コンサルタントの三浦康志さんが、経営のヒントやマーケティングのアイデアを教えてくれるメルマガ『プレミアム日刊ライスレポート』。今回は日本最北端の小さな漁村、猿払村の漁業組合でかつて行なわれた資本蓄積のノウハウのお話です。貧しかった漁師達が、今では一戸当たりの平均売上が3300万円という大成功を収めているとか。その秘訣は何だったのでしょうか?
漁協組合員の強制天引き
日本最北の村である猿払村には、「ホタテ御殿」がたくさん建っているそうです。
猿払村はホタテ貝養殖漁業で最も成功した地域です。
猿払村のホタテ養殖の特徴は「地まき」です。
アサリの養殖のように稚貝を浜にばらまくのです。
4区画に浜を分けて放流から3年を経た区画を収穫するという、農業のような養殖漁業で成功しています。
このような漁を行うためにはチームプレーが不可欠です。
猿払漁協がこのような組織的な栽培漁業を主導しています。
その結果、驚くべき生産性を達成しています。
2015年度の水揚げ金額(ホタテ貝以外も含む)を組合員数で割った数値は、約3300万円です。
漁師一戸当たりの平均売上です。
御殿が建つのもうなずけます。
このように漁業で潤う猿払村は、かつては最も貧しい村だったそうです。
ニシンやホタテ貝の乱獲がたたって漁業が極端に衰退したのです。
その時、ホタテ貝の養殖漁業にかける決断をするのです。
1970年のことです。
その際に組合長の強力なリーダーシップのもと、天引き預金制度を始めます。
天引き預金は資本蓄積するための最高のノウハウです。
しかし、独立事業者である組合員の収入を強制天引きするというのは異例のことです。
反対する組合員を説得して実施されました。
月7万円の生活費で我慢することを強いたのです。
猿払村のホタテ養殖漁業が成功した最大の理由がここにあると思います。
「宵越しの金を持たない」的な漁師の収支感覚を改善することが、集団的養殖漁業をスタートするために不可欠だと発想したのだと思います。
天引き預金はサラリーマンだけのものではありません。
事業者も天引き預金制度を銀行と構築すれば、資本蓄積が進みます。
天引きされた収入はないものとして収支を合わせる工夫をするようになります。
ないものと思っていた天引き預金は見えないところで蓄積されます。
一定の資本蓄積ができたらそれを雪だるまのように転がして大きくできます。
猿払村の御殿街は、大きくなった雪だるまなのです。
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