南シナ海問題、解決か?日本ではほとんど報道されていない「事実」

 

ベトナムとフィリッピンの領有権にも警告

その証拠に、米イージス艦の「ラッセン」は中国の人工島付近を航行する前日、ベトナムとフィリッピンが領有権を主張する南沙諸島の島々の12カイリを通過した。これはオバマ政権が中国に過度な領有権の主張をしないように警告を送るとともに、ベトナム、ならびにアメリカの同盟国のフィリッピンに対しても同じ警告を発していることを示している。

ベトナムとフィリッピンも中国ほど大きくはないが、領有権を主張している島々に施設を建設している。今回の米艦船の航行は、南沙諸島の領有権問題の他の当事国にも自制をするようにメッセージを発したと見たほうがよいだろう。

妥協できない中国

したがって、今回のアメリカの意図は、安倍政権が望むように中国を封じ込めることではない。人工島の建設による領海の主張を許してしまうと、中国は公海の好きな場所に人工島を作り領海を主張する可能性が出てくる。いくらなんでもこれは国際法上許されないとして、アメリカは抗議したというのが今回の米艦船派遣の意図である。

一方アメリカのこのような行動に対して、中国は簡単に妥協できない立場にある。もし習近平政権が妥協すれば、ナショナリズムで盛り上がった国内の世論は一斉に習近平政権批判を開始し、共産党一党独裁かなり不安定になってしまう。これは大変に大きなリスクだ。これを回避するためには、おいそれとアメリカの要求にしたがい、妥協することはできない。また、中国が妥協する場合、中国の面子が最大限に立ち、中国が勝ったと主張できる状況でなければならない。

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