山陰地方を東へ東へと進んでいる『ママチャリで日本一周中の悪魔』こと大魔王ポルポルさん。島根で名物「割子そば」を堪能した後に向かったのは、おとなり鳥取県の米子市。……実は米子って、どら焼きで有名な場所だって、みなさんご存知でしたか?
悪魔もアチチ…どら焼きを丸ごと揚げた「揚げどら」って?
ママチャリで日本を征服する旅も、いよいよ終盤へと差し掛かってきた。
日本列島は、このまま黙って大魔王に支配されるのを待つだけなのか……。きっと日本中が不安になりながらビクビクする毎日を過ごしていることだろう。
そんななか、鳥取県の米子市が実は「世界一のどら焼きの生産量」を誇るという素晴らしい情報が、魔界から入ってきた。
甘いモノには目がない我輩。もちろんどら焼きも大好きだ。
思えば大阪ではフレンチトースト、この前の萩では丸ごとみかん羊羹など、日本中の甘いものを食べつくしてきた。こうなれば魔族として、本場のどら焼きも平らげなければならない。
そのうえ米子市には、どら焼きの神を祭る「どら焼き神社」まであるのだという。
「これは期待できるな! ガッハッハッハッハッハ!!」
闇のオーラは全開。ママチャリ(魔魔チャリ)のスピードは時速12キロメートル。
「ガッハッハッハッハ!! どら焼き、どら焼き……」
我輩はワクワクした気持ちを抑えつつ、国道9号線を東へと向かう。横には島根が誇る名所である宍道湖や中海が見える。普段なら広大でキレイな湖面に心を奪われるところだが、いまの我輩の頭の中はどら焼きでいっぱいだ。
「どらやき……どらやき……ガッハッハッハッハッハ!!」
こうして国道9号線は、闇へと落ちていった。
松江からママチャリを走らせること数時間。途中、何度も警察が横を通るも、愛想の良いお辞儀で職務質問を切り抜けつつ、我輩は無事に米子市にたどり着いた。
しかし、一体どの店のどら焼きが美味しいのか、まったくわからない。
「おい!! この街で一番ウマいどら焼き屋はどこだ!! どこなのだ!!」
我輩はスマホに向かって怒鳴りつける。するとグーグルは、それは「丸京庵」だと教えてくれた。
我輩はさっそく、その「丸京庵」へと向かった。すると、その店の隣には例の「どら焼き神社」が併設されていた。
どら焼きの神を前にして、テンションが上がる我輩。
「今夜はどら焼きパーティーだ!! ガッハッハッハッハッハ!!」
我輩はママチャリを置くと、意気揚々と店の中に入っていく。
「ガッハッハッハッハッハ!! ここのどら焼きはうまいと聞いたぞ、ニンゲンども!!」
しかし、中にいる店員さんは、白塗りで不気味な我輩の顔を見てもまったく動じない。どうやら忙しいようだ。我輩は邪魔にならないように、店の隅の方へと移動する。
店の中には、買ったどら焼きをその場で食べられるよう、ちょっとしたスペースが設けられていた。イスには大きなどら焼きのクッションまで置いてあり、それは我輩の心をくすぐる良いサイズのクッションだった。
店員の忙しさが収まるまで、我輩はどら焼きクッションで遊びつつ、店の中を隈なく偵察することにした。
すると、この店には普通のどら焼き以外にも「ふんわり焼き」「どら焼きラスク」「パンケーキどら焼き」といった、魅力的なスイーツがたくさん並んでいることに気付いた。どんな味なのか買って確かめたいところだが、長旅の途中なため手持ちの金が少ない。さて、どうしようか……。
「!!! ……喜べ! 我輩が試食してやるぞ!!」
我輩は店員に試食の許可をもらい、さっそく「どら焼きラスク」をつまむ。文字通り、どら焼きをラスクのようにしたという、不思議な食べ物。しかし口にしてみると、甘い餡子のカリカリとした食感がたまらない。
「え……ウマ!」
思わず試食だということを忘れて、ボリボリと食べてしまった。
続いて、「ふんわり焼き」にも手を伸ばす。どら焼きの生地が通常の物よりフワフワしているから、どうやら「ふんわり焼き」と名付けられているようだ。
「な……なんだこれは!!」
口の中でとろける食感。まるで、夢の中にいるみたいだ。
あまりのウマさに試食が止まらない。……とはいえ、タダ食いばかりするのは、いくら我輩が魔族だとはいえ気が引ける。
「おい、店員! 貴様に命令する。我輩のために「揚げどら」なるものを1つもってこい!!!」
……とエラそうに言いたいところだが、ここはお金を差し出しつつ、
「あの……すみません。「揚げどら」を1つもらえますか?」
と謙虚にお願いをした。
一応は注文をしたということで、後ろめたさがなくなった我輩。再び試食という名の乱れ喰いを始めた。
先ほどの「どら焼きラスク」「ふんわり焼き」にくわえ、「抹茶味のどら焼き」「パンケーキどら焼き」などなど、瞬く間に全てを制覇した。なかでも個人的には、「どら焼きラスク」が気に入った。
「試食はタダだ! ガッハッハッハッハッハ!! うまいうまい!!」
試食コーナーがすっかり闇に支配されたその時、注文していた「揚げどら」が供された。
「だ……大魔王様!! で、で、で、出来上がりました!!」
恐る恐る「揚げどら」を我輩へと差し出す店員さん。
「ガッハッハッハッハ!! これが「揚げどら」! 日本の輝く食べ物か!!」
辺りには、すでにあんこの甘い匂いが漂っている。
「揚げているどら焼き……ものすごく熱いのだろうな。 ガッハッハッハッハッハ!!」
我輩は用心をしながら、「揚げどら」を口に入れる。
「あ……熱い!!! なんだ! これは!!!!」
どら焼きの中は灼熱地獄だった。欲張って口の中にいれたので、思いっきり舌をやけどしてしまったのだ。
「くっ! ……むかつく野郎だ!」
思わず「揚げどら」に向かって毒付くが、むこうは湯気を上げるばかりである。
こうして熱さと闘いながら、我輩は「揚げどら」を堪能したのであった。
ひとしきりどら焼きを食べ終わると、どら焼きの神に一言お礼を言おうと、「どら焼き神社」へと向かった。
その名の通り、どら焼きを祭っている神社だが、そういえば以前には、そうめんを祭っている「そうめん神社」にも行ったこともある。
「日本には、まだまだ変わった神社があるのだな。我輩もそのうち、魔界神社でも建立してやろうか。ガッハッハッハッハッハ!!」
そんなことを考えながら社の前に立ち、手を合わせて一言お祈りした。
「事故なく、ゴールさせてください」
サクサクかと思えばふわふわだったりと、多彩な表情を見せてくれたどら焼きへの恋心が芽生えてしまい、鳥取県を支配できなかった我輩。そもそも鳥取はマンガ大国であったり、広大な鳥取砂丘があったりと、魔族からしても強敵なのである。
我輩は鳥取県の支配を諦めて、再び西へと向かった。残す征服の場所は、あとわずかだ。
DATA
丸京庵 米子本店
住所:鳥取県米子市灘町3-57
営業時間:9:30~18:00
定休日:火曜日
『大魔王ポルポルの日本征服の旅』
著者/大魔王ポルポル
日本一周の旅をしている大魔王ポルポルである。旅の裏側、隠れた小話など話したいことは盛り沢山!! だがしかし! タダで公開はできない。メールマガジンで日本のいろいろなことを掲載するのだ。メルマガに記載のアドレスに悩みや質問を送ってくれればメルマガで公開回答するぞ! ガッハッハッハ!!
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