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企業が社員に「HIV検査」を要求したらどうなるか?社労士の回答は

企業に義務づけられている従業員の健康診断と、昨年12月から導入されたストレスチェック制度ですが、これらは同時に重大なプライバシー問題が発生する恐れもあります。無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、企業としてしっかり認識すべき従業員のプライバシー保護について現役社労士がわかりやすく解説、特にストレスチェック制度については細心の注意が必要と指摘しています。

注意! 採用後の健康診断とプライバシー侵害

誰であろうと、他人のプライバシーを侵害することは許されません。しかし、御社の従業員に対して、どうしてもプライバシー問題に触れる事態が発生する場合があります。

今回は、採用後の健康診断とプライバシー侵害について。

会社は、従業員の健康診断を行う義務があります。雇い入れ時と年1回の健康診断を行う義務があり、従業員は、その健康診断を受診する義務があります。会社は、従業員が健康診断を受診するよう命令することができます。

ただし、いくら法律(安衛法)によって従業員に受診義務が定められていても、一応、就業規則に受診義務を明記することが必要です。

また、法定の健康診断以外の健康診断の受診を命令できるかという問題もあります。これは、就業規則に定めがあることは勿論のこと、受診命令に合理性がなくてはなりません

たとえば、伝染病に関する健診や、特に危険を伴うような職務に就くときの適正判断のための健診などは、合理性が認められます。実施OKです。

しかし、HIV検査などは、ダメです。HIV感染を知ることが、仕事上必要であることなど、まず有り得ません。このような検査は、プライバシー侵害となりますし、HIV感染を理由とした解雇などは当然無効」となります。

昨年12月から始まったストレスチェック制度については、特に取り扱いに注意が必要です。検査自体は、精神疾患者をあぶり出すようなものではなく、あくまで「未然防止」が目的なのですが、それでも、検査結果は、ものすごくセンシティブな情報です。絶対に漏洩があってはなりません。

そこで、あらためて、ストレスチェック制度での情報取扱に関する注意事項を述べていきます。

ストレスチェックを実際に行うのは、医師、保健師、研修を受けた看護師・精神保健福祉士です。では、この検査に、会社の人間はどのように関わることができるのか?

ストレスチェック調査票の「配布」は、御社の事務職員が行うことができます。しかし、記入が終わった調査票の「回収」や「データ入力作業」「評価結果の出力」「本人への結果通知」などは、御社の「人事権者」は携わることはできません(それ以外の事務職員はOKです)。要は、記入後の調査票には、「人事権者は触れることが許されないということです。

そして、この検査に関わった事務職員には、守秘義務が課されます。違反者には罰則もあります

また、「評価結果の確認」や「面接指導の要否の判断」は、医師、保健師、研修を受けた看護師・精神保健福祉士しか行うことはできません。

さらには、労働者本人の「同意」がなければ、会社は、医師等から検査結果の提供が受けられません(結果を知ることができません)。

以上を踏まえて、あらためて考えてみてください。

注意! 従業員のプライバシー保護について

image by: Shutterstock

 

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