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韓国「出生率0.88」で消滅の危機。文政権は南北統一での解決を画策か=勝又壽良

韓国は日本以上のペースで人口減少が進んでおり、今年上期の出生率は0.88となった。国家存亡の危機と言える状況だが、文政権はわかっていて放置している。その裏には「南北統一」という大きな狙いがある。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2020年8月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

2020年上期の出生率は0.88

韓国の合計特殊出生率(1人の女性が生む子どもの数)は昨年、「0.92」と世界最低を更新した。今年に入っても減少しており、上半期は「0.88」と下げ止まることなく悪化が続いている。

韓国政府は文政権になってから、人口対策会議も開催せず放置したままだ。「出生は個人の選択」と、他人事のような認識に変わっている。

19年の合計特殊出生率の四半期別の数値を整理しておく。

1~3月期:1.02
4~6月期:0.92
7~9月期:0.89
10~12月期:0.85

昨年の上半期(1~6月期)の合計特殊出生率は、0.97である。今年の上半期は、0.88である。約10%の減少だ。ここから推定される今年の合計特殊出生率は「0.83」程度までの低下が懸念される。

この調子で低下すれば、来年は「0.75」近辺へ落ち込むだろう。

すでに昨年7~9月期に、ソウルの合計特殊出生率は「0.69」にまで低下しているのだ。韓国全体で「0.7」を割り込むのは、時間の問題であろう。国家存亡への危険な道を歩んでいるのである。

日本の合計特殊出生率は昨年「1.36」と、4年連続の低下である。国内では、事態を深刻に受け止めているが、韓国にはそういう議論さえ消えている。

一国の人口が、横ばいを維持するに必要な合計特殊出生率は「2.08」である。韓国は、すでにそのほぼ半分の「1」を大きく割り込んだままである。

合計特殊出生率が「1」を下回ったことは、一世代が過ぎれば出生数が現在の半分以下に減少するという意味だ。約30年後の韓国の合計特殊出生率は「0.5」を割り込むという話だが、現実はそれをはるかに上回る速度で低下している。

ここまで分っていながら、文政権は、「人口問題」へ真剣に取り組まないどころか、悪化を放置している理由があるはず。それが、何かを究明することが必要であろう。

Next: 人口激減は狙い通り?目的は「南北統一で人口減を補う」こと



南北統一で人口減を補う

私は文政権が将来、北朝鮮と統一することで、人口問題を解決する腹積もりであると見る。

この南北統一を前提にすると、人口は次のような規模(2019年現在)になる。南北朝鮮7,735万人(韓国5,170万人、北朝鮮2,566万人)と、英・独・仏と同レベルになるのだ。

ドイツ:8,313万人
フランス:6,706万人
イギリス:6,683万人

そこで、文政権はあえて人口問題に触れずにいるのだろう。韓国国内で自然発生的に、人口減少問題をきっかけに、「南北統一論」を高めようという狙いに違いない。

合計特殊出生率は、経済問題と大きく関わっている。失業率が高ければ結婚を見送る。それが、合計特殊出生率を引き下げるからだ。

文政権は、大幅な最低賃金引き引き上げによって失業率を高めるという、完全に誤った政策を行っている。国際機関からの是正勧告を無視しているが、それには前記のような明確な目的(南北統一)が存在するためであろう。

南北統一にあたって、韓国進歩派の先兵役は労組と市民団体である。これら本来の非営利・非政治の組織が、完全に政治と密着化しているのが韓国の特色である。文政権は、これら支持母体の支援強化策として、労組には最低賃金の大幅引き引き上げ。市民団体には手厚い補助金を給付している。その一環として強引に原発を廃止させ、太陽光発電で多額の補助金を市民団体に与えたのだ。

すべて手抜かりなく、南北統一への準備を進めている。

日本以上に人口減少が加速している

韓国の人口は、今年から自然減に入った。出生数よりも死亡数が多い結果だ。この事態は、これまで想定されていた時期を4年も繰り上がっている。

日本の人口減は、2008年に始まった。韓国の人口動態は、日本よりも約25年のタイム・ラグの存在が知られている。この間隔からすれば、韓国の人口減は2033年に始まってもおかしくなかった。それが、今年に繰り上がったのである。

