なぜ「ナンバーズ」は他の宝くじより売れるか?当たる気がするカラクリ

2016.08.24
by まぐまぐ編集部
 

さて、「認知心理学」という学問があります。何やら突然難しく聞こえるかもしれませんが、これは人がモノゴトを認識・理解してから判断を下すというプロセスを研究する分野です。そして、認知心理学の研究者達が面白い証明をしています。

「人間は、物事が不確実な状況の中で判断を下す時は、ある規則性をもって間違いをしてしまう」というのです。そして、その間違いで最もよくあるのが自分の信念や能力に対する過信と、将来に対して過度に楽観主義であることなのだそうです。

具体的にどういうことなのか、それを検証した実験を交えて説明しますね。その実験では、沢山の被験者に対して、こんな質問を投げかけます。

「あなたは、平均的なドライバー、あるいは自分以外のドライバーと比較して、あなたの運転技術はどのくらいのレベルだと思いますか?」

この問いで、被験者が他人と自分を較べて運転能力にどれだけ客観的な認識があるかどうかを知ることができます。この問いをアメリカの大学の学生にしたところ、80~90%が「自分は他人よりも運転が上手で、事故を起こす可能性も低い」と答えるのだそうです。

日本人はアメリカ人に比べると慎ましい性質があるので、ここまで高い割合にはならないかもしれませんが、それでも多くの人は「周りの人の方が運転がヘタだ」と思っているのではないかというのが僕個人の印象です。というのも、他のドライバーの文句を言いながら運転する人をしばしば見かけますが、「あ、今のは私の判断ミス!私の運転が悪かった!」と言いながら運転する慎ましい人は見たことがありません(笑)。

当然のことながら、被験者が「自分の運転能力は他人より上だ」というは思い込みや直感であって、根拠は何もありません。確率論的には被験者が多数であればあるほど、皆の運転能力は平均レベルに落ち着いてきますし、そもそも集団の中で自分のレベルがどれくらいなんて判定できないのです。でも多くの人が、自分の運転能力を過信してしまうのです。

もう一つの実験では、同じアメリカの大学生に彼らとクラスメイトの将来性に質問を投げかけます。

すると、「自分たちの将来はバラ色で、仕事も成功して幸せな結婚をして一生健康だ」と答える一方で、「ではあなたのクラスメイトの将来はどうなると思う?」と問われると、「病気になったり離婚したり、諸々の不幸に見舞われるだろう」と予想するのだそうです。

この回答はあまりに過信していて、日本人からするとちょっと滑稽にも映ります。しかし、彼らが予想するクラスメイトの未来は、皮肉抜きで平均的アメリカ人に現実的に起きうる事なのです。

このような心理学実験は色々行われていて、他の例では「自分の運動神経は上位25%以内に入っているか?」という、誰でも判断できそうなかなり客観的な問いに対しても、60%の被験者が「入っている」と答えたという報告もあります。そして被験者のたった6%が、自分の運動神経は平均よりも下だと答えたのです。

みなさんはいかがですか?日本人だと遠慮っぽい部分があるから、人前では思わず「私は平均かそれ以下だと思う」と言ってしまうかもしれませんが、心の奥ではどうでしょう。

少なくとも車の運転を見ている限りでは、不快なことがあった時に他のドライバーのせいにすることはあっても、自分のせいにしている人はあまり多くない気がします。

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