食べログで人気の「割子そば」を喰らう悪魔、神集う地・島根に降臨

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山陰地方を東へ向けて爆走中の『ママチャリで日本一周中の悪魔』こと大魔王ポルポルさん。山口・萩でみかんを丸ごと使ったレア銘菓「夏蜜柑丸漬」を堪能した彼が、次なる目的地として狙いを定めたのは島根県松江市。八百万の神が集う場所として知られる地に、悪魔が行って大丈夫なんでしょうか……。

日本三大そばのひとつ「割子そば」に悪魔が舌鼓ss7

島根県松江市を目指して山道を進む我輩は、閉店したスーパーの前で寝たり、道の駅のWi-fiに繋いでスマホを触ったり、公園で寝たりと、まるでゴミのような生活を送っていた。

この日の気温は30度。ママチャリで山道を走る気温ではない。ゼーゼー言いながら、我輩はあまりの暑さにやる気をなくしつつあった。

「もう……だ、だめだ……」

しかし、ここは島根の山奥。やる気をなくしても誰も助けてくれない

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そんな我輩に対し、太陽光と急勾配は容赦なく襲い掛かる。

汗臭い体。慢性的な寝不足。虫を見れば「食べられるかなぁ……」と考えるほどの飢え。

何度も電車で帰りたいと思った。しかし、大魔王が電車に乗ってグッタリしているのがバレたら大変だ。仕方なくママチャリを押し続ける。

島根の山道は、海岸の近くを通っているはずなのに海が見えない。そしてコンビニが少ない。そのため草むらでの立ちションを幾度も強いられるという、過酷な行軍だった。

そんな過酷な状況を、我輩がなんとか乗り切ることができたのは、無事に松江まで辿り着いたら「食べログ評価で3.5以上の割子そばを食べる」という、密やかな楽しみがあったからに他ならない。

ご存知の通り、この島根は「八百万の神が集まる国」である。魔族と神々を比べて語るのは矛盾しているような気がするが、ゴミみたいな生活を送る我輩を、神は受け入れてくれるのか……ひょっとして罰が当たるのでは、と少しばかり心配していたのは内緒の話だ。

そんな島根の名物料理といえば日本そば。とくに、わんこそばや戸隠そばと並び日本三大そばと称される出雲の割子そばは、特に美味だと有名である。

そばに目がない我輩としては、何としてでもこの地でそばを食べたいという願望があった。果たして割子そばは、麺類にはうるさい我輩を納得させるものなのか。はたまた徳島ラーメンより美味なのか。いやいや、広島の激辛担々麺に匹敵するのか。

いや何よりも、早いところまともな食事にありつかないことには、空腹で倒れてしまう……。我輩はママチャリを漕ぐ足を早めた。

 

山口の萩から暑さと空腹に耐えつつ、ヘトヘトになりながら東へ向かうこと1週間。我輩は松江の地にようやく足を踏み入れた。

さすがに「神の国」と呼ばれるだけあり、その自然豊かで壮大な風景は、さしもの我輩も見とれるほどであった。

「さすがは神々が集う国だ。我輩の原点もここにあるのかもしれない……」

そんな風光明媚な島根には、出雲大社松江城宍道湖などといった名所名跡が数多く存在する。しかし、今はとにかくそばだ。美味なるそばが食べたい。

「魔族が神を恐れては何もできぬ。この地のそばは我輩のものだ!! ガッハッハッハ!!」

我輩はさっそくスマホを取り出し、近くにある食べログ評価3.5以上のそば屋を探す。すると、ヒットしたのが「ふなつ」というお店だった。

地元の人にも愛されていて、蕎麦好きが通う店。そのいっぽうで「売り切れ御免」なので、すぐに売り切れてしまうらしい。我輩は早速、そのお店に向かった。

店の前に着いたのは、昼の12時半ごろ。我輩は店の扉を勢いよく開け、「ガッハッハッハッハ!!」と叫びながら店内に入ろうした。すると、中にいた人々が一斉に我輩のほうへと顔を向けた。

