親からお金を借りたけど、返済していない……これって法律上は問題になるの? 無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、そんなお悩みに「どんな法に違反するのか」「お金を返さなければいけないのか」といった疑問について、わかりやすく回答しています。
親から借りたお金は返さなければならないでしょうか?
□相談□
親にお金を借りていました。いまだ返済できずにいたところ、親が怪我で入院になりました。
入院している間に弟が親の住居の片付けを行い、借用書をみつけてしまいました。
そして、弟より返済をせまられています。
弟に返済しなければいけないのでしょうか? 親は存命でぼけてはいません。
ちなみに、弟は親に話さずに私に対する取り立てを独断で行っています。(50代:女性)
□回答□
親子のような家族間であっても、お金の貸し借りをすれば法律上の契約となります。契約の形態としては、金銭の貸し借りの場合、消費貸借契約となります(民法587条)。
消費貸借契約が成立するためには、お金の貸し借りについて当事者が合意すること(具体的には、借主が将来の返済を約束すること)と、実際に貸すお金が交付されることが必要になります。
借用書などの書面は必須の要件ではなく、口頭でも(金銭さえ交付すれば)契約が成立します。また、利息の定めや返済の時期や方法なども必須の要件ではありません。いわゆる「あるとき払い」でも消費貸借契約が成立します。
ご相談内容からは借用書の詳細な内容はわかりませんが、親子間での借用書のため、おそらくは返済方法などの詳細が定められていないと思われます(以下ではその前提でご回答さし上げます)。
こうした場合、相手方(今回は親御様)からの催告(支払えとの要求)があった時に支払い義務が発生することになります(民法412条3項参照)。
しかし、相当以前の契約ということであれば、債権の消滅時効が成立する可能性があります。消費貸借契約における消滅時効の期間は10年とされています(民法167条1項参照)。そして、「あるとき払い」の場合、裁判例では契約成立時点から時効の期間が進行するとされます(参照:大判昭和5年6月4日)。
ただ、支払いの猶予を求めたり、債務の一部を支払っていたりすると、10年の期間が(そうした行為を行った時点で)振り出しに戻る、「時効の中断」という制度があります(民法147条、149~156条など参照)。
これまでを振り返って、中断事由がないかを振り返ってみる必要はあります。時効が成立しているようであれば、そもそも支払う必要がなくなります。
時効が成立していない場合は、支払いの必要があります。
ただ、ご質問内容の「弟さんに返済しなければならないのか?」という点に関連して、ご注意点があります。それは、契約の当事者はあくまでご相談者様と親御様である点です。
契約とは無関係の弟さんから返済を迫られたとしても、断ることができます。また、弟さん宛てに返済することも必要ありません。契約当事者である親御様から返済依頼があれば対応を考えられればよいのではないかと思います。
ただし、これまでの回答はあくまで法律上での対応です。
ご家族からお金を借りてご相談者様の生活が助かった面があるというなら、「ありがとう」という思いを込めて、分割でもよいので返済していくのが家族の姿ではないでしょうか(ちなみに、債務の一部を返済した場合、債務の承認となりますので時効は中断します)。
まずは親御様との真摯な話し合いの場が設けられることを期待します。
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