会保障給付費の推移[PDF]

【年金】

公的年金(国民年金、厚生年金)の加入者は6718万人(国民の53%)です。受給者は、3950万人に増えています。

国民のうち31%(3人に1人)が、2014年で年金受給者になっています(2014年3月)。1人当たり平均で142万円(月間12万円)です。夫婦2人なら20万円程度です。

【医療費】

医療費では、70%を占める健保・国保からの公的支出分が37.5兆円です。別に、個人負担が約30%あります(75歳以上は10%)。

公的支出分の、1人当たり医療費は年間30万円(月間2万5000円)です。家族3人なら、7万5000円/月ですから、大きな支出です。

なおこの37.5兆円は、わが国の全世帯の食料支出(月間7万円)とほぼ同額です。
(注)食料と医療産業は、同じ規模になっています。

9.7兆円に増えた介護費は増加率がもっとも高く、年率17%増(1.6兆円)です。10年後の2025年には、21兆円になるという(厚労省の想定)。商品産業は伸びませんが、介護事業だけは大きく増えます。

75歳以上の人口が現在の1645万人から533万人(32%)も増えて、2178万人になるからです。逆に、20歳未満は、2176万人から1849万人へと15%減ります。
介護給付と保険料の推移[PDF]

(1)公的年金(56.7兆円)、(2)医療費(37.5兆円)、(3)介護費(9.7兆円)を3大支出とする社会保障費は、116.8兆円です。

【不足分】

年金や医療費などの社会保険料からまかなえている分は、64.8兆円(総支出の56%)です。

足りない52兆円分を、

  1. 中央政府が31.8兆円
  2. 自治体が12.8兆円

税収と公債の発行で補っています。

不足分は、支出を抑えても約3兆円/年(約6%)は増えていきます。

社会保障費(116.8兆円)の削減は、政治的にも、シビルミニマム(国民の最低限の生活基準)の観点からも難しい。手をつけても、毎年の増加(3兆円)を抑制することしかできないでしょう。

Next: 「対外純資産があるから財政破綻しない」は誤り/2020年危機



「大きな対外純資産があるから財政破綻しない」という主張は誤り

わが国には大きな対外資産があるから、それを勘定に入れると、政府の財政は破綻しないという説があります。

対外資産は、過去30年の、経常収支の黒字の結果として増えてきたものです。経常収支は「貿易収支+所得収支」です。2011年の東日本大震災から、貿易収支は赤字になっていますが、所得収支の黒字が1年に23兆円(2015年暦年)あるので、経常収支ではまだ黒字です。

経常収支の黒字分は、資本の海外投資になり、投資の結果は対外資産になります。(2015年5月:財務省)

対外資産 対外負債
直接投資:143兆円 直接投資:23兆円
証券投資:466兆円 証券投資:244兆円
外貨準備:151兆円 その他投資:210兆円
その他:183兆円
対外資産:945兆円 対外負債:578兆円
対外純資産:366兆円

平成26年末現在本邦対外資産負債残高の概要 – 財務省

グローバル経済を反映し、対外資産は945兆円に増えています。直接投資(143兆円)は工場や店舗、オフィスです。証券投資は、その60%以上が米国債と米国株です。以上は民間の分です。

この中で政府の分は、外貨準備の151兆円($1=120円付近で時価評価)です。この外貨準備は、一般会計・特別会計の資産として、すでに計上されています。この外貨準備が、政府の資産として、別途あるわけではない。

海外からの負債は576兆円ですから、対外純資産は366兆円です。

対外純資産が、政府の資産としてあるわけではないのです。わが国は、大きな対外純資産があるから、財政は破綻しないという主張は誤りです。

結論:2020年頃の財政破綻は絵空事ではない

政府の債務超過は、

です(2013年3月期)。

債務超過額は、2000年代の傾向では、年間で25.9兆円増えています。ほぼ財政赤字分増えるので、今後も年間で30兆円は増え続けると想定しておかねばなりません。

最も金額と増え方が大きいのが社会保障費の116.8兆円です。この中で51.8兆円(44%)は、政府(中央政府+地方自治体)が、一般会計から補填しています。社会保障費の増加額は、抑制されても1年に3.5兆円はあります。

以上は、国債リスクが増して金利が上がり、国債の発行が困難になった結果である財政破綻に向かって突き進んでいることを示します。

なお対外資産(純資産で366兆円)は、民間の資産なので、これがあるから財政が破綻しないとは言えません。政府の対外資産である外貨準備は、政府のB/Sの資産にあらかじめ含まれています。

将来の破綻を防ぐ対策は、単純です。3つしかない。

  1. 財政支出の削減
  2. 増税
  3. 政府の債務比率(政府債務/名目GDP)が大きくならないように、名目GDPを年率3%以上で増加させる

現在、名目GDPの増加はほぼ0%です。(1)(2)(3)のそれぞれの可能性を検討し、その実現が想定できないときは、2018年(早ければ2017年)ころから債券市場の金利が上がり、2020年頃の財政破綻となるでしょう。

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ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』(2015年12月7,14日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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