中国はカネのためなら嘘もつく? 超富裕層にすり寄る習近平の変節

 

世界のパワーバランス

少し現在の世界のパワーバランスを見てみましょう。

「どの国が大国?」という質問の答えは、いろいろあるでしょう。リアリズムの大家ミアシャイマーさんは、アメリカ中国ロシアを「大国」としています。世界一の戦略家ルトワックさんは、これにイギリスやフランスを加えています。私は、ミアシャイマーさんの考えに賛成です。

ブッシュ(子)時代を見ると、

  • アメリカ=ナショナリズム
  • 中国=グローバリズム
  • ロシア=ナショナリズム

それで、超エリート達は中国を非常に大切にしていました。だから、中国は栄えた。プーチン・ロシアは、超エリートに嫌われていましたが、原油高で繁栄しました。オバマ時代を見ると

  • アメリカ=グローバリズム
  • 中国=グローバリズム → ナショナリズム
  • ロシア=ナショナリズム

というわけで、アメリカ経済は復活し中国は沈み始めました。ロシアは、「クリミア併合」で、超エリートにケンカを売り、「制裁」「原油安」「ルーブル安」で苦境に陥りました。トランプ時代を見ると、

  • アメリカ=ナショナリズム
  • 中国=ナショナリズムからグローバリズムへの転換を目指す?
  • ロシア=ナショナリズム

というわけで、習近平は、行き場を失った超エリートの資金を引っ張ろうとしている。超エリート達はそんな習近平を見直し始めています。超エリート層の声を代弁する男ソロスは、2016年1月「中国経済のハードランディングは不可避!」と宣言し、世界を驚かせました。しかし、2017年1月19日、彼はこんなことを語っています。

習近平国家主席は中国を社会的にもっと開かれた状態にすることも、もっと閉じられた状態にすることも可能だが、中国自体はより持続的な経済成長モデルに向かうだろうと語った。
(ブルームバーグとのインタビュー)

1年でずいぶん変わりました。何が変わったかというと、アメリカ大統領と習近平が変わったのです。

安倍総理の深謀???

最後に、わが国の動きについて触れておきましょう。安倍総理はナショナリストとして登場しました。それで、2013年末から2014年初まで、ずいぶんバッシングされた。特にオバマさんから嫌われていました

しかし、2014年3月の「クリミア併合」、2015年3月の「AIIB事件」で、オバマは、安倍さんを取り込む必要がでてきた。それで、安倍さん、オバマさんの関係はどんどん良くなっていきました。

そして、アメリカに、ナショナリストのトランプ大統領が誕生した。安倍さんとトランプさんは、「ナショナリスト同士で波調が合うはずです。

しかし、安倍さんは、同時に「TPP推進」などと言っている。皆さんご存知のように、トランプさんは、大統領就任直後、「TPP離脱」を宣言しています。安倍さんがトランプをマジで説得する!と考えているのなら大問題です。「公約を早速破れ!」ということですから。

しかし、「グローバリスト達を怒らせないようにTPPを推進するフリをしておこう」ということであれば、立派ですね。

日本は、対中国で、トランプ政権とどこまでも仲良くする必要がある。同時に、超エリートのグローバリスト達と不必要な対立を避ける必要もあります。そういう役割(反グローバリズムトランプさんとプーチンさんにやってもらいましょう。

image by: Drop of Light / Shutterstock, Inc.

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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