小さな子供を育てる母親の苦労は、育児未経験の人からすれば想像を絶するものがあります。しかし、ストレスがたまったからといって、突拍子もない行動に出る子供への暴言や暴力は虐待です。家庭教育アドバイザー・柳川由紀さんのメルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』のQ&Aコーナーに、虐待とストレスの狭間に悩む母親からの声が届きました。柳川さんがアドバイスする、虐待を防ぐための3つの大切な行動とは…?
神奈川県在住S・Hさん2歳女児、生後2か月男児のお母様より
Question
「2カ月の息子の世話に忙しく、2歳の娘を煩わしく感じるときがあり、どなったり暴言を吐いたりしてしまいます。叩くのは良くないと思うのですが、大人の枕を投げつけ、ギュッと布団に押し付けてしまうこともありました。火のついたように泣く娘を見て反省します。寝顔を見るとかわいいと思えますが、ちょっとでも甘えたり反抗したりすると、煩わしく邪魔に感じる時さえあります。虐待に違いないと思うのですが、娘をかわいく思えずこの先不安です」
柳川由紀さんの回答
幼いお子さんを抱えて大変そうですね。下の新生児に手がかかりますから、上のお子さんに手が回らないのでしょう。けれども暴言を吐いたり、物を投げつけるという行動はすぐやめましょう。娘さんを傷つけます。虐待親にならないために知っておいてほしいことを挙げます。是非、今からすぐに心掛けましょう。
1.スキンシップを積極的にとる
娘さんを「8秒間」ギュッと抱っこしましょう。子どもとの精神的な絆が弱い親ほど虐待リスクが高まるといわれています。
スキンシップは「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれているほど親子にとって必要なもので、オキシトシンというホルモンの分泌を促します。このホルモンは、脳で働くと、相手への愛情や信頼感を生む効果があるということがわかっています。
スキンシップによって、母子ともにこのホルモンを大量に分泌し、お互いの絆をさらに深いものにしていきましょう。
2.「可愛いセラピー」をする
子どもを可愛く思えない、という親からのご相談のとき、必ず申し上げることがあります。
「どんなに母親が子どもを可愛くないと思っても、子どもにとって母親は一番愛してもらいたい存在なのです。だからこそ、可愛い、と思えるように「努力」しましょう。」
本来は、努力せずとも子どもを可愛く思えるところですが、精神的に追い詰められてしまった母親は、そう思えない場合があります。
そんなときには、敢えて声に出して「〇〇ちゃん、可愛いね、大好き」と子どもに向かって笑顔を向けましょう。
私はそれを「可愛いセラピー」と名付けました。親の気持ちがついて行かなくても良いのです。まずはとにかく、毎日、ことあるごとに、「〇〇ちゃん、大好き」「〇〇ちゃん、可愛いね」と、子どもに面と向かって声を出して言いましょう。
人間の脳は、自分の発した言葉に影響されます。知らず知らずのうちに自分の発した言葉をイメージし、そのイメージに近づけようとします。不思議なことに、そのように繰り返し子どもに向かって言葉をかけ続けると、本当に子どもを可愛く思えるのです。
実際に「可愛いセラピー」を実行したお母様から「今では子どもがかわいく、以前の自分が信じられません」と嬉しい声を頂いています。是非試してみてください。
3.「たんま」時間を取る
子どもがいたずらしたり、ぐずったりした場合は、罰を与えてもその場しのぎです。子どもは何がいけなかったのかわかりません。そんな時は一定時間その場を離れさせましょう。
学校で「廊下に立っていなさい」というのと同じです。「たんま!」「頭を冷やせ」ということです。
肝心なのは、なぜ退場しなければならないのか、どのくらいの時間頭を冷やすか、を説明することです。
柳川由紀さんからの家庭教育アドバイス
虐待してしまうのは、子どもがまだ自分でしっかりと考えることができない小さい時期が多いものです。その頃の子どもは、行動パターンが想定できずとんでもないことをしてしまうということもあります。その結果、その行動に怒りがたまり、手をあげ虐待へと発展するのが一般的なケースです。
まずは不用意なものを子どもの手に届くところに置かないことです。そうすれば、子どもがとんでもないことをしでかすのを、ある程度防ぐことができます。
また、何度言っても言うことをきかないから、という理由で暴言を吐いたり、嫌みを言ったりする親もいますが、そうした言葉は「きれいな虐待」と呼ばれています。
知らず知らずに子どもを追い詰め、やがて子どもの心の中に、「自分は親から愛されていない」「自分はだめな人間だ」という気持ちを芽生えさせてしまいます。子どもへの指示や命令は極力避け、言葉のかけ方を変えましょう。
・さっさとしなさい→急ごう
・片付けなさい→綺麗にしよう
・うんざりなのよ、いいかげんにして→ママ、疲れちゃった
・邪魔なの、あっちへ行って→ママ、一人になりたいな
・言うこと聞きなさい→ママの言うこと難しい?
など、思ったことをすぐに口にするのではなく、一旦「翻訳」してから伝えましょう。
そうすれば一旦考える、と言う「時間」が、子どもに対するイライラを抑える要因になります。
母親は自分で何でも1人で抱え込みがちです。そのため精神的に追い詰められてしまうのです。そんな時は、信頼できる家族や友人、場合によってはそうした専門の機関に相談しましょう。自分の気持ちを吐き出すことで少しは心が楽になります。
一方で、虐待を目撃した場合は、加害者を批判する言動はせず、まずは冷静に「大変そうですね」と共感し、そのあとで「何か手伝いますよ」「力になれることがありますか?」などと申し出ましょう。
image by:Shutterstock
家庭教育のプロとして、教育相談員の経験を生かしながら、親としての接し方のコツをお伝えします。専門である教育心理学、家庭教育学をベースに家庭の中でできる「子どもを伸ばすためのコミュニケーション術」を「親の力」に視点を置き、毎週月曜、木曜の二回に亘って配信予定です。乳幼児、小学生、中学生、高校生、大学生など発達段階に応じた子どもへの声掛けを具体的にご紹介します。
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