社員がしでかした社内での犯罪行為。罰を受けるのはその社員だけ…というわけにもいかないようです。無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、ある社内盗撮事件の裁判で下ったちょっと意外な判決を紹介、さらに問題を未然に防ぐために会社がすべきことについても言及しています。
社員の盗撮に会社はどこまで責任を問われるのか
私の知人に「雨男」と呼ばれる人がいます。彼が参加するイベントはなぜか、雨になることが非常に多いのです。
みなさんの周りはいかがでしょうか? もしかすると「雨男」「雨女」と呼ばれる人がいるかも知れません(「私自身がそう」という人もいるかも知れませんね)。
ただ、当然ながら雨が降ることに対してその人に責任はありません。その人が直接雨を降らせているわけではないからです。
では、これが会社であればどうでしょうか? 会社が社員に指示して行わせたのであれば当然、会社にも責任はあるでしょう。そうではなく、社員が勝手にした行動に会社はどこまで責任を問われるのでしょうか?
これについて裁判があります。
ある着物の販売会社で、社員がビデオカメラで会社の女子更衣室を盗撮していました。それに対して、会社が適切に対応をしなかったため、そこに不満を持ったある女性社員がその不満を朝礼で話しました。
後日、会社の専務がこの女性社員のことを批判するような発言をしたため、それ以降この女性社員は職場にいづらくなり退職をしました。そこで、この女性社員が会社を訴えたのです。
では、この裁判はどうなったか?
この会社の専務の発言が問題であることは、おそらくみなさんも感じるところでしょう。実際に、この裁判でも専務に対する損害賠償請求が認められています。
問題は「盗撮」です。
これは、会社が社員に指示をしたわけではなく社員が勝手に行ったことです。会社はそれについても責任を負う義務があるのか?
裁判では、これについても会社が負けました。会社には、「労働者のプライバシーが侵害されないよう職場環境を整える義務がある」と、認められたのです。
そこで実務的に気をつけるべき点がふたつあります。まずひとつ目が、そういったことが起こらないように常に社員を啓蒙し続けることです。
具体的には、
- 社員研修を行う
- 定期的に朝礼や社内ミーティングで言い続ける
- 就業規則に懲戒事由として定め、しっかりと社員に周知する
などです。そしてふたつ目が、もし不幸にして起こってしまった場合は迅速に誠意をもって対応することです。今回の裁判例では、盗撮の事後対応が悪かったことが会社が負けたひとつの要因になっています。
また、これらを行うことは、「問題を未然に防ぐ」「最小限に抑える」という効果だけでなく社員の安心感にもつながります。問題が起こってからあわてて行うのではなく、今のうちからきちんと対策をとるようにしておきましょう。
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『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』
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企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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