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苦境のユニクロは「買い」なのか? バフェット流12の視点で分析する=八木翼

ファーストリテイリングが大幅に売られていますね。個人的には以前から注目していて、この企業の底堅さを知っています。今回最も減益に影響を与えた項目は何でしょうか?それは為替です。(『バフェットの眼(有料版)』八木翼)

会社名:ファーストリテイリング<9983>
現在株価:26,815円

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失速中のファーストリテイリングを「バフェット視点」で徹底分析

Q1:その企業は消費者独占力を持っているか

消費者独占力を持っています。アパレル業界での売り上げは、1位です。また、低価格高回転の商法で、利益率自体は高くありませんが、安定して稼ぎ続けています。

Q2:その企業を理解しているか

理解していない人が少ないでしょう。中国での製造から、世界中での販売までを手掛けている会社です。私自身ユニクロに行く機会はかなり多いです。

また、あまり知られていませんが、ユニクロの服をデザインしている方は、かなり有名な一流デザイナーです。そのためセンスも良く着やすい服となっています。私もユニクロの服は頻繁に利用します。

Q3:その企業の製品・サービスは20年後も陳腐化していないか

この質問は、2つに分けけることができます。

一つは、20年後も人間は洋服を着ているかどうかです。このことについては、心配はいらないと思います。過去の実績を見れば一目瞭然ですが、たぶん20年後も服着てます。

さて、もう一つの問題が、ユニクロがこの業界で生き残っているかです。ユニクロの特徴は、デザインから販売まで自社で行っていることです。この点は、中国で仕入れをするシマムラとは違っています。これに関しては、どちらがいいということもないでしょう。

また、ユニクロもシマムラ同様、徹底した在庫管理を得意としています。ここら辺は、他企業と比べてかなりの強みとなりそうです。

また、シマムラと違うのが、ブランド力です。現在の日本でユニクロのイメージというのは、安くてシンプルでかっこいいということです。

これだけのブランドイメージがありますので、今後このイメージを棄損することがなければ、うまくやっていけると思います。

Q4:その企業はコングロマリットか

服の販売がメインの事業で、コングロマリットではない。

Next: Q5:その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長しているか



Q5:その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長しているか

EPS(円/株)
2016 588.5
2015 1079.0
2014 731.5
2013 1026.0
2012 703.0
2011 533.7
2010 606.0
2009 489.0
2008 427.4
2007 312.0

年平均EPS成長率:6.6%

2016年のEPSは先日発表された予測値を使っています。

さて、今回最も減益に影響を与えた項目は何でしょうか?それは為替です。

為替差損で228億円計上しています。純利益は、514億円ですので、為替がかなり大きな影響を持っています。そう考えると、決して成長率が下がったと言うわけではなく、為替に由る影響も大きかったと考えるべきですね。

もしこの為替差損がなければ(228+514)/514=1.44となり、44%の増益となります。為替でかなりぶれが出ることになりますね(しかもこれ第2四半期1つでのぶれです)。

まあ、そのための平均なんですが。

Q6:その企業は安定的に高いROE(株主資本利益率)をあげているか

決算年 ROE
2015 13.4%
2014 19.1%
2013 20.4%
2012 18.1%
2011 22.6%

平均ROE:18.7%

ROEはかなり高いですね。ROEが高いのになぜEPSの成長率が微妙なのでしょうか?

バフェットの理論であれば、ROEが安定して高い企業は自社株買い戻しをして、自社株価値を上げようとしますが、ユニクロはまだ、成長余地があり、様々なところに投資をしています。

そのため、なかなかEPSには反映されないわけですね。

簡単に考えれば、日本よりも世界を目指しているため、収益率が高くない場所にも投資している結果です。

しかし、世界に店舗を持つことは、安定性を増すため悪いことではありません。

今後、ある程度世界に店舗を持ったのであれば、自社株買い戻しで、株主に利益を還元してほしいと思います。

まだ、この点はどうなるかわかりませんね。

Q7:その企業は強固な財務基盤を有しているか

財務基盤を見る際は、自己資本率が良く使われますが、それはバフェット的にはNGです。長期債務に対して、どれだけ稼ぐ力を持っているかが重要と考えています。

今期の長期負債(百万) 27,604
今期の税引き後利益(百万) 54,359
長期負債/税引後利益(年)
(長期負債を税引き利益で返済するのに必要な年数)
0.51

1年以内に返せますね。全く問題ありません。ここら辺は、シマムラと同じですね。

Q8:その企業は自社株買い戻しに積極的か

自社保有株式は、発行していないとみなしています。

今期発行済み株数 106073656.00
10年前の発行済み株数 106073656.00
過去10年間に減少した株数 0.00
減少した割合 0.00

特に自社株買い戻しなどはしていないようです。

Next: Q9:その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか



Q9:その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか

日本ではこの10年間インフレになっていません。

全く同じ商品を扱っているわけではありませんが、ユニクロの値段はそこまで変化していませんよね。その割には、中国に進出して製品コストを下げているので、利益はかなり増加していますよね。

Q10:その企業の株価は、相場全体の下落や景気後退、一時的な経営問題などのために下落しているか

していますね。為替の損失が業績予想を下へ引っ張っています。今後、さらに下方修正する可能性はあるのでしょうか?私は、為替が理由であれば、そこまで弱気になる必要もないと思いますが…。

Q11:株式の利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと比較せよ

10年国債利回り 0.05%
株利回り 13.5%

悪くはありませんね。配当も低くないですし。最近は、業績のぶれが大きいのが懸念されますが、個人的にはベーシックを重視した商品を扱っており、確固たるブランドを持っている中では、高い成長率を持っていると思います。何より、ROEが高いですので。

配当性向 0.5
株主資本の予想成長率 9.4%
現在BPS 7,366
10年後予想BPS 18022.57
10年後予想EPS 3373.8
10年後予想株価 95512.99
期待収益率 13.5%

Q12:株式を疑似債券と考え、期待収益率を計算せよ

過去10年平均ROE(%) 18.7%
平均配当性向(%) 50%
年平均EPS成長率(%) 6.6%
現在BPS(円/株) 7366
10年後BPS(円/株) 13894.5
平均ROE(%) 19%
10年後EPS(円/株) 2601.1
10年後予想株価(円) 73610
期待収益率(%) 10.6%

悪くないですね。EPS成長率も低くありません。

Next: 結論:ファーストリテイリングへの投資はあり?なし?



結論

悪くないですね。ファーストリテイリングへの投資は、ありかなしかで言うと、ありだと思います。

ファーストリテイリング<9983> 日足(SBI証券提供)


ファーストリテイリング<9983> 月足(SBI証券提供)

もちろん、為替の影響でさらに下落する可能性はありますが、ベーシックな製品を売るユニクロは強いように思います。個人的には力強い企業だと考えます。

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バフェットの眼(有料版)』(2016年4月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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