お昼時とあって、店内は先客で溢れかえっていた。20人分ぐらいの視線が、我輩に向けて突き刺さる。我輩は迂闊にも顔が真っ赤になってしまい、それを隠すように扉をぴしゃりと閉めた。……仕方がない、出直しだ。

そして午後2時ごろ。再び店の前へと舞い戻った我輩は、さっきと同じように「ガッハッハッハッハッハ!!」と、中に入ろうとした。が、扉には“本日は売り切れ仕舞いでございます”と書かれた札が、無情にも釣り下げてあった。

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……さすがは神の宿る地。そう、我輩は罰が当たったのだ。

思い返せば心当たりはたくさんある。差し当たっての出来事だと、キャンプ禁止の場所にテントを張って野宿したのだが、これがいけなかったのだろうか。後悔先に立たずとは、まさにこのことである。

しかし、いくら罰が当たったとはいえ、すごく楽しみにしていただけに、これは納得できない。そば好きの我輩にそばを食わせないとは、良い根性をしているではないか。

「せっかく死ぬ気でママチャリ漕いでやってきたのだ。そばぐらい食わせろ!!

我輩はそう思い、店の扉をガラリと開けた。そして、店の前の札など一切見えてなかったようなふりをして、

「あのぅ……もしかしてもう売り切れました?

と、店の奥にいた店員さんに尋ねてみた。

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すると、意外なことにその店員さんは「1人分ならできるよ」と言うではないか。

……と、いつものパターンなら、白塗りの我輩を見て「ひぇぇ!」とか「まぁぁ!!」とか言って、恐れおののくハズなのだが、ここの店員さんはまったく驚かない

我輩は思いもかけずそばが食べられること以上に、店員さんのノーリアクションっぷりに、

「え……。は、はい……」

と思わずうろたえてしまった。

 

案内された席で待つことしばし。やがて店の奥から店員さんが、このお店の一押しメニューである「割子そば」を手にして現れた。

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そばは独特の三段の丸い漆器に盛られ、実に品があり鮮やか。またつゆのほうも、鰹節の香りが高くて我輩好みである。このつゆを作った鰹節で枕を作りたい……そう思わせるほどだ。

「なんと美しき蕎麦なのだ。す、すばらしい!! ガッハッハッハッハッハ!!」

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割子そばは、器に盛られたそばに好みの薬味を乗せ、そこにつゆをかけて食べるのが作法である。そこで一段目は薬味を乗せず、そばにそのままつゆをかけて頂いてみる。

そばは、つなぎなしのそば粉100%で打たれており、やや短め。それを一気に啜り込むと、そば本来の風味とともに、ほのかに甘辛いつゆのうまみが、口の中に広がる。そば好きにはたまらない逸品だ。

二段目からは、薬味を乗せて頂く。こちらもネギの風味がきいて、なかなかの美味である。

喉を詰まらせながら、夢中になってそばを手繰り続けること5分ほど。我輩は三段に盛られていたそばを、たちまち完食してしまった。

店員さんに向けて丁重に礼を述べ、店を出た我輩。それにしても割子そばは、ゴミのような我輩の心を洗い流し、きれいで純粋なる心にしてくれた。

我輩は神の恵みに感謝しつつ、「このそば屋の前で野宿するのも悪くない」と思った。

とはいえ、この島根は「神の集まる場所」だ。そこでやたらに野宿だの支配などすれば、再び天罰が下る可能性が大である。

我輩はこの地の支配を諦め、再びママチャリにまたがった。そして次なる目的地である鳥取県に向けて、ペダルを漕ぎ始めた。

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DATA
中国山地蕎麦工房 ふなつ
住所:島根県松江市外中原町117-6
営業時間:11:00~15:00(無くなり次第終了)
定休日:月曜日

 

『大魔王ポルポルの日本征服の旅』
著者/大魔王ポルポル
日本一周の旅をしている大魔王ポルポルである。旅の裏側、隠れた小話など話したいことは盛り沢山!! だがしかし! タダで公開はできない。メールマガジンで日本のいろいろなことを掲載するのだ。メルマガに記載のアドレスに悩みや質問を送ってくれればメルマガで公開回答するぞ! ガッハッハッハ!!
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