「もんじゅ」廃炉決定も、日本が原発から撤退できぬ根本的な理由

 

そのハンデの克服のために、過去の政治家たちが苦労して手に入れたのが、日米原子力協定であり、高速増殖炉の開発ノウハウであり、六ケ所村の再処理施設なのです。

結果から言えば、日本は未だに常任理事国になれてもいないし、(福島第一での事故で)原発は決して安くないことが明確になったし、核のリサイクルは破綻しているので、本来ならば、「核のリサイクルはあきらめた、原発からも順次、手を引く」と宣言しても良いタイミングです。

しかし、米国の原発ビジネスを引き取る形で東芝・日立・三菱重工の三社が原発事業に大きく依存するようになってしまっているし、「国策」に従って原発に投資してきた電力会社も、天下り先を大量に作ってしまった官僚たちも、「引くに引けない」状況になってしまっているのです。

本来ならば、こんな時には、リーダーシップを持った政治家が原発政策への幕引きをすべきですが、古い価値観に囚われた今の自民党がそんなことをするわけがなく、かといって野党にも期待できない、というのが今の日本の現状です。

しかし、高速増殖炉の実用化の目処が立たなければ、核のリサイクルも成り立たず、日本が備蓄してきた50トンものプルトニウムは破棄すべき、という外圧が強くなることは明確で、私としては、そこに唯一の望みを持っています。

image by: Nife(WikimediaCommons)

 

『週刊 Life is beautiful』より一部抜粋

著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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