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翔べ!上海総合指数~株価底割れを救った証監会主席の発言(全人代)=田代尚機

上海総合指数は3月11日(金)の前場、安値2772.55ポイントを付けた後、この日を含め、18日(金)に至るまで6連騰を記録した。昨年来安値2638.30ポイント割れは遠のき、上昇トレンドを維持できたと言えよう。これは国家隊の買い支えによるものである。(『中国株投資レッスン』田代尚機)

下げた時だけ悪者にされる上海総合指数、上昇トレンドを維持

中国証券監督管理委員会トップの発言が本土株の底割れを救う

上海総合指数は3月11日(金)の前場、安値2772.55ポイントを付けた後、この日を含め、18日(金)に至るまで6連騰を記録した。

18日の高値は2971.55ポイントで、終値は2955.15ポイントである。11日の安値と比べると、それぞれ7.2%、6.6%上昇している。

テクニカルに見れば、重要なポイントが2点ある。

1つは、2月下旬、3月上旬の高値、正確に言えば2月22日の高値2933.96ポイントを超えてきたことである。

まだ3000ポイントを少し越えたあたりに1月中旬の持合い圏があり、そのあたりでは売り圧力が高まりそうだが、それを抜ければ3300ポイント超えが見えてくる。少なくとも、“下落トレンド継続、1月27日の昨年来安値2638.30ポイント割れ”は遠のいた。

上海総合指数 日足(SBI証券提供)

もう1つは、18日の売買代金が大きく増えたことだ。

18日の上海市場における売買代金は3282億元であり、前日と比べると、1144億元も増えている。これは2度目のサーキットブレーカー作動後となった1月8日に次ぐ大商いである。様子見を続けた投資家の多くが買いに転じたことを示しており、今後の相場に期待が持てそうである。

11日以降の動きを振り返ってみると、小型材料株のウエートの大きな深セン総合指数では、15日(火)、16日(水)それぞれ0.93%下落、1.02%下落している。

この2日間について、上昇したセクターをみると、銀行、保険、石油化工、中央系国有企業などで、大型株が買われている。一方、出来高を伴い大きく上昇した18日には、これらのセクターはもっとも上昇率の低いセクターとなっている。

上海市場においても、上昇したのは大型株だけで、8割方の銘柄は下げるといった“二八現象”であった。

国家隊による買い支え

状況証拠を見る限り、国家隊の買い支えがあったから、上海総合指数は上昇トレンドを維持できたと言えよう。

投資家の間では、両会(中国共産党全国人民代表大会と中国人民政治協商会)開催期間中である3月3日から16日までは“国家隊による買い支えによって相場は安定が保たれる”といった見方が大勢を占めていた。

両会開催期間について、毎年そうした安定化策が採られるわけではないが、今回は1月以降下げ相場が続いており、上海総合指数は2月29日、2.86%下落、一時は1月27日の場中に記録した安値2638.30ポイントにわずか0.66ポイントに迫るところまで売り込まれた。

普段から、欧米マスコミは、中国経済のハードランディングや資金流出による金融危機などを喧伝している。

こうした外部要因がある中、共産党、国務院は、今後5年間の国家計画となる第十三次五カ年計画を審議する大事な会議開催期間中に株価が昨年来安値を切って下げるのはどうしても防ぎたかったはずだ。

Next: 李克強首相と証監会トップの発言/1月以降の急落要因はほぼ消滅



李克強首相と証監会トップの発言

ただし、国家隊がいつまでも相場を支えるわけにはいかない。一部の投資家は両会閉会と共に国家隊の買い支えが無くなるのではないかと懸念した。そうした懸念があるから、政治協商会議終了直後の15日、全人代終了の16日に一旦株を売る投資家が増えた。

それを国家隊が買い支えたことで、上海総合指数は形の上で上昇トレンドが保たれ、そうした状況を見て、投資家心理は回復、18日の急騰に繋がった。

李克強首相は全人代終了後の16日午後、定例の記者会見を開いたが、それが終わり退場するところで、華夏時報の記者が“首相、あなたは株式市場の先行きに自信はありますか?”と大声で質問したところ、“あなたが自信を持っているなら、私も自信があります”と答えている。中国市場において、投資家心理の重要性が伝わってくる話である。

1月以降の急落要因はほぼ消滅

今回の両会開催を通じて、1月以降の急落要因はほぼ消滅した。

特に、12日午後に行われた全人代第4回記者会見における証監会(中国証券監督管理委員会)の劉士余主席の発言が効いている。

「はっきりと皆さんに言いたい。中証金(国家隊の中核機関)の市場からの撤退について、私はまだ考えたことはない。今後、比較的長い期間、この点について語るのは時期尚早であろう」などと答えている。また、「今後、市場が完全に勢いを失い、急落するような状況では、果敢に市場救済の手を差し伸べる」と強調している。

証監会トップが自ら相場の下落を抑え、安定的上昇を誘導する考えを示したに等しい。

さらに、「株式発行登録制改革は必ず実行しなければならないが、単独でそれを行うことはできず、多層から成る資本市場の建設、改善、法治環境の改善などが、登録制改革を実行するための条件である」と発言している。

これで、当面の間、株式発行登録制改革は実施されないだろうといった見通しが市場に広く広がった。

海外のマスコミはしきりに中国経済の減速を話題にし、経済のハードランディング危機を強調しているが、本土の投資家でそのように考える投資家は皆無である。少なくとも、ハードランディングを懸念するような投資家は株など買うはずがない。

本土投資家のコンセンサスは政府見解と一致している。「景気減速はコントロールの範囲である。現状では供給側改革を加速する一方で、新規産業の発展を促すといった長期の経済政策をしっかりと実施すべきだ」と考えている。

表現を変えると、本土投資家は政策には敏感だが、景気の細かい動きには無関心である。

政策面では、李克強首相は自ら深セン香港ストックコネクトの年内開始を示唆している。

もう少し大きな視点でいえば、今年は第十三次五カ年計画の初年度である。政策情報は普段の年よりも多く発表されるだろう。

今年の本土相場は長い目で見れば上昇トレンドが出るだろう。

海外の投資家は、本土株式市場が上昇した際はほとんど話題にしない。今週がまさにそうである。上海総合指数は下げた時だけ海外市場の下げ要因とされる。

残念ながら、本土株式市場は構造的に不安定であり、今年も急落局面があるかもしれない。しかし、本土株の急落と中国経済の減速は無関係である可能性が高い。また、共産党、国務院は、実質的に株価の安定を政策目標としている。日本株を含め、中国株以外の株式を取引する際、これらの点をしっかりと意識しておいた方が良いだろう。
(3月19日作成、有料メルマガから一部抜粋)

【関連】中国が極秘裏に描く「世界金融戦争の終盤戦略」~金買い増しと資金流出のウラ

中国株投資レッスン』(2016年3月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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TS・チャイナ・リサーチの田代尚機がお届けします。中国経済や中国株投資に関するエッセイを中心に、タイムリーな投資情報、投資戦略などをお伝えします。中国株投資で資産を大きく増やしたいと考える方はもちろん、ただ中国が好きだという方も大歓迎です。

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