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米3月雇用統計展望~レンジブレイクには利上げ見通しの大幅修正が必要に=ゆきママ

いよいよ4月1日の21:30に「米3月雇用統計」が発表されます。今回はアメリカの利上げという問題も絡んでくるだけに難しいイベントとなりますが、皆様が攻略をするうえで役立つように、ポイントや市場動向などを丁寧に解説していきます。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

基本的に為替相場は大きく動かずと想定。レンジブレイクの条件は?

今夜は荒れるか、荒れないか。留意すべき2つの懸念点

今回の雇用統計を考えるうえで、気がかりな点が2つあります。

1つは、4月1日という月初の発表ということで、先行指標として活用されているISM非製造業景況指数・ISM製造業景況指数の雇用指数がわからないため、事前の予想が難しくなっていることです。もともと予測するのが困難とされている雇用統計ですが、今回は判断材料が少ないため、普段よりもエコノミストの事前予想の精度が低くなってしまうかもしれません。

2つめは、そもそも3月という月そのものが下振れしやすいことです。近年はその傾向が顕著で、3月の非農業部門雇用者数は過去8年で7回も予想を下回っており、特に昨年2015年は+12.6万人と予想値の+24.5万人を11.9万人も下回り、2001年以降の中で最も大きな乖離(かいり)を記録しています。理由としては、天候不順の影響があると指摘されています。アメリカの人口が集中している東部地域は、実は3月の降水日数が他の月と比べてかなり多い傾向があるほか、ここ数年はこの時期に大寒波が押し寄せています。ですから、天候が統計を歪めていることは想像に難くありません。

したがって、今回は予想が大きく外れ、為替の動きもいつも以上に荒れる可能性があることにご注意いただければと思います。発表前にポジションを整理しておくといったリスクコントロールも、念のためやっておくと安心でしょう。

今回のメインシナリオ

事前予想を確認すると、今回3月の非農業部門雇用者数は前月比で+20.8万人。前回2月の+24.2万人からやや鈍化する見通しとなっています。2月分が比較的強い数字だったことや、先ほども書いたような季節特有の下振れのしやすさも考慮すると、今回は予想を下回ってくる可能性が高そうです。

とはいえ、すでにほぼ完全雇用に近い状態とされる中では、+10万人以下というようなよほどの結果にでもならない限り、値動きも一時的になるのではないかと思われます。

賃金上昇率(平均時給)については、2月が前月比−0.1%と増加予想に反して減少しましたが、3月は+0.2%とやや控えめな予想となっています。ここは前月からの反動を期待したいところです。前月比ですので、景気が堅調さを維持している限り、下振れした翌月は強めの結果になりやすいですからね。

加えて、全米最大手の小売りチェーン・ウォルマートが2月20日付けで賃上げをすると発表していたことも見逃せません。雇用統計のデータは毎月12日を含む週で算出していますから、2月分は2月7日〜13日となります。つまり、2月分はこの賃上げが反映されていません。なんといっても、ウォルマートは総従業員数が220万人という超巨大企業ですから、この賃上げの影響を無視することはできないでしょう。もしかすると、賃金上昇率は反動も含めて意外なほど強い結果となることもあるかもしれません。

というわけで、メインシナリオとしては、非農業部門雇用者数は予想(+20.8万人)を下回るものの、賃金上昇率が予想(+0.2%)を上回り、全体として相殺することになると考えており、為替相場もそれほど大きくは動かないことを想定しています。

Next: 利上げ見通しに大幅な修正が入れば、レンジブレイクも



利上げ見通しに大幅な修正が入れば、レンジブレイクも

為替相場は大きく動かないと想定していますが、私も含めてトレーダーの皆様はそろそろレンジブレイクを期待していることでしょう。例えばドル・円であれば、1ドル=110〜115円というレンジ相場から上下のどちらかに動いて欲しいですよね。ただし、こういったトレンド発生のためには、利上げ見通しに大きな変化をもたらすような結果が必要となるでしょう。

ここでは利上げと雇用統計がどのように値動きに結びつくかを解説していきます。

まず、利上げに関して、これまでの経緯と値動きを簡単におさらいしていきましょう。

3月16日のFOMC(連邦準備制度理事会)で、今年の利上げが2回という慎重な姿勢が示されました。これによって、4月利上げはありえないとされ、下手をすると6月も難しいのでは?といった見方から米長期金利(10年債利回り)が低下し、1ドル=110円台まで押し下げられました。

しかしながら、FOMCの翌週には、そのメンバーである各地区連銀総裁が真逆のスタンスとなり、4月利上げの余地もあるといった内容の発言を繰り返しました。

市場参加者は流石に4月に行われるとは考えていないでしょうが、6月にはかなりの可能性があると感じ取り、見通しが修正されて1ドル=113円台後半まで値を戻しました。

この一連の流れを見るに、一段高となって1ドル=115円台達成のためには最低でも4月利上げが強く意識されるような内容が必要となりますし、逆に再び1ドル=110円台を試すには、6月の利上げが完全に消滅するような数字が必須と言えそうです。そして、具体的な数字としては、賃金上昇率が最低でも前月比+0.5%以上となり、前年比で2%台後半となれば、4月の利上げが意識されることになるでしょう。

米ドル/円 週足(SBI証券提供)

やはり、経済において賃金上昇というのは景気のクライマックス段階です。裏を返せば、賃金がしっかりと上昇し始めたら引き締めを行わないと過熱しすぎて、景気の好循環が短期間で終わってしまうことになります。中央銀行の役割として、できるだけ長く好景気を維持するということがあります。

賃金インフレのプレッシャーというのは我々が思っている以上に強いので、賃金が大幅に上振れした結果となった場合には、4月利上げの思惑からドル相場が大きく上昇することが考えられるでしょう。

一方、6月利上げが消滅するような数字を考えると、非農業部門雇用者数が+10万人を下回り、賃金上昇率も2ヶ月続けて前月比マイナスということになりそうです。こういった数字を見せられてしまうと、利上げどころかアメリカ経済そのものに疑義が生じかねませんからね。この結果に加え、通常であれば利上げ後退を好感して上昇する株価が下がるのであれば、1ドル=110円割れを試す可能性がより高まるといえるでしょう。

このように、ドル・円相場のレンジブレイクとなるためにはかなりの結果が必要となりますので、可能性は低そうです。しかし、それでも先に書いたウォルマート効果などで賃金が猛烈に切り返してくることは、決して考えられないわけではありません。これらのことを踏まえたうえで、4月1日の雇用統計に臨んでいただければ幸いです。

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