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【週間展望】日本株は堅調維持、トランプ陽性・東証障害も内需改善が株価下支え=馬渕治好

今週は2月本決算企業の半期決算発表と、内需系の経済指標に注目が集まります。先週・今週の市場分析と合わせて、展望をお伝えします。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2020年10月4日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

企業の決算発表が増加する今週、結果によっては市場心理が改善される可能性もありそうです。先週・今週の市場分析と合わせて、展望をお伝えします。

来たる花~今週(10/5~10/9)の世界経済・市場の動きについて

<日本では2月本決算企業の半期決算発表と、内需系の経済指標に注目。おそらくじわりとした改善持続で、株価を下支えよう>

(まとめ)
今週は、日本で、内需系企業が多い2月本決算企業の、3~8月決算実績の発表が多いです。またマクロ経済指標も、国内経済(特に個人消費)に関するものの公表があります。日本の内需の動向を推し量るうえで、注目されるでしょう。

月次の経済指標も、企業の決算内容も、(個別企業の好悪は別として、総じては)じわりと改善しているものと予想されます。このため、日本の株価は大きくは持ち上がりにくいが、下支えられるものと期待できます。

米国では、副大統領候補同士の討論会が予定されています。過去の討論会に比べ、注目度が高いでしょう。ただ、だからと言って、市況がそれで大きく動くことはないでしょう。

(詳細)
今週は日本では、内需(特に個人消費)関連の材料が多いです。

まず企業決算については、小売・外食企業が中心である2月本決算企業の、2020年3~8月の半期決算の発表が、今来週と多いです。今週は、製造業で安川電機や竹内製作所の決算もありますが、スーパー(7&iホールディングスなど)、コンビニ(ローソン、ファミリーマートなど)、ドラッグストア(ウエルシアホールディングスなど)、ホームセンター(島忠など)といった小売業や、外食(吉野家ホールディングス、壱番屋など)の発表が予定されています。

3~5月期に比べ、6~8月の売上や利益が持ち直している、という企業が多そうです。また、企業側が公表する通期の見通しで、年度を通じて悪いなりに、どの程度の収益の悪化度合いかが推し量りやすくなり、株価の下支えに働くと期待されます。

日本の経済統計では、10/8(木)に9月の景気ウォッチャー調査が公表されます。現状判断DIは8月の43.9から45.0に、先行き判断DIは同じく42.4から44.0に、それぞれ改善すると予想されています。

10/9(金)には、家計の収入や支出を示す家計調査と、給与や労働時間の状況を表す毎月勤労統計調査の、8月分が発表予定です。家計調査では、単身者を除く世帯の実質消費支出が、7月の前年比7.6%減から6.7%減へと、マイナス幅が縮小すると見込まれています。毎月勤労統計調査では、現金給与総額が、7月の前年比1.5%減から1.2%減へと、やはりマイナス幅が小さくなるとの見通しです。

こうした統計の、じわりとした改善も、やはり株価を大きく押し上げないものの下支えする材料となりそうです。

米国の経済統計では、ISM非製造業指数が、10/5(月)に発表されます。事前予想は、8月の56.9から9月は56.3に若干悪化するといった、慎重なものとなっています。

米国では、今週は10/7(水)に、副大統領候補のテレビ討論会が予定されています。この討論会で、市場が大きく動く、ということは想定しにくいですが、米国における注目度は過去の選挙より高いと考えます。それについては、この後の「盛りの花」で述べます。

Next: 2つのサプライズが加わった先週(9/28~10/2)の振り返り



過ぎし花~先週(9/28~10/2)の世界経済・市場を振り返って

<元々材料が多かったうえに、2つのサプライズがあったが、結局主要市場は持ち合いの様相>

(まとめ)
先週は、日米の経済統計など、元々材料が多かった週でした。それに東証のシステム障害と、トランプ大統領の新型コロナ検査陽性といった、2つのサプライズが加わりました。