韓国の少子高齢化がそれだけ、日本よりも早いスピードであることを示している。事態は、極めて深刻なのだ。

「全体主義」に向かう文政権

韓国国会では、与党の議席数が6割と絶対多数を占めてから、横暴な議会運営を行っている。これと軌を一にして、文政権も独断的な政権運営を行っている。

これに対して、警戒論が高まっている。野党の保守派はもちろん、学会進歩派の長老までが相次いで、「韓国政治の危機」を訴えるようになっている。

これは、韓国内部に容易ならざる事態が持ち上がっている結果だ。

当メルマガではこれまで、韓国政治の危険性を指摘してきたが、文政権の北朝鮮接近姿勢が露骨になっている。これと合わせ、韓国の政治体制を「全体主義」に変える意図が明確という指摘も出てきた。

その見解を精査することにしたい。

Next: 狙いは韓国の北朝鮮化? 文政権は、全体主義を民主主義と錯誤している



「全体主義」で危機に対応

盧在鳳(ノ・ジェボン)元首相(84)は、盧泰愚(ノ・テウ)政権で大統領秘書室長、首相を務め、指折りの国際政治学者(元ソウル大教授)として知られている。

その盧氏が、「4・15選挙(韓国総選挙)不正疑惑を解明すべきだ」とする『朝鮮日報』全面広告で文政権を告発した。その意図などについて『朝鮮日報』(8月29日付「文は自分を大統領ではなく、民族統一国家を建国する『南側リーダー』自負」)でインタビューに答えている。
※参考:「文は自分を大統領ではなく、民族統一国家を建国する『南側リーダー』自負」(上)(朝鮮日報日本語版) – Yahoo!ニュース

その要点を、以下に箇条書きにした。

1)今は体制の危機だ。現政権では通念によって起きてはならないことが毎日起きている。分裂と混乱を引き起こしているのが文在寅政権の政治技術だ。これは敵を設定したり、つくり出したりして、憎悪と復讐心を誘発する。

2)一部から現政権がコロナ対策を政治的に利用しているという言葉が聞かれる。文在寅政権で重要視すべきなのは「体制」の問題だ。歴代政権ではあらゆる権力行為が自由民主主義体制を前提としてなされた。しかし、現在は体制転覆的状況が進んでいる。その出発点が、朴槿恵(パク・クンヘ)弾劾だった。

3)朴槿恵弾劾というよりも、その本質は「体制弾劾」の性格でとらえるべきだ。ロウソク集会を使って体制を覆す弾劾を進めた。当時の国会での弾劾訴追案や憲法裁判所の弾劾決定文を見ると、ほとんど法律文書ではなかった。合法性には、「法の統治」と「法による統治」がある。前者は立憲主義だ。憲法に基づき権力行使の恣意的な乱用を防ぐもの。後者の「法による統治」は、ある状況で多数党がつくった法律で恣意的な権力行使を可能にするものだ。

4)過去には自由民主主義という前提で保守と進歩が分かれた。現政権ではこれまで合意されたそういう前提が崩れた。今の韓国社会は「保守対進歩」ではなく、「自由民主主義対全体主義」の対立構図と見るべきだ。文在寅政権は自由民主主義体制を変えようとしている。彼は、自分を「大韓民国大統領」とは考えていないようだ。選挙で当選した大統領に過ぎないではないか。

以上の4点について、私のコメントを付したい。

1)文大統領の最近の発言は、権力を背景にして敵愾心を燃やして対抗する種類のものが圧倒的である。文氏が愛用した「自由・平等・公平」という言葉は消えている。与党が、6割の議席を占めていることで、国会で追及される懸念がなくなったからであろう。

2)文政権は、与党6割の議席を背景に現行「体制」をひっくり返す意図を秘めている。国会運営も慣例を破り、全委員長ポストを独占している。法案審議は、野党への説明を省き、議席多数で議決する始末だ。今や、与党には不可能なことはなくなった。現行の「民主主義」を否定して、「独裁」へ移行可能になっている。

3)「法の統治」を装いながら、恣意的な「法による統治」を行っている。前者は立憲主義に基づく。それは、憲法に基づき権力行使の恣意的な乱用を防ぐものだ。後者は、民主的な様相を呈しながら、国会の絶対多数を武器にして勝手に法をつくり統治している。文大統領は、法律家で法律の裏表を知り抜き、これを「悪用」(法による統治)している。

