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ソフトバンクグループ株に大異変、会社は存続しても孫さんはいなくなる?=今市太郎

新型コロナの話題に隠れながら、日々様子がおかしくなりはじめているのがソフトバンクグループ株の状況です。会社は存続しても、孫さんはいなくなるかもしれません。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年4月3日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

ソフトバンクグループの様子がおかしい……

ここのところ金融市場はとにかく新型コロナ一色で、それ以外の材料はあまり大きな話題になっていません。

しかし、そんな新型コロナの陰に隠れながらも日々様子がおかしくなりはじめているのが、ソフトバンクグループ(SBG)株の状況です。

日経平均に対する寄与度も大きな銘柄だけに、ここからのこの会社の動向が非常に気になるところとなってきています。

孫さんの支配権維持のために4.5兆円資産売却と自社株買い決行か

SBGに関しては様々なメディア報道が出ているので、詳細を語ることはやめておきます。

非常に簡潔に事の経緯を説明させていただくと、3月23日、前週にあたる19日にSBG株価が2,700円を割り込む下落となったことを受けて、同社は突然、詳細は不明ながら4.5兆円の資産売却と2兆円の自社株買いを場中に表明。これを好感して株価は大きく値を戻す展開となりました。

ソフトバンクグループ<9984> 日足(SBI証券提供)

一時は4,000円を超えるストップ高まで示現することとなりましたが、その後は3,500円を割り込むなど、連日上下動の激しい値動きを継続中です。

この発表があった時のSBGの株価は2,500円に近づこうとしていたわけですから、このタイミングでの2兆円の自社株買いはほぼ発行済み株価の半分の買い戻しという猛烈なボリュームでありました。

これを市場が好感しないわけはなく、見事に孫さんの思惑通りこの発表でSBG株は大きく値を戻して、一旦は危機を脱することになりました。

Next: しかし話題に事欠かないのがSBG。孫さんがこの2週間あまりで融資の担保――



大量保有報告書で孫さんの担保株追加差し入れが判明

しかし話題に事欠かないのがSBGです。

孫さんがこの2週間あまりで融資の担保として、同社株式1,010万株を追加で融資を受けている20社あまりの金融機関に差し入れていることも判明し、孫さんが金融機関からの融資の担保としているSBG株は2億2,700万株、時価ベースでは8,700億円相当となったことが判明しました。

今回差し入れた1,010万株(およそ400億円相当)は、いわゆる追証にあたるもので、SBG株が2,500円に近づくと株の担保が不足してしまうことも市場に明らかになってしまったことになります。

孫さん自身はまだ時価で1.3兆円程度の株を保有していますから、こうした状況でも特段大きなリスクがあるわけではありません。

しかし、追加担保として差し出しても時価総額分丸々が融資されるわけではありませんから、ここからさらにSBG株が大きく下落して株の担保価値がなくなれば、孫さんは残りすべてを差し入れるか、担保株券を失うことになりかねず、結構クリティカルな局面に差し掛かっていることが明らかになってきているのです。

オーナー自らの支配権維持のために資産売却、自社株買いは許される?

簡単に書きますと以上のようなことが起きたわけですが、この話にはさらにおまけがあります。

3月25日にムーディーズが同社の格付けを「Ba1 → Ba3」へ、平たく言えば典型的なジャンク債に引き下げたことから、「ムーディーズの格付けの取り下げについて」という怒りのリリースを公表し、大喧嘩の様相を呈することとなったのです。
※参考:ムーディーズの格付けの取下げについて(PDFファイル) – ソフトバンクグループ株式会社

この格下げ話は確かに余計なものとなっているわけですが、SBGはアーム、スプリント、ビジョンファンド、携帯のソフトバンク、そして中国アリババという企業の保有株式を31.1兆円維持しているわけですから、すぐに経営が危ないという状況にはないことは明らかです。

しかし、自社の株価を維持するためだけにそのうちのどれかは不明でも4.5兆円分を売却し、2.5兆円あまりは借金返済に充てて、残りの2兆円を自社株買いしますというのは、究極の株主還元のように見えますが、最も得しているのは孫さん自身で、経営支配権を維持し、金融機関に差し出している株の担保価値を維持するためにやっているとしか見えません。

この点はコーポレートガバナンスという視点から見ても、相当おかしな話と言わざるをえません。

たしかに、孫さん支配による企業としての存続ははかれるのでしょう。

しかし、4.5兆円もの保有資産をさっさと売却しても、(当座の資金繰り的には都合はいいかもしれませんが、)企業活動としてはなんの価値もないもっぱら帳簿上で株とカネをこねくり回す作業にしかなっていないことが非常に気になるところです。

Next: 過去には借金をして土地を買い、その価格が上昇したことをレバレッジに――



負債と資産の両建て手法には必ず終わりがやってくる

過去には借金をして土地を買い、その価格が上昇したことをレバレッジにしてさらに新しい土地と店舗を獲得するという、高度成長期におけるダイエーの負債と資産両建ての経営があったことを思い浮かべます。

また、株の分割で不可解な錬金術を繰り広げた挙句に破綻となったライブドアの問題も頭をよぎるものとなります。

いずれにしても、アップルやアマゾンなどの巨大な米系企業が新型ウイルスの影響下にあっても粛々とその本業となる事業で売上と収益を伸ばしているのとは、まったく別物であるのがSBGの現状です。

足元のような株価が世界的に不安定な状況下では、保有株式資産が一気にその価値を失いかねないだけに、相当リスキーな状況になっているのは明らかです。

過去にも2,000億の資金でレバレッジバイアウトを利用してボーダフォンを手に入れた孫さんのことですから、こうした金融市場におけるさまざまな手法を手練手管で持ち出してくるのはお得意な領域なのでしょう。

それにしても状況はかなり悪くなってきているといえそうで、こうしたスキームをすでに事業の根幹に据えている同社のやり方には相当な違和感を覚える次第です。

ソフトバンクグループは残っても、孫さんは消える?

ここから先SBGの株価が大きく下落していくことになると、結果的にSBGという会社はなんとか存続しても、孫さんがSBGから消えることになるのではないかと危惧するところです。

昨年ZOZOの前澤氏が、株を担保にカネをひっぱり出して、結局会社を失ってEXITするという危機的な脱出に成功しています。はからずも孫さんは同様のスキームで窮地に立たされているところが、なんとも気になります。

そうでなくても新型コロナの件で不安の立ち込める市場ですから、SBGがまさかの事態に陥らないことを強く願うばかりの状況です。

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  • 新型コロナの陰に隠れて様子のおかしいSBG株~会社は存続しても孫さんはいなくなる?(4/3)
  • 新型ウイルス想定死者数まで示唆したトランプによる戦時内閣(4/2)
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今市太郎の戦略的FX投資』(2020年4月3日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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