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スペイン風邪で45万人死亡も日本経済はすぐに復調?コロナ対策に近い当時の対応=久保田博幸

コロナ禍で各経済指数は軒並み過去最大級の落ち込みを記録しているが、1918年頃に流行した「スペイン風邪」の被害はどうだったのか。確認してみると、経済活動そのものには今回のコロナのように大きな影響を与えたようにはみえない。もしかすると一時的な影響が出ていたかもしれないが、歴史の記述に残るほどの影響ではなかったということなのであろうか。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)

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1920年前後の「スペイン風邪」は、日本経済に悪影響なし?

新型コロナウイルス感染拡大とそれを防止するためのロックダウン(都市封鎖)などにより、国内において経済活動にブレーキが掛かり、その結果、景況感を示すものなどの経済指数過去最大級の落ち込みとなった。

パンデミックの様相を強めたわけだが、パンデミックといえば1918年から1921年あたりにかけても「スペイン風邪」と呼ばれたパンデミックが発生した。

日本では1918年10月に大流行が始まった。当時の日本内地の総人口約5,600万人のうち約2,380万人が感染したとされる。最終的に当時の0.8%強に当たる45万人が死亡したとされる。

スペイン風邪の1回目の流行は 1918年8月下旬から 9月上旬より始まり、10月上旬には全国に蔓延した。流行の拡大は急速で、11月には患者数、死亡者数とも最大に達した。

2回目の流行は1919年10月下旬から始まり、1920年1月末が流行のピークとされた。

国内でも猛威を振るったにもかかわらず、この間の日本経済に対し、スペイン風邪は経済にそれほど大きな打撃を与えなかったとされている。戦後恐慌の原因としても、スペイン風邪の影響との表現は見当たらない。

当時もロックダウンに近い動きがあった?

それでも日本でのスペイン風邪の大流行は、各地で凄惨な被害をもたらしていた。当時のパンデミックに日本政府や自治体は手をこまねいていたわけでは当然ない。

スペイン風邪をどう予防したのか

ただし、注意すべきは当時、スペイン風邪の原因がウイルスによるものであるといった認識はなかった。ウイルスを観測できる電子顕微鏡が開発されたのは1932年であった。

それでも当時「流行性感冒」と呼ばれた「スペイン風邪」に対し、内務省衛生局は一般向けに「流行性感冒予防心得」を出し注意を呼びかけたとされる。

ここでは密に注意し、マスクをすること、掛かった場合にはなるべく隔離するなど、現在のコロナ対策と同様の対処・予防法を示していた。

各地での集会、興行、力士の巡業、活劇などは続々中止か、または閉鎖されていったともされている。現在のロックダウンほどではないものの、それに近い動きもあったようである。

Next: それでも当時の経済状況に確認すると、1918年11月にドイツ帝国の敗北に――



記録に残るほどの経済ダメージはなかった?

それでも当時の経済状況に確認すると、1918年11月にドイツ帝国の敗北により大戦が終結(これにはスペイン風邪が影響していたとされる)。これにより日本の大戦景気は一時沈静化する。

しかし、米国の好景気が持続すると見込まれたことや、中国への輸出が好調だったことにより景気は再び加熱し、1919年後半に金融市場は再び活況を呈し、大戦を上回るブーム(大正バブル)となった。

上記を見る限り「スペイン風」は、経済活動そのものには今回のコロナのように大きな影響を与えたようにはみえない。

もう少し精査しないとわからないが、もしかすると一時的な影響が出ていたかもしれないが、歴史の記述に残るほどの影響ではなかったということなのであろうか。

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牛さん熊さんの本日の債券』2020年7月13日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による

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