真田丸『第43話』裏解説。「籠城」作戦は本当に愚策といえるのか?

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は、敵に討って出るか、籠城するかで揉めた「軍議」について。ドラマでは愚策として描かれた「籠城」ですが、果たして本当にそうなのでしょうか? 大坂城に集った者たちの背景を踏まえ、もう一度別の角度から見てみましょう。

今回のワンポイント解説(10月23日)

徳川軍と戦うにあたり、積極的に打って出て敵をたたくべきか、大坂城に籠もって迎え撃つべきか。皆さんはどっちの作戦がよいと思いますか?

援軍のアテのない戦いで籠城策を取ってもいずれはジリ貧になってしまうという幸村の指摘は論理的に正しい。だからこそ、戦いの何たるかをよく知っている又兵衛たちも、積極策に賛同したのだ。しかし、実際の豊臣方は積極策を採らなかった。ドラマでは、豊臣家首脳部が、浪人衆に主導権を渡したくないという理由から、籠城策を採ったことになっている。

もう少し別の角度から、考えてみよう。伏見城・二条城を攻略するとともに、近江に進出して宇治・ 瀬田の橋を落として徳川軍を分断し、豊臣方が優位な状況をアピールする、という幸村の作戦案は昌幸プランの焼き直しだ。

徳川方の城郭配置や、豊臣方の戦力、指揮・作戦能力などを考慮して、昌幸プランを実現可能な次元に落とし込んだのが、幸村プランといってよい。

幸村プランは、たしかに成功すれば家康の首をあげて一発逆転を狙うことができる。ただし、失敗すれば大坂城は丸裸の状態で敵の攻撃にさらされかねない。上田合戦を体験してきた幸村は、戦争はつねに不可測性と流動性に満ちていて、ギャンブルの要素を持っていることを、体感してきた。ゆえに、勝機をえるためにはリスクを取る必要があることも、わかっていた。後藤又兵衛や毛利勝永も、同じだったろう。

さて、豊臣家にとって大坂の陣は後のない戦いだ敗戦はそのまま滅亡に直結する可能性が高い。だとしたら、「滅亡を回避すること」が、豊臣家首脳部の目的になる。ゆえに、失敗するリスクの大きい作戦は、採りにくい。とくに、実戦経験のない者や乏しい者は、「勝機をえるためにはリスクを取る必要がある」という原理を、飲み込みにくい。「滅亡を回避するためにはリスクを押さえるという考え方が優先になる。

かたや牢人衆は合戦で手柄を立てて豊臣家に仕官したい。それに何より、失うものがない。どうしたって、ハイリスク・ハイリターンの考え方に傾きやすい。それが見えているゆえに、豊臣家の首脳部は、牢人衆に主導権を渡したくない…。おそらく、こうした思惑からの駆け引きが、大坂城内で展開していたのだろう。

もう一度、伺いますが、もしあなたが大野治長の立場だったら、幸村プランと籠城策、どちらを選びますか? この問題は、おそらく簡単に結論が出る性格のものではないだろう。ちなみに、僕は幸村プランを支持します。あ、だから、サラリーマン社会からドロップアウトして、フリーランス(牢人)になったのか(笑)(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

みんなの意見をまとめるのは大変! そういえば昌幸も、小県の国衆をまとめるのに苦労していま したね…(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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