人口の4分の1が65歳以上の長寿国、日本。2056年までに日本と同じ高齢化社会になると予測されているオーストラリアでは、神戸の高齢者に配慮した街づくりが注目を集めているようです。
世界的な長寿国代表、日本
昨年の8月に世界でもっとも長寿の男性としてギネスに認定された小出保太郎さんが、先月19日に112歳で亡くなり、テレグラフ誌をはじめ、複数の海外メディアがこの訃報を取り上げました。
WHOの調べによると、2015年時点での日本人男性の平均寿命は80.2歳で世界4位、女性は86.6歳で世界1位、男女平均は84歳で世界最長となっています。
また、65歳以上の割合が人口の4分の1を占めており、日本が世界的に見ても紛れもない長寿国であることを示しています。
しかし、今や人口の高齢化は日本だけの問題ではありません。
オーストラリアも、2056年までに日本と同じ高齢化社会の時代を迎えるというのです。
日本と同様、長寿国になりつつあるオーストラリア
豪ザ・エイジ誌は、先週時点で、オーストラリアの人口が2400万人に達したと報じました。
この人口増加の背景には日本と類似する平均寿命の高齢化があり、現在のオーストラリア人男性の平均寿命は80.3歳、女性は84.4歳を記録しています。
また、今世紀に入ってからの女性の平均寿命は2.4年、男性の平均寿命は3.7年伸びています。
特に男性の平均寿命は、農業、鉱業、製造業などの危険度の高い職場での安全基準の改善や、危険度の低いオフィスワークの増加、シートベルトの着用の義務化などに伴い、大きな変化が見られました。
しかし人口の高齢化に伴い、今、オーストラリアも日本と似た課題を抱えつつあります。
高齢化社会に向かうオーストラリアの課題
1968年時点のオーストラリアの人口は現在の半分で、65歳以上の人口もわずか全体の8%にあたる100万人でした。
しかし、現在では全体人口の15%を占める350万人に到達し、逆に14歳以下の人口は29%から19%に落ち込んでいます。
このままだと、今世紀半ばまでには、オーストラリアも日本と同様に、4人に1人が65歳以上なると予測されています。
オーストラリア政府は年金の受給開始年齢を65歳から引き上げる意向を示していますが、リタイアした後の高齢者への環境づくりは、課題のひとつとなっています。
日本の成功事例をお手本にするオーストラリア
豪コンバセーション誌は今年1月、阪神淡路大震災後に作られた神戸の「ハッピーアクティブタウン」での高齢者への取り組みを成功事例として紹介しました。
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「ハッピーアクティブタウン」とはHAT神戸の正式名称で、震災後に復興計画の一環として開発が進められた地域です。
約74.7ヘクタールの敷地内に居住地区、文化教育地区、研究地区などを集約させており、1999年の震災以降、仮設住宅から多くの被災者がこの地域に移り住みました。
同誌が注目したのは、居住者の50%以上が65歳以上の高齢者であり、家族が身近にいない居住者同士がお互いの生活を支え合い、ボランティアや介護士とのつながりを提供するなどの工夫が施されているという点です。
この事例は実際の利用者へのインタビュー動画と共に高齢化社会における取り組みの成功事例として注目を集めました。
人口高齢化に向け、世界的な取り組みへ
全米経済研究所は日本、アメリカ、イギリス、カナダ、スペインなどの先進国でのデータを参考に高齢者の就業状況を調査し、65〜69歳の年齢層で健康を維持しながら働いている実例も充分見られると報告しています。
しかし、70歳以上のリタイアした後の高齢者に対するサービスや環境づくりはどうしていくべきなのか。
高齢化が進む先進国同士がお互いに成功事例を示し合いながら、世界レベルでこの課題に取り組むことが求められているのかもしれません。
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source by: The Conversation/ The Telegraph/ The Age
文/長塚香織