現代病のひとつ“生活習慣病”はとうとうタイの僧侶にも及んでいます。僧侶といえば質素な食生活であったり、「厳格」「禁欲」「節制」などのイメージが一般的だと思います。それが、タイの僧侶は約30万人いる内のおおよそ半分近くが「太り過ぎ」ということが判明しました。現代の僧侶たちに一体何が起こっているのでしょうか?
なんと太り過ぎは48%。僧侶にかかった費用は8.5万ドル
敬虔な仏教徒信者もびっくりの、僧侶たちの「超」不健康な実態について、バンコクポストが驚愕の数字を報じています。
バンコク・チュラーロンコーン大学で実施された研究の結果によると、太り過ぎと判断された僧侶は48%で、それぞれ慢性的な病気を抱えているというのです。
またその内10%は糖尿病を患っており、23%もの僧侶が高血圧であり、42%は高コレステロールの値がでているとのことです。
これでは日本のメタボなおじさんたちと対して変わらないのでは…。
一体どうしてこんなことになってしまったのでしょうか?
その原因はやはり食生活にありました。
僧侶たちは信奉者からお恵みとして食料を授けられるのですが、そういった頂きものを拒否することはできないのだそうです。
ただ、この頂きものの中には食べ物やソフトドリンクに大量の砂糖や脂肪が含まれているものも多く、その結果「メタボ」な僧侶が増えてしまったようです。
信者たちも「せっかくなら美味しいものを!」という気持ちでお恵みをするのでしょうが、美味しい物は大抵ハイカロリーなんですよね。
この研究に携わった同大学の健康科学科の研究者Jongjit Angkatavanichさんは「僧侶の肥満はまるで時限爆弾だよ」と、危機感を抱いているとのことです。
この肥満が原因で生じた様々な病気に対処するため政府が払った医療費は2012年だけで8.5万ドル以上(約9500万円)といいますから、これはショッキングな数字です。
もちろん、このお金は国民の税金から支払われているわけですから、いくら“微笑みの国”タイの仏教徒といえども、さすがに笑っていられないのではないでしょうか。
食べ物を捧げ続けた信者たちも、もちろん良かれと思って恵んでいたわけですが、さすがにここまで深刻な健康状態となると、今後は食べ物の内容もヘルシー志向になりそうですね。
僧侶向けキャンペーンとして8週間ダイエットプログラムを実施
そんな“時限爆弾”を解除するべく、先ほどの大学や関連機関からの支援を得て、僧侶向けの徹底したダイエットプログラムを実施したのです。
4つの寺院から健康問題を抱えた約82人の僧侶が参加。
食物繊維、プロテイン、カルシウムなどを豊富に摂取できるよう、食事管理はもちろんのこと、特に座る体勢が多い僧侶に関してはエクササイズも組み込まれました。
また、ウェストラインを意識するよう常にガードルを身につけるなどの指導も。
その結果、平均で1kg、腰回りは1.4cm減り、コレステロールや中性脂肪の数値にも変化があったそうです。
その後、10kgのダイエットに成功した僧侶もいたとのことで、このキャンペーンの効果は大いにあったようです。
USA TODAYによると、実はタイの僧侶だけではなく、近隣諸国のスリランカの僧侶にも同じような健康問題が起きているとのこと。
もともと仏教徒のあいだでは、僧侶に食べ物を恵むことによって良いカルマを持ち、良い後世を過ごすことができると信じられています。
また僧侶も拒否することはできないため、なかなか難しい問題ではありますね。
ただ、やはり「太り過ぎの僧侶」はなんだか威厳がないような気がします。
身も引き締まっているからこそ、心も引き締まって日々の修行にも集中ができるのではないでしょうか。
修行の一環として断食などもおこなう僧侶たちですから、食事制限はそれほどきつくないのではないかと思います。
持ち前の崇高な精神力でダイエットを続けて欲しいですね。
image by: shutterstock
source by :バンコクポスト , 米タイムス , USA TODAY
文/臼井史佳