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注目の大型IPOフリーをはじめ、今年は55社中15社が赤字上場している背景とは?=柴山政行

個人事業主や中小企業向けにクラウド会計ソフトを提供するフリーが、17日に上場を果たしました。ここをはじめ、赤字上場が年々増えているのはなぜでしょうか。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)

会計ソフトのフリーが上場、赤字上場でも高評価

2020年6月期の最終赤字は、3,135百万円に上る予想

2019年12月17日の日経朝刊3面で、個人事業主や中小企業向けにクラウド会計ソフトを提供するフリーが、17日に東証マザーズへの上場を果たしました。
※参考:会計ソフトのフリー17日上場、赤字上場への評価占う‐日本経済新聞(2019年12月16日公開)

上場時の株式時価総額は900億円を超えます。いま、ヤフーファイナンスを見たら、終値で2,700円(※編集注:12月17日)、時価総額は1,259億円となっていました。

明日以降の値動きが注目されるところですね。ちなみに、フリーのIR情報ではどのように発表されているでしょうか。

freee株式会社(本社:東京都品川区、CEO:佐々木大輔)は、2019年12月17日をもちまして、東京証券取引所マザーズへ新規上場いたしました。

ここに謹んでご報告申し上げますとともに、これまでの皆さまのご支援、ご高配に心より御礼申し上げます。

当社は、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、スモールビジネスこそ、クラウドやデータやAIといったテクノロジーを活用することで圧倒的に強くスマートになることができると考え、上記のミッションの下、「アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」をつくるというビジョンの実現に向け、革新的なサービスを提供し続けてまいります。

詳細につきましては、日本取引所グループのウェブサイト「新規上場会社情報」をご参照ください。

出典:東京証券取引所マザーズへの上場のお知らせ

フリーは、私たち会計人の間では、わりと親しみのある会社です。まわりで利用している税理士先生もけっこういらっしゃいますしね~。

ただ、最近の急な値上げについては異論があって、どうなのかな?という見方がされています。

さっそくフリーの直近における決算書を見てみました。

<2019年7月~2019年9月(2020年6月期第一四半期)>

売上高1,491百万円
営業利益△486百万円
経常利益△488百万円
純利益 △490百万円

総資産6,811百万円
純資産4,111百万円

自己資本比率54.3%

<2019年7月~2020年6月(2020年6月期)の連結業績予測>

売上高6,941百万円
営業利益△2,876百万円
経常利益△3,127百万円
純利益 △3,135百万円

Next: 営業赤字で上場する企業は年々増加、その理由とは?



なんと、今年の上場企業のうち17%にあたる15社が最終赤字

上場初年度の業績予想が28億円の営業赤字となっています。

新聞によりますと、日本で今年上場する86社のうち、17%にあたる15社が最終赤字だったそうです。

赤字で上場するケースは年々増加傾向にあり、過去10年間で最も高い水準となっています。

赤字上場が増えている背景として、企業や投資家が目先の利益よりも将来の事業拡大を見込んで先行投資する姿勢を強めている状況があります。

昨今のカネ余りも先行投資を後押しする結果に繋がっているという見方もできます。

これは私の個人的な見方なのですが、株式投資の対象になる企業の属性を(1)成熟型(2)成長型(3)ベンチャー型の3つに分けて考えるとわかりやすいと思います。

伝統的なファンダメンタルズがもっとも有効なのが成熟企業です。財務分析や企業分析を行ってあるべき企業価値を推算し、それよりも現実の株価が大幅に割安と思ったら仕込んで、株価が戻るとかさらに上がったら利益が出る、というシナリオがひとつ、思い浮かびます。

トヨタとか日立とか、三菱とか三井とか、過去の業績の延長で未来を考えやすい老舗の会社ですね。

こういった銘柄は、おそらく5~10億円単位とか、かなり多額の資産をお持ちの方が手堅く運用することで、もともとの分母が大きいためにそれでも良い収益が手に入るのかな~という感じです。

年7~8%以上の高成長を継続して見込めるなら、成長企業かな、というイメージですね。

ここは短期間で2倍とか3倍とか、上手く弾けると10倍以上の株価もまれには期待できそうです。成長期のヤフーとかファーストリテイリングなどは、これに当てはまっていたと思います。

3つ目はベンチャー系で、当社は赤字がガンガン出ていても、斬新さと将来の大化けキャッシュを狙って勝負!みたいな感じでしょうか。今回のテーマとなっているフリーは3つ目の類型として考えることができます。

今の日本の閉塞感を打破するために、元気な企業がドンドン出てきて欲しいですね!

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image by : kenary820 / Shutterstock.com

時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年12月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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