パナマ文書は、アメリカの「オフショア市場独占戦略」?
以下、内容の要約。
- 情報をリークしたのは、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)
- The Organized Crime and Corruption Reporting Project (OCCRP=組織犯罪と汚職報告プロジェクト)。ウィキリークスによると、OCCRPは、「ソロス財団」と「USAID」(アメリカ合衆国国際開発庁)の資金で運営されている(註:USAIDは、国務省管轄下にある米政府組織)。
- よってOCCRPの調査、捜査結果は、常にアメリカの利益になるようになっている。
- 今回アメリカは、数十兆ドルの利益を期待している。
ここから、「どうしてそうなるの?」に関する解説が始まりました。
- オフショアは、すでに長年にわたって「合法」である。
- アメリカの一流企業、たとえば「アップル」「グーグル」「マイクロソフト」「GE」「GM」なども使っている。
- ロシア企業も例外ではない(利用している)。
- ロシア政府はオフショアの利用を歓迎していないが、禁止はしていない。
- 禁止すれば、(オフショアを使う)外国企業は有利になり、(使えない)ロシア企業は不利になり、結果としてロシア企業の競争力がなくなるからだ。
- そういう理由で、「オフショアを禁止する」のであれば、全世界が同時に行わなければならない。
- オフショアは一般的に、小国や島であり、アメリカがある特定のオフショアをつぶそうと思えば、いつでもつぶせる。
- ドイツは、オフショアだったキプロスを、超短期間でつぶしてしまった。
ここから、話の核心に入っていきます。
- アメリカは、自国領の中にオフショアをつくっている(ネバダ州、ワイオミング州、デラウェア州、サウスダコタ州)
- つまりアメリカは、アメリカ国内のオフショアに、世界の資金を呼び込む計画なのだ。
- アメリカ以外のオフショアの秘密を突如暴露し、その一方で、「私たち(アメリカ)にお金を預ければ、安心ですよ」とささやく。
- パナマ文書は大さわぎになっているが、真の大物はアンタッチャブルである。
- これは、「アメリカのオフショアを使ってくれれば、安全ですよ」ということなのだ。
司会のキシリョフさんは、「プランは成功している」といいます。その証拠として、ブルームバーグ1月27日の記事を引用しました。曰く
透明性と公開性というグローバルな流れに逆らって、アメリカは、外国資本のためのダイナミックな新市場を作り出した。
皆、ロンドンの弁護士から、スイスの信託ファンドまでが、バハマ、英領ヴァージン諸島などから、(アメリカ国内のオフショア)ネバダ、ワイオミング、サウスダコタへの資金移動を助けることで、このプロセスに参加している。
キシリョフさんは、「すばらしいオペレーションだ!」とアメリカのずる賢さを絶賛(?)します。そして、このオペにはふたつの大きな効果があるとしています。
- 世界のオフショア資金を、アメリカ国内に移動させる。
- 世界から集まった資金を、アメリカが完全に監視、監督する。
- もちろん、こんな話は公言されない。これは長期プランだ。
とまあ、ざっくり要約しましたが、これがロシアの見方です。もちろん、ロシア国営メディアは、常に「アメリカ陰謀論」ですので、丸ごと信用はできません(たとえば、「原油大暴落は、アメリカとサウジが組んでロシアつぶしをしかけた」と報じていた。実際は、サウジがアメリカのシェール企業をつぶすために減産を拒否したことが、暴落の主因だった)。
しかし、「クレムリン情報ピラミッドがこういう見方をしている」ことを知っておくのは、「米英情報ピラミッド」に偏った日本国民にも有益でしょう。
image by: Andrey Burmakin / Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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