コロナ禍で中国の横暴がより鮮明になった。マスク・防護服の輸出停止やオーストラリアからの牛肉輸入拒否など、経済的優位性をそのまま政治利用している。金融の覇者アメリカによる徹底的な中国制裁も秒読み段階に入った。(『j-fashion journal』坂口昌章)
※本記事は、有料メルマガ『j-fashion journal』2020年7月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
中国は「経済」で世界を脅迫した
中国の政治家・鄧小平(トウ ショウヘイ)は、改革開放と共に「アメリカに逆らわず、国際的に目立たないこと」を政治方針にしていたという。
それが功を奏し、発展途上の中国には世界中から資本が集まり、生産設備が集まり、技術やノウハウが集まった。
そして、世界は中国に市場を開いた。そして、世界の工場になった。
国際的な野心を見せなかった中国は、世界から安全な国と認識されていた。世界は中国を愛し、抱きしめた。そうすれば、中国は民主主義国家の友人にふさわしい国に変わっていくと考えたのだ。
しかし、中国の共産主義に対する信念は揺るがなかった。世界の工場となった中国は、その独占的な地位を利用し、政治的な取引の道具として使うようになった。それが最も明確になったのが、コロナ禍におけるマスクや防護服の輸出停止だった。
そして、「ウイルス感染源について第三者機関の調査に応じるべきだ」というオーストラリアの意見に対して、「オーストラリアから牛肉を輸入しない」という報復措置を打ち出した。
今度は、世界の市場としての優位性を政治利用したのである。中国は生産国の地位も市場としての地位も、すべてを政治利用することが明らかになった。
また、ウイグル人やチベット人の差別虐待も明らかになってきた。実質的な収容所に隔離し奴隷労働を強制するだけでなく、臓器売買の材料にしているとの噂も出ている。それが本当なら、最早、犯罪国家と言わざるを得ない。
金の卵を産む「香港」を殺した
香港は、中国の富を生み出す装置だった。欧米企業が中国市場に進出するとき、香港企業をエージェントに使うことが多い。香港なら法律が整備しており、アクシデントがあっても対応できるからだ。
直接中国に投資したり市場進出する場合、中国の法律の整備が不十分であるためにリスクが高い。
なぜか日本企業は、中国に直接進出することが多かった。中国政府も直接投資を推奨したし、日本政府もそれを後押ししていた。しかし、そのことが撤退時のリスクにつながっている。
アメリカは安全保障上の問題で中国に輸出を禁止している物資も多い。しかし、香港への輸出は自由だった。香港を経由することで、中国は必要な物資を調達できたのだ。
また、中国からの輸出も香港を経由することで自由な貿易が保証されていた。しかし、そうした香港の特例も「香港国家安全維持法」の発令と共に消えようとしている。
さらに、香港は金融の窓口でもあった。香港ドルを経由することで、中国人民元と米ドルを自由に交換することができた。
それが可能だったのも、アメリカが国際金融都市としての特権を香港に与えていたからである。世界の金融を支配しているアメリカが香港を特例から外すことはほぼ確実である。香港は、中国国内の一都市になってしまったのだ。
Next: 中国政府の振る舞いを見ていると、「権力さえあれば何をやってもいい」と――
すべてがお金で支配できるという錯覚
中国政府の振る舞いを見ていると、「権力さえあれば何をやってもいい」と思っているように感じる。そして、「権力を保証するのは経済力、つまりお金である」と。
「人間はお金で動くもの」であり、「買収こそ、個人をコントロールするのに最も有効な手段」である。
公式に入手できないものは、個人や企業を買収して入手する。技術やノウハウは個人を買収して盗めば良い。
もちろん、多くの国ではこうした行為は犯罪である。しかし中国では、法律よりも上位に共産党があり、共産党の意志とは首席の意志に他ならない。
独裁国家では、独裁者が何をしても良いのだ。
中国が反社会勢力に認定される日
中国は「世界の工場」「世界の市場」として、十分な力を持っていると認識しているのだろう。その力を政治的に使えば、世界は従わざるを得ない。少なくとも、中国に敵対することはないだろうと。
しかし、アメリカは中国を反社会的な存在に認定しようとしている。例え、マフィアに経済力があっても、真っ当な企業はマフィアとは取引しない。瞬間的な利益を得ても、最終的には社会的に葬られるからだ。
金で支配しようとしても、金を失えば力もなくなる。中国も富を失った途端に権力も失うだろう。
そのために、金融の覇者であるアメリカは戦略的に中国を締め上げようとしているのだ。
中国への資本のパイプを遮断する
アメリカは世界の金融を支配している。その代表がSWIFTである。SWIFTは《Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication》の略で、国際銀行間通信協会を意味する。
200以上の国や地域の金融機関1万1,000社以上が参加しており、そのネットワークを経由しないと送金情報を伝えられず、国際送金ができない。事実上の国際標準となっている。
アメリカは、これまでもイランに対してSWIFTによる経済制裁を行っている。制裁対象の国の銀行をSWIFTから外すことにより、海外送金ができなくなるのだ。
中国の銀行がSWIFTから外されれば、ドル建ての決済比率が高い中国の海外との貿易は成り立たなくなり、中国経済は壊滅的な打撃を受けるに違いない。
Next: これに対して、中国も座視しているわけではない。中国は、人民元の国際決――
中国経済に未来は暗い?
これに対して、中国も座視しているわけではない。
中国は、人民元の国際決済システム、国際銀行間決済システム(CIPS)を導入し、ロシア、トルコなど米国が経済制裁の対象とした国々の銀行が、このCIPSに多く参加している。
2019年4月時点でCIPSへの参加は89ヵ国・地域の865行に広がっており、国別の参加銀行数では第1位が日本、第2位がロシア、第3位が台湾である。
と言っても、現状では多くの貿易が米ドル建てで行われているのが現状である。中国経済の先行きについて楽観視できる要素はほとんどないのである。
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- 中国の経済成長が止まる理由(7/6)
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- アパレルDXについて考える(下)(6/29)
- アパレルDXについて考える(上)(6/22)
- モノ消費、コト消費からヒト消費(6/15)
- マスクから国内生産が立ち上がる(6/8)
- 香港国家安全法が日本経済に与える影響(6/1)
『j-fashion journal』(2020年7月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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