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パナマ文書は米国の陰謀。窮地のプーチンが展開する反米プロパガンダ

全世界に激震をもたらしている「パナマ文書」問題ですが、プーチン大統領の名も上がっているロシアのメディアはどのように伝えているのでしょうか? モスクワ在住で無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、「ロシアは何でもアメリカの陰謀論と結論付けたがる」としながらも、日本人として知っておくべきロシアメディアの報道姿勢について詳しく解説してくださっています。

パナマ文書は、アメリカの「オフショア独占戦略」?(ロシアの見方)

パナマ文書、日本では大騒ぎになっているようですね。プーチン絡みの情報も出ています。

プーチン氏の親友、パナマ文書に 政権に打撃の可能性も

朝日新聞デジタル 4月8日(金)10時8分配信

 

タックスヘイブン(租税回避地)にある法人に各国首脳や著名人が関与している実態を暴露した「パナマ文書」に、ロシアのプーチン大統領の親友として知られる著名なチェリスト、セルゲイ・ロルドゥーギン氏の名が含まれていた。

 

プーチン氏の関与を疑う声もあり、9月に下院選を控えるプーチン政権にとって打撃となる可能性もある。

これなんですが、現地に住んでいる実感からすると、「政権にとって打撃になる」というのは、大げさだと思います。というのは、ロシアのメディアは、見事に(?)統制されていて、「大騒ぎにならないからです。

プーチン氏は7日、パナマ文書の暴露について「社会に政権への不信」を植え付けてロシアを弱体化する意図が込められているとの見方を示した。

 

ロルドゥーギン氏については「我々の会社の1つの株を持っている。稼ぎはあるが、数十億ドルということはない。そのほとんどを費やして外国の楽器を買い、ロシアに持ってきている。彼のような友人を持ったことを誇りに思う」と述べ、自身の関与を否定した。
(同上)

これなんですが、ほとんどのロシア国民は、まず「パナマ文書」のことを知りません。知っていても、国営テレビを見て、プーチンの言葉をそのまま信じています。そして、結論は、「またアメリカの謀略だ!」ということになります。

どうしてそういう話になるのでしょうか? ロシア国営テレビRTR「ヴェスティ ニデーリ」4月10日放送の内容を要約しておきましょう。

パナマ文書は、アメリカの「オフショア市場独占戦略」?

以下、内容の要約。

ここから、「どうしてそうなるの?に関する解説が始まりました。

ここから、話の核心に入っていきます。

司会のキシリョフさんは、「プランは成功している」といいます。その証拠として、ブルームバーグ1月27日の記事を引用しました。曰く

透明性と公開性というグローバルな流れに逆らって、アメリカは、外国資本のためのダイナミックな新市場を作り出した。

 

皆、ロンドンの弁護士から、スイスの信託ファンドまでが、バハマ、英領ヴァージン諸島などから、(アメリカ国内のオフショア)ネバダ、ワイオミング、サウスダコタへの資金移動を助けることで、このプロセスに参加している。

キシリョフさんは、「すばらしいオペレーションだ!とアメリカのずる賢さを絶賛(?)します。そして、このオペにはふたつの大きな効果があるとしています。

  1. 世界のオフショア資金を、アメリカ国内に移動させる。
  2. 世界から集まった資金を、アメリカが完全に監視、監督する。

とまあ、ざっくり要約しましたが、これがロシアの見方です。もちろん、ロシア国営メディアは、常に「アメリカ陰謀論」ですので、丸ごと信用はできません(たとえば、「原油大暴落は、アメリカとサウジが組んでロシアつぶしをしかけた」と報じていた。実際は、サウジがアメリカのシェール企業をつぶすために減産を拒否したことが、暴落の主因だった)。

しかし、「クレムリン情報ピラミッドがこういう見方をしている」ことを知っておくのは、「米英情報ピラミッド」に偏った日本国民にも有益でしょう。

image by: Andrey Burmakin / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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