マネーボイス メニュー

首相官邸HPは更新停止。安倍“歴代最長”首相が第3の矢を放たぬのはなぜか?=高梨彰

安倍首相が就任してから2,799日が経過し、史上最長の在任となりました。さて、安倍政権が掲げたアベノミクス「3本の矢」はどこに飛んでいったのでしょうか?(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)

※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年8月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

安倍首相、在任期間「歴代最長」に

安倍首相が2012年12月に就任してから2,799日が経過。佐藤栄作首相を抜いて史上最長の首相在任とのことです。

8年弱なので、米大統領の原則最大2期8年と比べると長いとも言い切れません。

安倍政権といえばアベノミクスの「3本の矢」です。すでにほとんどの人が忘れているかと思いますが、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3つで持続的な経済成長を目指すという政策です。

改めて「アベノミクス 3本の矢」を検索すると首相官邸のホームページがヒットします。このページ、冒頭に「現在更新しておりません」との注釈があります。恐らく政権発足から1〜2年経過したときのものです

ここには「成果、続々開花中」として、GDP(国内総生産)増加や株高、雇用改善など、桜の花びらと共に数値が並んでいます。その成果を語る文章の冒頭が興味深いです。「すでに第1の矢と第2の矢は放たれ」とあります。日銀が金利を引き下げ、国債や株など資産を買い、国は財政支出を増やした姿を示しています。

アベノミクスも「大企業病」で頓挫

その後、「第3の矢」はどうなったのでしょうか。このページには「最新の情報」へのリンクが張ってあります。このリンク先のページをみると「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」との見出しです。

新着情報として、今年7月30日の「未来投資会議(第42回)」開催を記しています。それまでも成長戦略関連の会議や提案を見聞きしたことはありますが、どれも「成果、続々開花中」の桜の花びらを見かけることはありません。

常識的な考え方に従えば、形式的な会合がダラダラ続いているだけ、という「大企業病」と同じ症状に陥っているようです。

多分、これがアベノミクス(というか日本経済)の障壁というか、ボトルネックなのだろうと考えられます。官僚人事まで操る現政権をもってしても、縦割り行政や既得権益など、旧来からの足枷を解くことは叶わない、そんな言い方も可能です。

Next: 首相官邸HPに描かれていた予言。アベノミクスは中途半端で終わる



放たれない「第3の矢」

元のアベノミクスのページに戻ると、第3の矢のところに「規制緩和でビジネスを自由に!!!」というキャッチコピーがあります。この言葉と共に、第1の矢ではスーツ姿だった男性が第2の矢でスーツを脱ぎ始め、第3の矢ではスーパーマンへと変身した姿が描かれています。

これ、アベノミクスの帰結を上手く示しています。財政政策が「機動的」だったかはともかく、第1(金融緩和)・第2(財政支出拡大)の矢は放たれました。ということは、現在の日本経済は、スーツ姿から上着を脱ぎベルトを外しつつある中途半端な状態です。

「株価は上がったけど、景気回復の実感はない」「景気拡大と言われ続けていたが、実は2年前から景気後退局面に向かっていた」、この状態を着替え中のアベノミクスは端的に示しています。

換言すれば、アベノミクスには「第3の矢」という成長余地が残っているとも。しかし、霞が関どころか、民間企業内でも小さな既得権益にしがみつく向きがゴマンと居ます。

この矢が放たれて初めて日本経済も覚醒すると当初は期待していたのですが、過去最長の強力政権をもってしても困難な現実を目の当たりにして、悲観が増すばかりです。

せめて現政権が終わるまでに、脱ぎかけのスーツをもう一度着直す作業くらいはやり切ってもらいたいものです。

今回のまとめ

・アベノミクスについて解説した首相官邸のサイト、含蓄ある内容です
・「3本の矢」により、スーツ姿の日本経済がスーパーマンへと変身します
・サイトの絵に従えば、現状はスーツを脱ぎベルトを外しただけの中途半端な状態です

続きはご購読ください。初月無料です

<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>

※2020年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2020年8月配信分
  • バトルを促すアメリカ、最高値更新続く(8/25)
  • スーツを脱いだだけの史上最長政権(8/24)
  • 趣向を変えて、「同飛車大学」の説明に挑戦(8/21)
  • 哲学の無いデータ、手間掛けても使い道ありません(8/20)
  • 規模の大きな成熟した経済、緩和効果は株価だけ(8/19)
  • ネットにも鉄砲行為(8/18)
  • 豊洲市場入口のウイルス対策に思うこと(8/17)
  • 再び頼りに、景気ウォッチャー調査と銅価格(8/14)
  • アメリカでは景況指数もインフレ率も上昇中です(8/13)
  • あれから35年、当時のチャートを見る(8/12)
  • 「秋には回復」と言っていたけど(8/11)
  • 根拠なき熱狂、「過小評価しちゃダメ」(8/7)
  • 同郷の20代、「原爆の日」はご存知でしょうか(8/6)
  • 米財政支援、GDPも株価も押し上げ(8/5)
  • 米ISM製造業、指数は強く、言葉は弱く(8/4)
  • 感染者データから緊急事態宣言は見込みがたいものの(8/3)

いますぐ初月無料購読!


※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年8月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】「今こそ投資を」「やめとけ」どっちを信じる?コロナで生まれた投資チャンスの正体=俣野成敏

【関連】なぜ富裕層は貯金が少ないのか? 凡人こそ「成金」から稼ぎ方を盗め=午堂登紀雄

【関連】米中「武力衝突」は8月15日が分水嶺。日本を財布扱いするトランプの選挙戦略=高島康司

高梨彰『しん・古今東西』』(2020年8月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

高梨彰『しん・古今東西』

[月額880円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
チーフストラテジストとして、年200回ほど発行していたメルマガ『古今東西』が、『しん・古今東西』としてここにリニューアル。株・債券・為替などの金融市場全般から、マクロ経済、市場心理など、「これ何?」なことを徒然なるままにお伝えします。四方山話も合わせ気軽に読めて、しかも相場を「自分で判断出来る」ようになるメルマガです。是非一度お試し下さい。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。