入りたくないけど、ちょっとのぞいてみたい。受刑者たちのグルメ事情

 

食事時間がかなり短いことは前にも書いたとおりである。空下げとなったら食べている途中でも残飯として出さなければならない。そうでないと面倒見の受刑者(雑役係、衛生係ともいう)に迷惑だからだ。4号室だか5号室だかの人は毎回、面倒見さんから「早く出してよ。いつも遅いんだから。いい加減にしてよ」と怒られていた。

完食したい気持ちは分かるけどやはり周りの状況も考えなければ。考えられない人だからこそこのような所にいるのかもしれないが。その人は1月18日に執行猶予でいなくなった。朝に「○○番、裁判所」と刑務官に言われ出ていった。11時ころに番台の刑務官にどこからか連絡があるらしく、連絡を受けた刑務官が部屋の片づけをしなければならない面倒見さんに「○○番執行猶予」と言うのが聞こえたから執行猶予と分かる。

連絡を受けた面倒見さんが思わず「あんなにルール守らない奴が執行猶予ならみんな無罪だよ」と言ったのには笑えた。心の中では「社会に出られてよかったね」と思いつつ。面倒見さんは、その後も、1人でぶつぶつ言いながら、居室の片づけをしていたようであった。

ついでの話だが、この面倒見さん、新しく来た刑務官に、拘置所での手順をいろいろと教えている。幾度も同じことを言っているようで、「何度言っても、○○の親父は分からないんだよな。頭が悪すぎだよ」と他の面倒見さんと話しをしていたが、それが面白かった。

 

著者/山本 至(やまもと いたる)
元弁護士。昭和29年生まれ。昭和51年早稲田大学卒業。金融機関勤務後平成元年司法試験合格、同2年司法研修所入所(修習44期)。平成4年弁護士登録(東京弁護士会)。平成18年に証拠偽造、証人威迫容疑で逮捕。無罪を主張したにもかかわらず、平成24年10月に最高裁判所で懲役1年6月の実刑判決が確定。宮崎刑務所、大分刑務所で服役し、平成26年4月出所。現在は自身の体験談などの執筆活動中。

image by: Shutterstock

 

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