4)現在の韓国社会は「保守対進歩」ではなく、「自由民主主義対全体主義」の対立構図と見るべきである。真の民主主義であれば、妥協が成立する。現在の韓国社会は「保守対進歩」でなく、「自由民主主義対全体主義」の対立構図と見るべきだ。文政権は、全体主義を民主主義と錯誤している。一切の妥協を排しているのである。

妥協を拒むのは、韓国の北朝鮮化を狙っている結果である。韓国の将来を「北朝鮮化」して、南北統一を容易に実現させる意図にほかならない。韓国の人口が「つるべ落とし」的な減少に向かっている現在、北朝鮮と統一することによって、この弱点を補強する必要があるのだろう。

Next: 南北で「軍事強国」を目指す? 軍拡の目的は打倒日本



にわかな軍拡論の背景

北朝鮮は、核を放棄しないことが明らかである以上、韓国は軍備の近代化によって、南北の軍備を整備し、日本と対抗する準備に着手している。

南北統一軍は、核を保有して「宿敵日本」を脅かす位置に立ちたい、という意図であろう。最近の韓国が、原子力潜水艦や軽空母を建艦する意向を示し始めたのは、その作戦海域の狭さから極めて不自然な話である。目的は、日本への対抗である。

韓国の「主敵」は、2008年まで北朝鮮であった。それ以降、北朝鮮の名前を消して「周辺国」に変えた。具体的には、日本と中国である。

理由は、日韓と中韓の間で島嶼(とうしょ)を巡って係争が起こっているので、軍事的紛争に備えた予防措置という。日本は独島(ドクト、日本名・竹島)、中国は離於島(イオド)でそれぞれ韓国の領有権を認めていないのだ。ただ、中国は表向き。実態は、日本対抗である。

文政権は上記の通り、北朝鮮との統一を目指して、あえて主敵を周辺国にすり替えた。南北は、一体になって日本との軍事紛争に備えるというメッセージを出したものだろう。

北朝鮮は核を保有する。韓国が軽空母を保持すれば、南北で「軍事強国」になれるというソロバンを弾いているに違いない。

軽空母は、満載排水量3万~4万トン級の建艦予定である。文大統領は、日本の軽空母(いずも型の満載排水量2万6,000トン)よりも大型にすべきと指示している。国防部と海軍によると、韓国型軽空母には最新型垂直離着陸機F-35Bとヘリコプターなど航空機20機ほどが搭載できるという。2033年の配備を目標にしている。

また、4,000トン級新型潜水艦は、原子力潜水艦になる可能性も十分だ。大統領府の高官は7月28日に「次世代潜水艦は原子力推進になるだろう」とし、韓国政府が事実上原子力潜水艦を推進しているという点を暗示している。

日本と戦い復讐果たす

朝鮮半島の領海は、極めて狭いものだ。そういう狭小な領海で、軽空母や原子力潜水艦を保持する目的は、南北朝鮮統一軍で日本に対抗する意図以外には考えられない。

韓国が、米韓同盟にそって、「インド太平洋戦略」に参加することは、まずあり得ないであろう。中国への接近意図が強く、「二股外交」で米中間の対立を凌ぐ意図は変わらないからだ。

仮に、米国が韓国に対して「米中いずれを選ぶか」と迫ったとき、どのように回答するだろうか。

踏み絵であるが、日本との関係希薄化を前提にして最小限の関係に止めるであろう。GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)破棄を条件にする。終局的に、日本と「戦う」意図を明確にするはずだ。

南北統一の目的は、反日政策の貫徹である。日本に敵対することで、民族アイデンティティの昂揚につなげ、1910年の日韓併合への復讐を果たす。韓国民族主義の最終目的は、日本への復讐であろう。

Next: 前時代的な「復讐戦」がさらに韓国経済を没落させる



「復讐戦」がさらに韓国経済を没落させる

こういう時代がかった「復讐戦」が、韓国経済に寄与するはずがない。自滅への道に繋がるだけである。

110年前の歴史に舞戻ることが、いかなるメリットを生むのか。韓国民族主義の危険性は、中国民族主義の危険性と並んで、儒教文化の停滞性を余すところなく示している。

民族主義の前近代性に同情するほかない。

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勝又壽良の経済時評』(2020年8月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

[月額864円(税込)/月 毎週木曜日(年末年始を除く)予定]
経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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