「生活のため」から「やりがい」へ。第4次産業革命で仕事はどう変化?

2016.02.04
by ニュースフィア
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「世界経済フォーラム(WEF)」の年次総会で、テクノロジーが雇用に及ぼす変化を評価した報告書「The Future of Jobs(仕事の未来)」が発表された。第4次産業革命ともいわれるITが支える産業への移行により、既存の仕事が消滅し失業の時代になるという懸念もある一方、人々は移行期を乗り越え、新しい環境に適合するという意見もある。

人のする仕事が減っていく

WEFのレポートによれば、人工知能、ロボット工学、ナノテクノロジー、3Dプリンティング、遺伝子工学と生物学などの分野の発展により、710万の仕事が消滅すると見られている。もっとも新規に200万の仕事が創造されるため、実質消滅する仕事は510万ということになるらしい。

ウェブ誌『Mashable』によれば、オックスフォード大学の研究者たちが発表した2013年の論文でも、今世紀半ばには機械が47%の仕事を奪うと予測されており、第4次産業革命の波は着々と押し寄せていると言える。

今後の雇用は女性に不利?

レポートは、日米英独など、世界15の主要経済国の人事プロフェッショナルを対象に行われた調査の結果をもとにしている。これによれば、今後もっとも雇用が減るのは、ホワイトカラーの管理部門職。業種別では、ヘルスケア、エネルギー、金融サービスで今後5年間に雇用が劇的に減るという。一方、最も雇用が増えると見られるのは、情報・コミュニケーション、プロフェッショナル・サービス、メディア・エンターテイメント業界のようだ。

雇用を失う割合は、男性52%、女性48%とあまり差はない。しかし、男性の労働人口の方が大きいため男女間の差は広がると見られ、男性は3つの仕事がなくなるのに対し1つの仕事が増える計算だが、女性の場合5つがなくなるのに対し1つしか増えないとされている。特に、雇用の増加は著しいが女性の進出が少ない科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学系の職種では、差はますます広がると見られる。(ガーディアン紙)。

テクノロジーの進歩で、仕事の本質が変わる

レポートの作成を率いたサアディア・ザヒディ氏は、教育、高齢者介護、技術指導、通訳などの人間主体のサービスは、すぐには機械に取って代わられることはないと述べる。人工知能やロボット工学も、今後5年間はピークを迎えることはないと思われ、今起こっているのは、人口動態、社会経済的な面としての仕事の本質の変化だと指摘する。レポートは、これを新しいギグ・エコノミー(単発の仕事など、労働市場に非正規が多い経済)と呼び、新しいテクノロジーは、どこでもいつでも働けることを可能にし、ネットに接続することにより、集約された仕事を分解して、働く者の間で分け合うことを可能にすると説明している(Mashable)。

テクノロジーの側面から見れば、レポート作成に協力した調査回答者は、モバイル・インターネットとクラウド・テクノロジー、ビッグ・データ、新エネルギーとそれに関する技術、モノのインターネットなどが、仕事の変化を牽引すると認識している(Mashable)。

転換期を乗り越え、やりがいある仕事は残る

今後の問題は、人々が新しい仕事への切り替えをスムーズに行えるかという点だが、リサーチ会社、フォレスターの主任アナリスト、ジェームス・マキベイ氏は、世界は変化を切り抜ける準備が出来ていると述べ、イノベーションを加速したデジタル化も手伝い、新しい仕事への移行は以前よりずっと迅速になると述べる。ザヒディ氏も、「情報の流れは驚くほど速い」とし、スピードが変化の衝撃を和らげると説明。我々を混乱させる(テクノロジーという)ツールそのものが、この転換期を乗り越えることの助けとなると述べている(Mashable)。

テクノロジーと社会の関係を研究するエンリケ・ダンス氏は、フォーブス誌に寄稿し、第4次産業革命は、劇的に生産性と富の創造を高めると同時に多くの新しい仕事をもたらすのか、それとも我々がもう何もやることがない時代をもたらすのかと問う。

同氏は、世の中には「生活のためにする仕事」と「使命感を感じられる仕事」があると述べ、後者より前者のほうがなくなることが多いと述べる。多くの労働は、安価で効率がよく疲れを知らないロボットに奪われてしまうという同氏は、楽しめてやりがいのある仕事は残るが、食べるためだけのつまらない仕事は残らないと述べ、生きるために何をすべきかを真剣に考え、働きたいなら、今後必要になるスキルを得るためのトレーニングを始めよ、とアドバイスしている。

(山川真智子)

 

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記事提供:ニュースフィア

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