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シェア7割でぶっちぎり。タイムズのカーシェアは何が凄いのか?

マイカー離れが進む昨今、自動車販売店にかわって「カーシェアリングサービス」が次々に登場しています。その中でも群を抜く支持を集めているのが、パーク24が運営する「タイムズカープラス(TCP)」です。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、同社の強さの秘密を支柱となる「駐車場事業」と絡めながら分析しています。

タイムズのカーシェアが「シェア7割」のワケ

駐車場最大手パーク24が運営するカーシェアリング(自動車を複数の人が共同で使用するシステム)の「タイムズカープラスTCP)」が絶好調です。

2009年5月にサービスを開始し、11年10月期には8.5億円の営業赤字だったTCPは、14年10月期に通期で初となる黒字を実現、15年10月期は12.6億円の営業黒字となりました。今期は、売上高は185億円、営業利益は24億円を目標としています。

交通エコロジー・モビリティ財団によると、16年3月における国内のカーシェアリングの会員数は84万6,240人とし、1位がTCPの60万997人、2位がオリックスカーシェアの14万9,137人、3位がカレコ・カーシェアリングクラブの4万133人となっています。TCPは国内で71%のシェアとなり独走状態です。16年10月末の会員数は71万9,434人となっています。国内でのカーシェアリングはオリックス自動車が02年より初めて開始しましたが、後発のTCPが抜き去ったかたちです。

パーク24は中核事業である駐車場事業も好調で、同社の業績は右肩上がりで成長を続けています。16年第3四半期決算は、売上高は前年同期比8.1%増の1,420億円、営業利益は20.0%増の149億円となっています。16年通期では過去最高となる売上高1,920億円(前年同期6.8%増)、営業利益は212億円(同13.2%増)を計画しています。

TCPの成長を支えているのが駐車場事業です。カーシェアリングの成否はサービスの特性上、貸し出す車の提供場所の利便性に強く影響を受けます。

カーシェアリングは短時間でも気軽に車を利用できることが特長です。一般的なカーシェアリングは15分からの利用が可能で、買い物や人の送迎といった短時間の用途でも活用できます。そのため、コンビニのようにいつでも気軽に利用できる必要があります。この利便性を実現するためには、利用者の居住地の近くに車を貸し出す場所がある必要があります。よって、貸出場所の数が重要な要素となります。

パーク24の16年10月末時点のタイムズ駐車場(同社の駐車場ブランド)の数は1万5,792件です。コンビニ最大手のセブン-イレブンの同時点での店舗数は1万9,076件です。セブン-イレブンの店舗数に匹敵する数のタイムズ駐車場があります。そのタイムズ駐車場にTCPで貸し出す車を配備することで、利用者はコンビニ感覚で気軽に利用することができます。

一方、競合他社の多くは貸出場所の賃貸や保有のために追加のコストを拠出しています。しかし、パーク24ではその必要がありません。自社のタイムズ駐車場の遊休場所を利用できるため、場所確保のための追加のコストが発生しません。TCP用の車をタイムズ駐車場に配備するだけで済みます。

TCPの成否を握るタイムズ駐車場の確保は同社の400名の営業員が担っています。地道に街を歩いて遊休地を探すドブ板営業が特徴です。都市部を中心に存在する遊休地に着目し、遊休地を駐車場として有効的に活用するビジネスモデルを構築しました。街の遊休地があれば土地オーナーと直接交渉します。基本的に不動産屋を介しません。土地を購入したものの、その活用方法を決めかねている土地オーナーから土地を賃借し、用地提供を受けて、駐車場を整備していきました。

遊休地は放置しておくと固定資産税だけがかかり続けます。また、一時的にアパートやマンションを建てる場合は売却時にコストや手間がかかります。土地オーナーとしては、土地をパーク24に賃貸することにより、安定的な収入が得られる上に、用途が決まった際にかかるコストや手間が少なくて済むというメリットがあります。

地価が高い日本では慢性的に駐車場不足が続いています。06年6月に道路交通法が改正され、駐車違反の取り締まりが強化された結果、都市部を中心に駐車場需要が一気に高まりました。

地価が高い日本において、土地を購入して駐車場運営を行うことはリスクの高いビジネスです。そのため、広域展開するのは資本力を有する一部の大手に限られていました。しかし、パーク24は遊休地に着目することで土地購入というリスクを回避し、大手の間に割って入ることができたのです。

遊休地の所有者には個人の土地オーナーが多いこともパーク24に利するかたちとなっています。法人所有の土地は3~5年で解約されてしまうリスクがありますが、個人所有の土地は5年や10年といった長期間の賃借が可能だからです。

タイムズ駐車場の数は右肩上がりで増え続けています。今でも駐車場の需給ギャップは解消されておらず、駐車場が全く足りていない状況です。タイムズ駐車場は今後も増え続けていくでしょう。同社の独走状態は当面続きそうです。西川光一社長は「同業他社はいますが、ライバル意識を感じているところはないですね。規模感が違います」(企業家倶楽部/123号)と余裕綽々です。

タイムズ駐車場の成長はまだまだ続くと思われます。そして、タイムズ駐車場の成長に合わせてTCPも成長していきます。二つは相乗効果の高い事業といえるでしょう。また、若者を中心とした消費者の占有に対する意識は弱まり、他人とシェアする意識が強まっています。こうした消費者のライフスタイルの変化も追い風となっています。パーク24のカーシェアリング「タイムズカープラス(TCP)」の快進撃は当面止まりそうもなさそうです。

 

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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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