ただ、経済指標は、世界的に景気回復基調が持続しているが、一時的な景気押し上げ要因の一巡もあって、弱いものも混じるまだら模様となっている、という大枠の景気展望に、沿った内容でした。またサプライズについても、きわめて大きく市場を揺るがすほどではなく、結局は日米等の株価は大きなボックス圏内で上下しているだけだ、と解釈しています。

(詳細)
先週は、日米の主要な経済指標など、元々材料が多かった週でした。ただ、一部で予想に反してさえなかったものもありましたが、総じては「景気回復基調が持続しているが、リベンジ消費や景気刺激策の一巡などで、回復の勢いが弱まったり反落するものが混じったりといった、まだら模様の様相も強い」といった、大枠の展望に沿った内容だったといえます。

これまでも、こうした「回復基調+まだら模様」の経済動向でしたし、今後もしばらくはそうした傾向が続くと見込まれるので、回復基調であることが主要国の株価を支えるものの、まだら模様なので株価が大きく上がることもない、といった、持ち合い相場を継続させることになるでしょう。

そこでまず、元々想定されていた先週の諸材料について先に解説すると、日本では9/30(水)に8月の鉱工業生産が発表されました。事前には前月比で1.5%増と、回復が持続するが穏やかな増加になる(7月の8.7%増から減速)と見込まれていました。実際には1.7%増と、ほぼ予想並みでした。

10/1(木)には9月調査の日銀短観が公表され、最も注目されている大企業の業況判断DIについては、製造業は前回のマイナス34からマイナス27に、非製造業は同じくマイナス17からマイナス12へと、穏やかな改善を示しました。

10/2(金)の雇用関連諸統計については、悪化が見込まれていると前号のメールマガジンで述べましたが、その通り、失業率は7月の2.9%から8月は3.0%に上昇し、有効求人倍率は同じく1.08倍から1.04倍に低下しました。

米国の経済指標で強かったものを挙げると、9/29(火)に発表された9月の消費者信頼感指数については、8月の84.8から9月は90.0に改善すると見込まれていたところ、実際には101.8と、大幅な上昇をとげました。また9/30(水)に公表された9月のADP雇用統計では、雇用者数が前月比で64.8万人増えると予想されていましたが、74.9万人増と強い内容でした。

一方で弱かったものとしては、10/1(木)のISM製造業指数は、8月の56.0から上昇するとの予想だったものの、55.4に小幅ながら反落しました。10/2(金)の9月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比で66.1万人増と、増加基調を維持しましたが、事前予想の85.0万人増を9万人程度下回りました。ただ、一方で8月分が、137.1万人増から148.9万人増に、12万人弱上方修正されましたので、それほど弱い内容ではなかったと言えます。

9/29(火)には、トランプ大統領とバイデン前副大統領の、討論会が行われました。トランプ大統領がバイデン氏の発言を遮ったりなど、プロレス並みの場外乱闘に持ち込んだ感が強く、討論会を視聴した人の多くが、討論になっていないお粗末なものだった、との感想を述べているようです。このため、落ち着いてかわしていたバイデン氏の支持率が討論会後には上昇した、との世論調査もあるようです。

ただ、別の世論調査では、討論会の前と後とで投票態度を変えない、という層も多いとされています。トランプ支持者には、大統領が失言しようと失態をみせようと、とにかく何が何でもトランプ氏に投票する、という「コアな」支持者が多いとも言われており、討論会が選挙情勢に大きく影響した、というわけでもないのでしょう。

<2つの大きなサプライズ>

こうした事前に想定されていた諸材料は、主要国の株価を大きくは動かさないものだった、と解釈できますが、先週は「2つの大きなサプライズ」がありました。ただ、主要国の株価や為替相場のトレンドを、根本的に変えてしまうようなものではなかったと考えます。

1つは、東証(および名証など、共通のシステムを使っている他の日本の証券市場)の取引が、システム障害で10/1(木)に終日停止されたことでした。この日は、大証での日経平均先物は取引されていた(もちろん、他国市場での先物も取引されていました)ため、現物が売買できない隙を狙って、先物に仕掛け的な買いや売りが入るのではないか、との懸念も聞かれましたが、実際には先物価格は余り動かずに穏やかな推移となりました。

