北朝鮮は核爆弾を何発保有しているのか?

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「北朝鮮が2020年までに最多で100発の核爆弾を保有する可能性がある」という分析結果を米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所が出しています。では現時点で北朝鮮はどれくらいの核保有をしているのでしょうか? コリア・レポート編集長の辺真一さんは、核爆弾の原料であるプルトニウムと濃縮ウランの保有量から衝撃の結果を割り出しています。

北朝鮮は核爆弾を何発保有しているのか?

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が一昨日(4月22日)「北朝鮮が現在核弾頭を20発保有していると中国の核専門家らが推定している」と報じたことが日韓のメディアで大きく取り上げられている。

中国から北朝鮮の核関連情報が流れるのは極めて異例で、また、その保有数がこれまでの米国の専門家らの推定値(10-16個)よりも1.5倍から2倍多いことから衝撃を与えている。

米国では、代表的な核科学者であるヘッカー米スタンフォード大教授(元米ロスアラモス国立研究所長)が今年1月に「12個」と推定したばかりだ。その内訳はプルトニウム型爆弾(長崎型)が6個、ウラン型(広島型)が6個となっている。

北朝鮮の核爆弾保有数は米CIAも、韓国の国情院も正確には把握できていない。オバマ大統領は大統領になる前に「北朝鮮は8個持っている」と言い、これに対して後にオバマ政権下で国務長官になったゲーツ氏は「北朝鮮は数個の爆弾をつくった」と、異なった見解を述べていた。

米国の専門家の見方も様々だ。例えば、今年1月に出された米国の科学専門誌「核科学者会報」には「10個未満」と推定されていた。従って、6~8個、最大で二ケタというのがこれまでの相場だった。

核爆弾の保有数は、その原料であるプルトニウムと濃縮ウランの保有量から割り出すほかない。

プルトニウム

北朝鮮は平壌から北西90kmにある寧辺に完成させた5千kwの原子炉(実験用)から1994年のジュネーブ合意に基づく施設凍結までの間に10kg程度のプルトニウムを抽出していた。こうしたことから米CIAは前年の1993年にクリントン大統領に「北朝鮮は1、2発の核爆弾を開発した可能性がある」との報告書を出していた。

ブッシュ政権登場(2001年2月)でジェネーブ合意が破綻するや北朝鮮は2003年2月に原子炉の稼動を再開し、使用済核燃料棒8千本を再処理。10月には「再処理を完了した」と発表した。これにより新たに25~30kg程度のプルトニウムを手にすることとなった。

北朝鮮はさらに6年後の2009年11月3日、朝鮮中央通信を通じて使用済み核燃料棒8千本の再処理を「8月末までに成功裏に終えた」と発表した。さらに25~30kg程度のプルトニウムが加算された。これで合計60kg-90kgとなる。

但し、2006年10月と2009年5月と二度核実験を行い、それぞれ6kgを使用したのであれば(北朝鮮は使用したのは2kgと主張)、2009年5月末の時点でのプルトニウム保有量は48-78kg(2kgならば、56-86kg)となる。1発の核爆弾の分量が5~6kgならば、核爆弾は11─17個の計算となる。

ブッシュ政権下での6か国協議で核問題が進展しなかった理由の一つにプルトニウムの申告量をめぐる対立があったのは周知の事実である。

北朝鮮は米国にプルトニウム量を38~44キログラムと申告した。これに対して米国は北朝鮮がこれまでに3段階の再処理を得て50キロ以上のプルトニウムを所持もしくは、それに相応する数の核爆弾を保有しているとみなしていた。

濃縮ウラン型

北朝鮮は2009年6月に北朝鮮の核実験に科した安保理制裁決議「1874」に対抗して、ウラン濃縮作業の着手を宣言し、早くも3か月後には国連安保理議長宛ての手紙で「ウラン濃縮試験の成功」を誇示していた。そして、1年後の2010年11月には遠心分離機を備えた近代的なウラン濃縮工場が稼動していたことが、訪朝したヘッカー氏ら米国の核問題専門家らによって確認された。

労働新聞は2010年12月29日「数千台の遠心分離機を備えるウラン濃縮工場が正常稼動している」と公式に報じた。ウラン濃縮工場で仮に2千個の遠心分離機を1年間フル稼働させれば核爆弾1個製造するに必要な25~30kgの高濃縮ウランを手にすることができる。

仮にウラン濃縮工場が2010年の時点で稼働しているなら、4年経った現在、100kg~120kg、即ちウラン型核爆弾4-5個保有していることになる。これにより、プルトニウムと合わせると、合計で15-22個という計算になる。

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.48より一部抜粋

著者/辺真一
1947年東京生まれ、明治学院大学英文科卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊、現編集長。毎回驚きの真実をリークするメルマガは人気を集めている。
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