最近、寺の売買が活発化していることをご存知ですか?「宗教法人」を取得することによって買主が得られるメリットについて解説します。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
※本記事は有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』2020年7月20日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
宗教法人の買収が活発になっている?
最近、寺の売買が活発になっていることを知りました。実際に売買されているようです。
※参考:http://top1.moo.jp/itiran
売主としては、高齢化と後継者不在の問題、檀家離れや葬式で呼ばれることが減ることによる経営難などが売却理由のようです。
買主としては、不動産の取得名目というより、「宗教法人」を取得して税金対策にしたいという目的がメインのようです。
宗教法人を持つとすごく便利?
で、ちょっと調べてみました。宗教法人を取得すると、自動的に以下の事業を行えます。
(法人の目的に記載がなくても法人税法により認可されている)
・物品販売業(動植物その他の販売も含む)
・不動産販売業・不動産貸付業・駐車場業
・金銭貸付業・物品貸付業
・製造業(電気供給業・ガス供給業含む)
・通信業並びに放送業
・運送業並びに運送取扱業・倉庫業
・請負業(事務処理の受託を含む)
・印刷業・出版業・写真業
・旅館業・席貸業
・料理店業その他の飲食店業
・代理業(保険代理・旅行代理)
・仲立業(手形割引を含む)
・問屋業
・鉱業・土砂採取業・浴場業
・理容業・美容業
・興行業
・遊技所業(ゴルフ場・パチンコ・ゲームセンター含む)
・遊覧所業
・医療保健業(病院・診療所・介護含む)
・技芸教授業(公開模擬力試験・学力の教授を行う事業)
・信用保証業
・無体財産権の提供業(特許・著作権含む)
・労働者派遣業
宗教法人でこれらの事業をすると、株式会社よりも税率が35%安くなります。
たとえば、宗教法人名で土地を取得するとき、登録免許税・不動産取得税・都市計画税が免除。境内地として認められると固定資産税は不要。境内地を転売した場合、売却益には税金がからない。境内地以外の土地を転売した場合でも、所有期間が10年を超えていれば、売却益には無税。
なるほど。だから、寺の用地でマンション販売などが行われるんですね。
本業利益以外にも「非課税」がたくさん
また、本来の事業(お布施や寄付、お守りなどの授与)で得られたお金は当然、非課税。
さらに、そのお金を預けた銀行預金の利息、債権・株式運用された際の利子や配当までも非課税!宗教法人名で発行される領収書に対して、収入印紙は貼らなくていい!
また、上記の業種に該当する収益事業を行っていない宗教法人の場合、お布施や寄付金収入が年間8,000万円までなら帳簿を作る義務もなく、税務署へ申告する義務もない。
お布施と寄付金に関しては、年額8,000万円を超えても無税。宗教法人のお金は、宗教活動に関するものなら領収書なしで自由に使える。
税務署には申告書が来ないので、その宗教法人は何に金を使っているのか把握することはできない。実際、仮に年商が8,000万円を超えているかどうかもわからないので、実は売上が億単位あるのに、税務署に一度も申告したことのないお寺が東京にあるらしいです。
Next: あと相続対策ですね。宗教法人の相続は、代表役員の変更という登記だけで――
相続対策にもなる
あと相続対策ですね。宗教法人の相続は、代表役員の変更という登記だけで可能(登記手数料は無料)。
個人が宗教法人に寄付するのはいくらでも可能で、宗教法人側には、何億の寄付を受けようが税金は一切かかりません。
そして多額の寄付をした宗教法人の代表役員を子孫に変更登記すると、実質、無税で遺産相続ができます(現金ではなく、土地建物を宗教法人に寄付するときには、贈与税がかかる)。
株式会社からの寄付は株式会社側では損金算入できないが、金額は上限がないうえ、宗教法人への寄付は使途不明金には当たらないと言います。
人々が宗教法人を欲しがる理由
ほかにも、宗教法人を欲しがる理由を調べてみました。
・教祖になりたい
単立系の教派神道の宗教法人を禅譲されると、その日から教祖様です。
・納骨堂ビジネスや霊園経営をしたい
納骨堂や霊園は、地方公共団体か宗教法人にしか認められておらず、すでに寺を経営している人でも、納骨堂や霊園を作るには法人格が必要です。
いくつか調べてみると、実際に売りに出ている宗教法人がいくつもあり、金額も数百万円から数億円と幅広いです。新規に宗教法人として認められることはほとんどないようで、やはり買収&合併が中心のようです。
宗教法人の見分け方が重要?
