NY在住の猫好き医学博士が警告する、危険な世界通貨「ドル」の実態

 

アメリカ分断の背景

前もって言っておきたいのですが、僕は今回のトランプ vs ヒラリーの構図に関しては非常に懐疑的に見ています。なので、どちらのサイドを支持しているわけでもありません。

一方で、オバマ政権の失敗については思う所がいくつかあり、ツイートもしました。すると「お前はトランプ派か! 怒」と苦情メールまで送られてきましたが、僕はそもそも「トランプ派」でも「ヒラリー派」でもありません。

アメリカの不思議なところは、地域によってハッキリとトランプ派とヒラリー派に分かれていることです。まずその事実を懐疑的に見る必要があると僕は思います。

NYに住んでいたら多くの人が自動的にヒラリー派になります。確かに、NYのような国際的な都市に住む人達はグローバル化を求めているし、リベラルな視点を持っているのは事実なので、ヒラリーが属する民主党の基本的な方針に政治的視点が合うのは分かります。

しかし一方で、NYに住んでいるからNYヤンキーズのファンで、大阪に住んでいるから阪神タイガースのファンというように、NYに住んでいるから民主党支持という「当たり前」的な流れで政治的視点が決まっているのも事実です。つまり、多くの人があまり深く考えずに支持政党を決めているのです。

ちなみに、僕は今まで民主党支持の州にしか住んだことがないので、ヒラリーを例として出しましたが、それはトランプ派でも同じです。あくまでも誤解のないよう。

今回デモをしている人たちの多くがプラカードを掲げていますが、やはりトランプの移民問題に関する発言や、人種・性差別を示唆する発言に対する怒りの抗議が多いように感じます。貿易、経済、国防に関してのプラカードを掲げている人はほとんど見かけないので、デモ参加者の多くは個人レベルでの反トランプ意識で運動をしているように感じます。

その背景にはトランプの爆弾発言がフェイスブック等のSNSでシェアされて拡散していることにありますが、一方でトランプの演説の動画を悪意をもって編集して、激しい人種差別や性差別をしているように聞こえるよう操作をしたものが出回っているのも事実です。トランプが嫌いだと、そういう動画の出所を疑わず鵜呑みにし、さらに憎しみが増します。

誤解のないように繰り返しますが、トランプは過激な発言をしてきたのは確かです。しかしその一方で、曲げられた情報が溢れているのも事実です。

一方、ヒラリーに対する情報はどうでしょう? ヒラリーの場合はFBIの捜査対象になったメール問題もそうですが、クリントン財団の寄付金を使って娘の3億円の結婚式をしたという話題がありました。また、ウィキリークスの情報によると、ヒラリーが政府高官会議で「ジュリアン・アサンジ(ウィキリークスの広報)をドローンで暗殺できないのか?」と発言したという話もありました。

トランプ派はこういった情報を耳にしてヒラリーを憎悪していますが、これらの情報もどれだけ信憑性があるか分かりません。いずれの支持層も、自分の支持する候補の都合の悪い情報は信じたくないので「デマ」だと主張するものです。しかしその情報に根拠がなければ、「デマ」とするその主張自体にも根拠がないのです。

僕は常々思いますが、自分の政治的視点の根拠に常に疑いをもって、その時々で再確認と調節をする必要があると思うのです。職業柄、僕の癖なのかもしれませんが、僕は自分の研究に対していつも批判的で懐疑的です。良いデータが出た時には、「嘘ちゃうの? 何かの間違いじゃないか?」と思って何度も再実験して確認します。石橋を叩いて渡るどころか、一回ぶっ壊してその橋の強度を確認したいくらいです(笑)。

しかし、科学者の中にも自分に都合の良いデータが出ると妄信的になる人がいます。盲信してしまうことはある意味、宗教的で危険です。同じように、一部のヒラリー派 vs トランプ派の行動に関しても似た現象が見られます。自分の見解に対して疑いを持たず「自分達は正しく敵対政党は間違いだ」と信じ込み、あげくの果てに攻撃的になっているのです。

これを書いていて、一つの例として、マーク・トゥウェインの「ハックルベリ ー・フィンの冒険」を思い出しました。物語の中の当時は奴隷制度真っ只中で、 黒人は奴隷として扱われていました。黒人を人間扱いしたら神様から罰せられると本気で皆が信じていた時代に、ハックは黒人奴隷のジムと逃亡の冒険をします。そして、ジムを奴隷ではなく人間として見て、最終的にジムの味方をするのです。

ハックとしては、その決断は社会と神を裏切る行動でした。しかし、ハックは社会や神に従わず、自分の考えで大きな決断をしたのでした。つまり、 ハックは社会や集団の流れに迎合せずに、自分の頭で考えて判断をしたのでした。今の一部のヒラリー派 vs トランプ派の大騒ぎをしている人たちは、自分たちの頭で考えているのか、それとも当てにならないSNSやニュースの情報に扇動されているのか、非常に疑問です。僕には後者に思えて仕方ありません。

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