これはルトワック的にいえば、アメリカのエリートたち(CIAから政府高官、大統領まで)は、「信頼や評判を守るアメリカ」という存在を「発明していた」ということになります。
もちろん朝鮮戦争がアメリカにとって失敗だったかどうかは別問題ですが、ここで私が指摘したいのは、今回のアフガニスタン戦争の場合にもアメリカのエリート層の中に同じような心理状態が働いている、ということ。なぜなら冒頭に紹介した記事にもあるように、アメリカは今後、アフガニスタンの崩壊を防ぐために、毎年定期的に1~2兆円の支出を続けなければならないわけです。
しかもこれは、ただの「現状維持だけのための費用」ですから、どう考えても米軍や政府内での士気は上がりません。結果として、現在の大統領選挙でもアフガニスタンの戦争は「なかったこと」にしようという傾向が強くなるのは当然でしょう。
そういった意味で、われわれが気をつけなければならないのは、このような、「失敗したという評判を気にしてダラダラ続ける」という悪癖であり、これは(エリート)集団だけではなく、個人にもすべからく当てはまるという点です。
戦略の失敗は、われわれの怠慢な気持ちや余計な「発明」から生まれます。アフガニスタンにおけるアメリカの「公然の失敗」を例に挙げるまでもなく、われわれもそれぞれ肝に銘じておきたいものです。
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『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』
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