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中国政府の壮大な実験。1億人「強制」移動計画で農民たちが暴徒化

一部報道では李克強首相が外交面などで再評価され始め、以前に比べ求心力が低下したとも言われる習近平国家主席ですが、何とか力を維持しようと躍起になっているようです。しかし、無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の著者・嶌さんは、習政権による強引な施策で国民たちの不満がたまり各地でデモが頻発していると指摘、故・田中角栄元総理の行った「列島改造論」のようには上手くいかないだろうとの見方を示しています。

「核心」となった習近平がたくらむ、1億人大移動計画から見えるもの

本日は中国を取り上げたい。習近平氏は「核心という中心の中の大中心という意味の位に位置づけたと発表。この「核心」という言葉は党指導者として別格の存在であることを意味する呼称として、最近の中国メディアに頻繁に登場している。

「核心」というのは、毛沢東や鄧小平、江沢民・元総書記に使われたが、胡錦濤前総書記には用いられなかった。習氏は来年秋に開催される5年に1度の中国共産党全国代表大会度の大会で人事が決定するため、この時期に権威づけをしているのだろう。

その主な要因は…

自分は格別な存在になったということを世界に知らしめたわけだが、主な要因は来年秋に政治局常務委員7人が決定されることだと思う。定められた定年規定により68歳以上は中央政治局は退かなくてはならない。そのルールに則ると、習近平国家主席と李克強首相は続投の予定だが、その他の5人は退かなくてはならない。

そのため、今回「核心」ということを発表すると共に、党員の政治活動の指針となる準則を定めた。これにより、引き締めの重点を政治局常務委員や政治局員、中央委員ら「高級幹部」に置いたり、政権の求心力を維持するために「反腐敗運動を続ける姿勢を明確に示すことで習近平一強体制をさらに強めた。

日本の列島改造論に救いを求める!?

背景には中国国内の経済状態が芳しくないため、ここで大胆な計画を進めていこうという思惑も見え隠れしている。この計画とは、中国は総人口13億7千万人のうち農村には6億2千万人の人口がいるが、その内の1億人を都市に移動させることを目標としている。そして、残った農村の跡地を再開発し都市部に変える。その後、さらにそこに別の農民を移動させていく施策によって、経済を活性化させて行こうとしている。

中国経済は以前は2ケタ成長だったが、3年前から6~7%の成長率に留まり、実質は3~4%ともいわれる。いわば、田中角栄氏の「列島改造論」のようなことをしようとして、農民を労働者にしようともしている

強制移動により、各地でデモが頻発…

中国では1958年以来、都市住民と農村住民は「戸籍」で区分され、 双方の移動は厳しく制限・管理されてきた。そのため農村の戸籍を持った人は、都市に行くことが難しかった。たとえ、行ったとしても医療や教育サービスを受けることができない。また、農民が農地を離れると土地の「使用権」を取り上げ、土地に縛り付けてきた。

ところが、今回の新たな施策により役人が突然来て「ここが再開発地区となったため、1ヶ月以内に出て行け」と告げている。その後農耕具を強引に奪い、仕事が出来ないよう追い込み、農民は強制的に都市部に移動させられている

移動にあたって、土地の使用権の買取や職の斡旋はしてくれる。しかしながら、これまで農民として生きてきているのでなかなか新たな仕事は見つからない。労働者やアルバイトでなんとか食いつないでいる状態で不満がたまり、中国各地でデモが頻発しているという状況に至っている。

カギは農村部への対応

習近平氏は田中角栄氏の施策をまねしたかどうかは定かではないが、こうした施策によって経済の向上を図ろうとしているのだろう。

軍部においても軍のあり方を変えようとしていることから軍を辞めた人たちがデモを起こしている。さらに、党幹部に対する腐敗の締め付けが厳しくなり、党内部にも反発がある

今後、今回の施策によって失業者が増える可能性もある。中国は「工業国家」になりたいと奮闘しているが、ポイントとしては農村部をどうするのかがカギであり、日本をまねた施策がうまくいけばよいが、これが上手くいかなかったときにどうなるのか「核心」の真価が問われるだろう。

(TBSラジオ「日本全国8時です」11月8日音源の要約です)

image by: Wikimedia Commons

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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