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運用最大手ブラックロック、日本経済と日本株を見放す

世界最大の資産運用額を誇るブラックロック社が日本株を見放したとの海外報道がありました。海外株式投資家と日本の安倍首相の蜜月は終わり、離縁することになるのでしょうか。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

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アベノミクスに大打撃。海外投資家と日本株、「蜜月」の終わり

報道のポイント

海外投資家は2016年正月早々から連続13週間、東京株式市場から資金を引き揚げている。これは1998年以来で最長の記録だ。

日本の経済状況が悪化し、日銀の景気刺激策も逆効果。思惑とは反対の円高になった為に輸出メーカーは利益減。それを見た海外投資家が46B$(約5兆円)の資金を東京市場から引き揚げた。

これにより2016年4月11日現在、TOPIX指数は18%下落した。これはイタリアに次ぐ急落記録となる。

東京市場で最も積極的なトレーダーは海外投資家であり、安部首相の成長戦略の成果を判別するリトマス試験紙だった。その彼らの信頼を失ったことが安倍首相にとって大きな打撃となっている。

2013年9月にNY株式市場を訪問した際に、首相は「これからは日本の再登場だ」とか「アベノミクスは買いだ」と言ってぶち上げ、株価は当時として8年来の最高値をつけた。しかし、その頃に得た上げ幅の半分は消えてしまった。

世界最大の資産運用会社であるブラックロック社(BlackRock)は、日本株の上げ基調は終焉したと主張している。

また、約115B$(約13兆円弱)を運用している豪AMPキャピタルのNader Naeimi氏も、これまで長い間日本株のファンだったが今は売却の機会を窺っており、「多くの人々がアベノミクスに対して疑いを持ち始めている」と見ている。

アベノミクスの「3本の矢」政策は失敗し、デフレに落ち込み、30年間の沈滞へと戻ってしまった。

東京株式市場の7割は海外外国人投資家による取引であり、2012~2015年の間、ネットで18.5兆円もの買い越しをしてきた。その強気も消えてしまい、3ヶ月連続での売り越しが続いており、1月第2週から継続して5兆円の売りを記録している。

クレディ・スイスグループに続き、シティグループも日本株の見通しを下げ、今回、ブラックロックも日本経済に対して失望したというわけだ。ブラックロック社は日本経済に対して、円高リスクによる輸出企業の業績悪化および変動幅の増加リスクを要因として格下げしている。

また、スイス系のLGTキャピタルパートナーは50B$(5.5兆円)を運用しているが、「日本再生」戦略を捨て、アベノミクスに対して悲観的な立場を取っている。

これについて日本株の専門家は、「アベノミクスに対する信用失墜、日銀の景気刺激策の失敗、円高による企業業績の落ち込みにより、海外投資家が日本株投資を見直すのは当然のことだろう」と語った――

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外国人投資家、真の狙いは「帰りがけの駄賃」

東京株式市場の取引の7割を占める外国人投資家、機関投資家、ヘッジファンドが一斉に撤退することを決めたからと言って、すぐに株価が垂直降下するような事態が起きると考えるのは早計です。

それでは彼らは自分で自分の首を絞めることになるからです。それとは逆に、帰りがけの駄賃に、残る3割の投資家からできるだけ絞り上げて戻ろうとするはずです。

残り3割の投資家は「今が底値だ」と早とちりの買いをするかもしれないからです。

外国人投資家は、必ず日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が「株価買い支え」のために動くはずだと信じているので、安心して仕掛けてくるでしょう。

その動きを電光石火の高速取引で根こそぎ持っていくヘッジファンドにとっては、この下落相場はできるだけ長期間、緩い傾斜角で継続するのが好ましい。その間、色々な仕掛けにより掠め取ることができるからです。

これからのマネーの逃避先は?

優秀な人材で固めているヘッジファンドや投資銀行が大きな損失を出している現在、安全な投資先はあるのでしょうか?

それは国営石油公社が救いようのない惨状となっている、世界経済第7位のブラジルでしょうか?それとも闇金融の王様たちが逮捕されだし、不動産バブルもミエミエの世界経済第2位の中国でしょうか?あるいは現在、株価が反転上昇しだした世界経済第3位の日本でしょうか?

世界第8位のイタリアは?こちらも経済が破綻、焦げ付いたローンを抱える銀行業界に資金を注入しても再生するどころか全く駄目。そこで追加で資金注入するとの話が浮上するも、不良債権額から見てあまりにも少ない額であることが露呈し、4月11日の銀行株は墜落状態、午後から銀行株は取引停止となりました。

14位のスペインは?6位のフランスは?オーストリアは銀行破綻が目の前です。

第5位の金融大国イギリス、第12位の資源国オーストラリア、第11位のカナダ、第10位のロシア――どこもかも原油安、鉄・非鉄金属安で経済的に非常事態です。

そしてGDP世界第1位である米国の第1四半期のGDP予想(連銀予想)は目標2.6%に対して現在0.1%です。

4月11日に連銀の臨時非公開会議を緊急招集。その後大統領府でイエレン議長とオバマ大統領、バイデン副大統領による臨時の緊急会議。続いて12日、連銀の銀行監督部門の臨時非公開会議が緊急招集。同時に12日および13日、ワシントンDCでG20財務大臣・中央銀行総裁会議。15日にワシントンで世界銀行会議とIMF会議。

何もなければ、こんなことはあり得ないでしょう。米国の金融大手各社の2016年第1四半期決算が公表される予定ですが、街のスズメの噂では、その内容はリーマンショック以降で最悪になるとのこと。ドイツ銀行も泥濘で身動きがとれない。

安全な投資先の国は一体全体どこなのでしょうか?すべてはマイナス金利へ!それでもいまだ安全な国債はあるのか?もう存在しないのなら、資金はどこへ向かうのでしょうか?「現物」でしょう。

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金準備を積み増すロシア・中国が欧米中銀を追い詰める

こちらは2015年の公的部門、中央銀行の金準備買い増しに関する短い報道です。しかし重要です。

報道のポイント

2015年通年の中央銀行による金準備の購入総量は483トンで、金本位制の廃止時点から見て歴史上第2番目に多い年であった。

購入量はロシア中央銀行がトップで206トン。中国は下半期だけで104トンの買い増しであった(上半期の買い増し量は不明)。

こちらのチャートを見て下さい。

各国中央銀行の金準備の売却、購入の歴史です。X軸の上側が購入、下側が売却です。2009年を中心にして、明らかに潮目が変化しました。今後も特定の中央銀行群は金準備を買い集めるでしょう。

それに対し、欧米の中央銀行群は、まったく買い集める努力をしないでしょう。もしかすると買い集めたくてもできないのかも?これだけ世界経済が不安定になれば、欧米の資本主義先進国も買い集めたくて仕方がないはずなのですが――。

【関連】中国が極秘裏に描く「世界金融戦争の終盤戦略」~金買い増しと資金流出のウラ

いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2016年4月8,15日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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