もう1つは、日本時間で10/2(金)の午後に、トランプ大統領が新型コロナウイルス感染の検査で陽性だった、という報道があったことでした。不透明要因であるため、市場の初期反応は当然株安、円高(対ユーロなどで、米ドル安という様相は強くなかった)でしたが、たとえば米国株式市場では、同日一時434ドル安まで下落したニューヨークダウ工業株指数が、引けでは134ドル安まで下げ幅を縮めるなど、一時の心理的な動揺は一巡した感があります。

今後もトランプ氏の体調には注目が集まると見込まれますが、10/2(金)付の当メールマガジン号外で述べたように、どういう事態になっても、米国をはじめとする主要国の株価などが、大きく基調を変える、という展開は想定しづらいと考えています。

Next: 波乱で始まった10月相場も、結局はボックス圏内にとどまる



日米株価は、大きなボックス圏内で推移

結局、ここ数か月、日米等の主要国の株価は、大きなボックス圏内で推移しています。たとえば8月半ば以降の日経平均株価は、ザラ場高値2万3,622.74円(9/29)とザラ場安値2万2,594.79円(8/28)の間で、2万3,000円を超えたり割れたりの展開が主軸です。ニューヨークダウ工業株指数の方が動きは大きくはあるものの、同じ期間では、ザラ場高値29199.35ドル(9/3)と2万6,537.01ドル(9/24)との間の動きです。

今後も、そうした上下動にとどまるものと見込みます。

<騰落率ランキング(9/28~10/2)>

ここで、先週の騰落率ランキングをみてみましょう。まず、主要な世界の株価指数の騰落率ランキング(現地通貨ベース)では、ベスト10は、
ハンガリー
ルクセンブルグ
イスラエル
アルゼンチン
インド
ポルトガル
フィリピン
ベルギー
フィンランド
台湾
でした。欧州諸国が多めになっています。

なお、米国では小型株が買われたため、小型株を多く含むラッセル2000指数は、上記のランキングの対象外ですが、もしランキングに含んでいればベスト3位でした。

一方、ワースト10は、
パキスタン
ブラジル
豪州
TOPIX
ロシア
日経平均
チェコ
タイ
インドネシア
中国(上海総合)
でした。

日本株は、前述のトランプ大統領陽性のニュースが後場に直撃し、初期反応で株価が下振れしたところで引けたため、ワースト10に入っています。金曜日ザラ場安値から米国株価が持ち直して週を終えているため、週明け月曜日(10/5)は、日本株は上昇して始まるものと見込まれます。

<外貨相場(対円)の騰落率ランキング(9/28~10/2)>

外貨相場(対円)の騰落率ランキングでは、先週のベスト10は、
南アランド
メキシコペソ
ノルウェークローネ
ハンガリーフォリント
スウェーデンクローナ
豪ドル
ポーランドズロチ
英ポンド
ニュージーランドドル
イスラエルシェケル
と、欧州通貨が優勢でした。

一方ワースト10は、
ブラジルレアル
アルゼンチンペソ
トルコリラ
ミャンマーチャット
コロンビアペソ
チリペソ
ロシアルーブル
チュニジアディナール
タイバーツ
米ドル
でした。

レアル、リラなど、新興諸国通貨で売り込まれるものがあり、リスク回避的な様相が強い一方、通常はリスク回避的な姿勢が広がると買われてきた米ドルも冴えずと、難しい相場展開となりました。

盛りの花~世界経済・市場の注目点

<米大統領選の副大統領候補討論会>

ペンス副大統領とハリス上院議員の、副大統領候補同士の討論会は、10/7(水)にユタ州のソルトレークシティーで開催されます。通常ですと、副大統領候補の討論会は、大統領選の「添え物」とみなされている場合が多かったように思います。ただし今回は、米国内での注目度は高いと考えます――

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※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2020年10月4日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

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image by:Leonardo da / Shutterstock.com

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2020年10月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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