愛ゆえに声を失う。本当にあったパリ・オペラ座史上「最大の悲劇」

2015.11.29
by まぐまぐ編集部
 

当時、新しいオペラの初演というのは話題性の高い出来事であり、歌手にとっては、人気のある作曲家のオペラの初演を演じるということ、作曲家にとっては、人気のある歌手初演に抜擢することはお互いにとって大きな意義があることだった。

「ポリウト」の初演がなくなったこと、タイトルが変わったとはいえほとんど同じ内容の作品をあのデュプレに奪われる。ヌーリを絶望へと突き落とすには十分だった。

1839年3月8日、それは現実のものとなった。

かつてヌーリの教えを受け、恋人でもあったソプラノのファルコンは彼の死を嘆いたが、療養を終え、再び歌手として活躍し始めておりパリ・オペラ座の舞台に返り咲くほどであった。

だが、あるオペラの恋人同士という役の二重唱を歌う時に悲劇は訪れた。

オペラの中での彼女の恋人役として演じる二重唱の相手、それはデュプレであった。ファルコンはヌーリがデュプレに対してどのような想いを抱いていたか知っていた。最愛の人を華々しい舞台から奈落へ突き落とした男を前に、彼女の歌声は次第にかすれていき、ついには声が出なくなってしまっていた。

無声状態、今まであったものがなくなってしまった世界。彼女はその場で泣き崩れ、気を失ってしまった。

ファルコンはそれ以降、歌声を発することなく残りの人生を過ごした。

ヌーリとの思い出を胸に秘めながら…。

image by:Shutterstock

 

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