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ドイツ銀行よ、お前もか。日本を巻き添えにする「欧州発の大恐慌」

浮かんでは消え、消えては浮かぶ「ドイツ銀行破綻危機」の懸念。その度、世界の株式市場は乱高下を繰り返しています。苦境に陥っているとはいえ、世界最大級の同銀行が立ちいかなくなるなどということはあり得るのでしょうか。そして日本への影響は? メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんが、評論家やエコノミストが危険すぎて書けないと二の足を踏むというその現実を記しています。

ドイツ銀行破綻の懸念でどうなるか?

世界最大級のドイツ銀行が破綻するのではないかという懸念が市場を駆け巡り、株価の変動が大きくなっている。その今後を検討する。

ドイツ銀行破綻の懸念

第2のリーマン・ショックも間近か。欧州金融危機で日本が被る大打撃」でも書いたが、ドイツ銀行破綻の懸念が再浮上している。発端は、住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売をめぐって米司法省から140億ドル1.4兆円の支払いを要求されたことであるが、BIS(国際決済銀行)で定められた自己資本比率の基準値を割り込む可能性がある、言い換えると資本不足を起こすと見られ、しかし、債権の発行は信用力がないためにできない水準であり、株価も最安値であり株式の増資もできない状態になっている。

メルケル首相は、国内総選挙が近く、またギリシャの銀行支援にも反対したことで、ドイツ銀行への支援を拒否したとも伝えられている。政府保証もない状態では、資本増強もできないし、コンメルツ銀行との統合も、コンメルツ銀行が拒否したようである。

このため、世界の株式市場は、主要25市場のうち21市場で下落した。ドイツ発の金融連鎖不安が巻き起こったことで、金融株を中心に下落が目立った。

9月30日には、ドイツ銀行は、住宅ローン担保証券(RMBS)問題で、54億ドル約5,460億円の支払いで米司法省との合意が近いとの報道で株価が急上昇になっている。しかし、ここで終わらない。銀行の破綻は徐々に表面化してくることになる。

しかし、投資関係の評論家や機関投資家、エコノミストは、要らざる不安を掻き立てると取り付け騒ぎを起こし、この責任を取らされるために書けない。私はそのような関係者でないし、ドイツのことでもあり、ドイツ人が読めない日本語なので書かせてもらう。

懸念は繰り返す

その後、ヘッジファンドの客が逃げ始めているという。一般預金者が解約すると取り付け騒ぎであるが、それとは違いヘッジファンドが逃げるということは、ドイツ銀行の儲けの中心である投資銀行部門の契約解除であり、かつ、リスクの匂いを感じ取ることを商売にしているヘッジファンドであり、徐々にドイツ銀行の儲け頭も消耗しているように感じる。

ドイツ銀行のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)は、このため追加資産の売却や投資銀行での一段の削減を迫られることになるが、EUはマイナス金利であるので普通銀行部門で利益は出ない。このため、投資銀行部門を強化して、普通部門を縮小するしかない。しかし、過去の投資部門の悪行で、世界的に訴訟を起こされているので、投資銀行部門でもコンプライアンス強化が必要であり、儲けを出せるかどうかであるし、デリバティブでのつまずきも大きく儲けを出せないことになっている。

残るは資産運用部門であるが、資本増強のために資産を売却する必要がある。というようにまだまだドイツ銀行の苦境は解決していない。ドイツ銀行の儲けはどこで出すのかという課題が解決できないでいるようだ。

このため、ドイツ銀行の破綻懸念は今後も何度も浮かび上がる可能性が高い。その都度、金融株は大きく下落することになる。懸念が晴れると急上昇となるが、これを破綻までは繰り返すことになる

ヒンデンブルグ・オーメン

米国の株価は史上最高のレベルにあるが、この市場に急落を知らせるヒンデンブルグ・オーメンのサインが出そうだという。それは、2015年にも出ていたが、このサインが出ると、5%以上の暴落になっている。

直近では最後にサインが点灯したのは昨年2015年の6月中旬だった。結局昨夏は、7~8月の中国株の大暴落をきっかけに、NYダウは1万8,000ドル台から一気に1万5,000ドル台に下落した。

同日に下記の3項目が起こった際に「サインが発生する」と言われる。

  1. NYダウの値が50営業日前を上回っている状態(10週移動平均線を用いる説も)
  2. NY証券取引所(NYSE)での52週高値更新銘柄と52週安値更新銘柄の数がともにその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上となる(つまり専門用語で言えば新高値・新安値比率が2.2%以上。2.8%以上との説もある)
  3. 短期的な騰勢を示す指標である「マクレラン・オシレーター」(McClellan Oscillator、オシレーターは「振り子」の意味)の値がマイナス

現在、3項目中3.の一つだけがクリアしている状況だが、1.2.の項目についてもクリア間近な状況のようだ。

しかし、この裏には、トランプ大統領になるリスク、ドイツ銀行破綻リスク、北朝鮮戦争リスクなどが考えられるが、その中でも一番可能性が高いのがドイツ銀行破綻リスクではないかと見る。

リスク・プレミアム発生で、NYSE市場が大暴落すると、おそらく東京市場も大暴落する可能性が高い。

日経平均はどうなるか?

このサインが出たら、日経平均の最安値は1万4,000円台入りしてその後1万5,000円台になると想定せざるを得ない。1万8,000円台を想定する証券会社は、またも敗北する可能性がある。それに従って投資している人は負けである。この証券会社は、いつも強気であり、芸風とも言える感じであるので、リスクを見ないようである。

しかし、そのサインが出るまでは、1万6,000円台の後半と前半の繰り返しになると見える。

日経平均がそれほど下がらないのは、日銀のETF買取額が大きく、カラ売りを抑える効果があるためで、この部分では、大きな効果がある。日銀の資産買い取りは金融政策としては非常に良いと思う。

日銀マイナス金利深掘りは日本経済を壊す

しかし、日銀の問題はマイナス金利の深掘りである。黒田総裁は、マイナス金利の深掘りを表明しているので、銀行は不安視している。日本の銀行は、投資銀行を兼務できずに、普通の銀行業務しかしていない。この普通銀行部門の利益がマイナス金利政策で出ていない

このため、ドイツ銀行のように資産運用や投資ができずに、資金の貸出しで儲けを出すしかない。

このような状態でドイツ銀行の破綻が起きたら、大変なことになる。このため、日銀も当分は、マイナス金利の深掘りは厳禁であるし、銀行の健全性を確保しないと金融不安が日本にも起こる可能性が出てきてしまう。それは日本経済を壊すので、日銀としても本末転倒である。

黒田総裁は、公式的に金融不安がある間はマイナス金利の深掘りをしないと表明するべきである。そうしないと、銀行の株価が落ちて、資金不足を起こす銀行が出てくる可能性がある。

欧州のECBもドイツ銀行だけではなく、イタリアの銀行も倒産懸念が出ているので、マイナス金利政策を元に戻して、日銀と同じようなイールドカーブ政策にシフトするべきなのである。マイナス金利がEUを壊しているように感じる。

さあ、どうなりますか?

image by: 360b / Shutterstock.com

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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