直木賞作家・石田衣良がメルマガを創刊。動機は出版界の「断末魔」

 

ところで石田さんは、最近Twitterを始められたそうですね。

ネットに対しては、ちょっと苦手意識があって、今までそういうのをまったくやって来なかったんです。だから、もう新鮮というか、ビックリしちゃいますね。

ただ僕自身、Twitterで自分に宛てられたメッセージを読んだり、他の人をフォローしたりするのは、まったくしないかな。ツイートしてそれでおしまい。別に炎上したとしても、僕は見ないで放っておくから構わないと(笑)。

いわゆるネット社会について、石田さんはどのように考えていらっしゃいますか。

まだ完成していないものなんだと思いますね。既存のいろんな思想であるとか、もちろん新しい考えも出てきたりもするんでしょうけど、そういったものが塊になる前の、ゲル状のドロドロとしたものが漂っているような……そんなイメージでしょうか、今のネットの世界って。

今後どのように変化していくのかは想像もつきませんが、ただ1つ言えるのは、ネットの中でも格差というか、文化的な上下などで、徐々に分化は始まっているような気はします。それと、現在のネット上におけるメインストリームとは異なる、サイレントマジョリティーというか、あまり発言はしない「良識ある多数派」といった層も、実は多く存在しているという点についても、心によく留めておかないといけないと思いますね。

ネット上での表現に関してですが、これまでの紙媒体での表現と比べて、どのような点が大きく異なると思いますか。

質が少し違うような気がするんですよね。小説とかいわゆる紙媒体の世界って、すでに完成された大きな世界に、作品をぽんと渡すといったイメージだったんですが、ネットの世界というのは、もっと対応が1対1のパーソナルというか、その人のキャラクターや人間性が前面に出て来る感じがするじゃないですか。ですから、そういう部分を考えながら、ネットの世界にも対応していかないといけないとは思っています。

よくネットでは、共感とストーリー性があるものが支持を集めると言われますが、それに関しては小説の世界でも同じなんです。ただ最近は、ネタに苦しくなってくると、すぐに「佐村河内化」というか(笑)、「一杯のかけそば化」的なものに走ってしまう傾向があるというか……。僕のメルマガでは、そういうベタなコトをする気はまったくなくって、大人の余裕やユーモアなどをまぶしながら、表現していけるといいですね。

これからの作家の活動は、メルマガをはじめとしたネットの媒体を、大いに取り込んでいく方向になるのでしょうか。

最近の新人作家って、デビューしてからすごく苦労するんですよね。ファンの数も増えないし、出版社も本をなかなか出させてくれないので。

だから今後は、タレントさんがデビューしたら必ずブログを開設するように、新人作家たちも小説を書くのと平行して、ネットで自分の固定ファンを増やすための仕事もするのが、今後のデフォルトとなるんじゃないかと。ネットでちゃんとファンを回転させながら、小説の腕も同時進行であげていくと。当然ブログじゃなくてメルマガでも、同じことはできますよね。

もちろん新人作家じゃなくても、作家がメルマガを活用できるシーンはあると思います。たとえば、コアなファンを3,000人ほど抱えるちょっとマニアックな作家がいたとして、1冊分の作品が溜まったから、本を出そうということになったとします。今までならコアなファンに向けて2,000~3,000部を初版で刷っていたんですが、最近は出版業界も厳しいので、そういった小さなロットでの出版もなかなかできなくなっているんです。

でも、そういった作家が仮に5人集まって、メルマガで短編を発表しつつ回していけば……固定客も単純計算で15,000人になるし、本の出版も1人で作品を溜めていくよりも、かなり短いスパンで出版できて、作家たちも潤うと。

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それはとてもいいアイデアというか、実現させたいですね。

メルマガを活用すれば、そういうマニアックな作家さんたちを救済するプラットフォームのようなものも作れるなっていう気もするんですよね。

とにかく、出版の世界とネットの世界の連携って、できることがたくさんあるはずなんですが、まだ何ひとつとして成功していない。だからまずは現場から、どんなミニマムな形でもいいから、成功例をひとつ作りたいなと。成功すれば、あとからみんな付いて来てくれると思います。

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著者/石田衣良
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