知られざる親日国。なぜポーランドの人々は日本に感謝し続けるのか

 

「日本に救援を頼んでは」

ポーランド人孤児たちを救おうと立ち上がったのが、鉄道技師の夫と共にウラジオストックに住んでいたアンナ・ビエルケビッチさんだった。ボランティア組織「ポーランド孤児救済委員会」を組織し、自ら会長となった。

ビエルケビッチさんは、子供たちを救うにはどうしたら良いか、と委員会で相談をした。一人の委員が、日本に救援を頼んでは、と提案したが、年配の女性委員が、昔、宣教師を磔(はりつけ)にしたような国が、他の国の子供たちを助けてくれるだろうか、と質問した。そこに副会長の若い医師ヤクブケビッチ副会長が手をあげて発言を求めた。

僕はシベリア流刑囚の息子ですから、日露戦争にいったポーランド人を知っていますが、日本人を悪くいう人はいませんよ。この春、ウラジオストックまで逃げてきたチューマ司令官たちを助けて、船を出してくれたのは、日本軍じゃありませんか。
(『日本のみなさん やさしさをありがとう』手島悠介・著/講談社)

こうしてアンナ・ビルケビッチさんは日本に渡り、陸軍や外務省にポーランド孤児救済を依頼する。依頼は外務省から日本赤十字に伝えられ、17日後には孤児救済が決定され、さらにその2週間後には帝国陸軍の助力で56名の孤児第一陣がウラジオストクから敦賀経由で東京に到着した。

同時に救済委員会は、一人でも多くのポーランド人孤児を救おうと、あちこちの避難所を探し回った。ビルケビッチさんは語る。

こわれた列車や、兵舎にまぎれこんでいる子どももいました。ポーランド人が住んでいると聞けば、足を棒のようにして、その家庭をたずねました。父親を亡くした家庭では、「せめて子どもだけでも、助け出してください。」と母親たちが、泣いてわたしたちにたのむのでした。
(『日本のみなさん やさしさをありがとう』手島悠介・著/講談社)

しかし、こうして「シベリアで子どもたちを集められたのは、日本軍がいる町だけだった。日本軍の助けなしにはなにもできなかった」と、ビルケビッチさんは回想する。

6,000人のユダヤ人を救った外交官の秘密任務

1939年9月、ドイツのポーランド侵攻により、第2次世界大戦が始まった。ソ連軍もポーランドに侵入し、国土はふたたびドイツとソ連に分割占領されてしまった。

この時のワルシャワ防衛総司令官は、かつてウラジオストックで日本に救われたチューマ将軍であった。そしてその指揮下でレジスタンス(抵抗)運動の中核となったのが、シベリア孤児だったイエジ青年だった。シベリア孤児たちを中核とするイエジキ部隊は、孤児院を秘密のアジトとして様々な抵抗活動を展開するが、ナチスの捜索の手から孤児院を何度も救ったのが、日本大使館であったことは、「多くのポーランド人が日本に救われた。知られざる1920年の感動秘話」で紹介したとおりである。

大戦中の日本とポーランドとの関係では、もう一人、意外な人物が登場する。ナチスに追われた6,000人ものユダヤ人に日本へのビザを発給して救ったリトアニア領事代理の杉原千畝である。1939年11月、大戦勃発の直後に日本人居住者のいないバルト海沿岸のリトアニアの首都カウナスに日本領事館が設けられたのは、いかにも不自然であるが、その領事代理・杉原の任務はポーランド軍との協力関係を築くことだった。

日本は防共協定を結んだばかりのドイツがソ連と不可侵条約を結んだことに強い不信感を抱き、独ソ双方の情報収集を強化する必要を感じた。そこで目をつけたのが、大戦前からドイツの隅々に諜報網を張り巡らせていたポーランド軍であった。杉原はポーランド軍参謀本部の情報将校たちや、リトアニアにおけるポーランド諜報組織「ヴィエジュバ(柳)」、さらにはロンドンでの亡命政府傘下の軍事組織「武装闘争同盟」と接触して、情報を収集した。

一方、ポーランドの諜報員たちは、日本や満州国のパスポートを得て自由に行動し、さらにドイツやバルト・北欧諸国の日本公館に通訳などの名目で雇ってもらうことで、安全を確保できた。さらにポーランドの諜報機関や抵抗組織は、リトアニア経由でベルリン、モスクワ、東京を往復していた日本の外交クーリエを利用して、ポーランド国内やロンドン亡命政府との連絡をとることができたのである。

建前上は敵対関係にある日本とポーランドが、陰ながらここまでの広範かつ密接な協力が築けたのは、日露戦争前夜からの長い信頼関係があったからであろう。

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