NY在住の猫好き医学博士が警告する、危険な世界通貨「ドル」の実態

 

経済危機が本題

では僕はどう考えているのかということですが、僕はメディアやSNSの当てにならない情報に基づいてヒラリーか、トランプか、というようには考えていません。むしろ、ヒラリーになろうとトランプになろうと、これから起きうる問題の方を憂慮しています。そして、ここからが本題です。

前号で、「今のアメリカ経済は支柱がグラグラのジェットコースターのてっぺんにいる」と書きました。実体経済が伴わないのに、株価ばかりが膨れ上がり、国の借金も返せないレベルまでの超バブル経済だと説明しました。「バブル」と聞くとみなさんはどのようなイメージをしますか? 景気が良くて、お金がいっぱいあって、ドンペリを飲んで踊り、札束がお財布にいっぱい入っているイメージでしょうか? でも、本当の「バブル」とはそういう意味ではないのです。

「バブル」とは、株価なり不動産なりが「不適切に価格がつり上がっている状態」のことを言います。何やら小難しい話になってきた、と思われるかもしれませんが、難しくは書かないのでもう少しお付き合いを。

そもそも、どうしてそんなグラグラジェットコースター経済になったのかというと、2008年のリーマンショックで世界経済が崩れて以来、オバマ氏と連銀のベン・バーナンキ氏がドルを世の中にばら撒いたからです。お金を刷って、刷って、刷りまくったのです。お金が一杯あれば、経済が復活するだろうと思ったのです。

しかしそれは間違いでした。お金は一杯あっても、世の中を回らない限り経済は復活しないのです。そりゃそうですよね、お金があっても物やサービスが買われなければ経済活動は低迷している状態と同じです。結果、オバマ政権のここ8年は、戦後最低の経済成長でした。

でも、お金を刷りまくったのにはさらに大きな副作用がありました。国の借金が膨れ上がってしまったのです。小難しい話は抜きにしますが、実は借金が先にありました。政府が借金をして、連邦銀行(FRB)がお金を刷る、利子が生まれて借金がさらに膨れ上がり、さらにまたお金を刷る、その繰り返しです。

日本も同じですが、僕達が支払っている税金は公共事業というよりもむしろ、この利子の支払いにかなり使われています。アホっぽい話に聞こえるかもしれ ませんが、アメリカ政府がお金を刷った量がどれほど正気の沙汰ではなかったか、このグラフを見ると分かります。

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青い線で表しているのが、ここ100年間のアメリカ政府が刷ったお金の量です。グレーの縦線はリセッション(不況)です。

2008年のグレーの線はリーマンショックによる不況です。そして2009年にオバマ政権になってから、 ものすごい勢いでお金を刷っている(青線が上昇している)のが分かると思います。

歴史上、ここまで激しいことをアメリカはやったことがありませんでした。借金が返せなくなると、政府には2つの選択肢が残されます。一つは「返せません、ごめんなさい」と正直にデフォルト(破綻)することです。ギリシャのようなシナリオです。

もうひとつは、さらにお金を刷ってそのお金で借金を返すのです。アメリカはいつも後者の選択肢をとってきました。しかしこれをすると、激しいインフレを起こし、国民から富を奪ってしまいます。お金を刷ると何故国民から富を奪うことになるのか、猫のカリカリを使って超簡単に説明します。

例えば、世の中にお金が100ドルしかなかったとします。その100ドルで100個のカリカリが買えたとします。政府はさらに100ドルの借金があるので、新たに100ドルを刷ったとします。そして政府はその100ドルを借金返済に使います。借金返済の時点では、その100ドルはカリカリを100個買える価値があります。

ところが、この新たに刷った100ドルが世の中に広がると、世の中に出回るお金の量は200ドルになります。 カリカリの量は今までと同じですから、お金の量が増えると市場原理でカリカリの値段が倍になります。みんなの給料も単純に倍になれば良いのですが、世の中はそううまくできていません。

結果、皆は今までの半分のカリカリしか買えなくなってしまいます。持っているお金の額が減っていなくても、世の中の物価が上がったら資産が減っているのと同じことです。これが、政府や銀行が好きなようにお金を刷って使い、結果的に国民から搾取しているカラクリです。

これを「大規模な詐欺だ」という経済の専門家もいます。でも、国民は全くこうして富を奪われることに気づかないのです。

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