そこで重要なのが、宗教法人の見分け方で、宗教法人には、「活動法人」と「不活動法人(休眠法人)」とがあるそうです。
活動法人の禅譲(代表役員の変更登記)を受けた場合には税金面での優遇が受けられるが、不活動法人(休眠法人)の禅譲を受けても、税金面での優遇が受けられない。
活動法人とは、1年間に1度、文化庁または各都道府県に、活動報告書を提出している法人のこと。不活動法人では、銀行で新規口座も作れない。
休眠法人に関しては、活動法人にする作業が必要で、
・新たに土地と3部屋(本殿・信徒控室・事務室)以上ある建物を宗教法人名で購入(休眠法人名であっても、土地・建物の購入は可能)
・その場所で3年間活動する
・活動していることの証明として、3年間の水道光熱費の領収書と茶菓子の領収書・集合写真が必要
税金面での優遇を受けられない、いわゆる使い物にならない宗教法人(休眠法人)は転売され続け、代表役員がころころと変わっているようです。なので代表役員がころころ変わっている宗教法人は、注意が必要です。
Next: また、都道府県知事が宗教法人として認証してくれないケースもあり――
一般人はまったく知らない「宗教法人の種類」に注意
また、都道府県知事が宗教法人として認証してくれないケースもあり、休眠の宗教法人を買う場合は事前に都道府県の宗務課などに確認が必要です。
宗教法人には、大きく分けて包括(本山)法人と被包括(末寺)法人と単立法人がある。
包括法人と単立法人については、禅譲を受けたい人に、現代表役員が資格を発行することができます。
しかし、被包括法人は、現代表役員の権限では、僧侶など資格発行ができず、包括(本山)法人が発行した資格がないと新代表役員になれません。
※例えば、浄土真宗大谷派のお寺(被包括法人)であれば、大谷派の僧侶の資格を持った人しか禅譲を受けることはできない。よって、一般人が禅譲を受けることはできませんので注意が必要。
宗教法人の所轄は、文部科学大臣所轄と各都道府県知事所轄とがあり、包括法人と2都道府県以上にまたがる単立法人が文部科学大臣所轄、他はすべて都道府県知事の所轄となっています。
また、文化庁が面倒を見ている文部科学大臣所轄の宗教法人のみ、全国どこにでも別院をつくることができる。
各都道府県知事所轄にある宗教法人は、その都道府県内での別の場所への移転やその都道府県内での別院を作ることは可能だが、他府県への移転は原則できません。
※法律的には可能だが、実際問題として各都道府県の宗務課・特に受け入れ側は認証しないことが多く、経験を積んだ上手な行政書士に依頼しない限り他府県への移転は難しい。
また、売主となる住職や神官から禅譲先の方に様々な制約がつくことがある。宗教者でないと売らない。外国籍の方には売らない。反社会的勢力には売らない。節税目的者には売らない。転売目的者には売らないなど。
賢い人は利用している?
なかなか面白そうです。買うならやっぱ自由な「単立法人」ですね。
しかし、遠隔地だとどうしても自分が直接関与できません。その場合、誰か信頼できる人に僧籍を与えて管理してもらう?でも人件費がかかるからなあ……。
断食道場・書道教室・瞑想教室・ヨガ・写経・水引アート・仏像彫刻・香づくり・おしゃれお守り販売などをやって稼いでもらうとか? 実際にいろいろやってますね。
※参考:https://www.machitera.net/events/search_events/?category_type_id=2
教祖様には興味はありませんが、頭の片隅に置きつつ、もう少し調べてみたいと思います。
それでM&Aサイトを見ていて感じたのですが、許認可が必要な事業であれば、買収という方法もあります。大きな欠損を抱えている法人を買えば、節税に使える。そんなふうに考えて賢く(ずる賢く?)やっている人もいるんでしょうね。
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- 宗教法人の買収を考えてみる(7/20)
- あきらめることは意味がある(7/13)
- 資本金は1円でいい理由(7/6)
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『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』(2020年7月20日号)より一部抜粋、再構成
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