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早く言ってよぉ。60歳からでも間に合う年金受取額を増やす裏ワザ

老後資金の心強い基盤となるのは、やっぱり年金。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、60歳前後になってもまだ間に合う「年金受給額をできるだけ増やす裏ワザ」を紹介しています。年金の免除部分を収める「追納」や、「付加年金」という制度を上手く利用する方法、今のうちからしっかり学んでおいたほうがよさそうです。

60歳前後になっても年金をできるだけ増やしたいならこの方法!

年金額を増やす手はいろいろあるにはあるんですが、今日はメジャーなやり方。というわけで事例。

1.昭和32年3月1日生まれの女性(2月28日で60歳。新しい年齢は誕生日の前日になるから)。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

今は支給開始年齢である60歳からの老齢厚生年金の報酬に比例する部分の年額50万円(月額4万1,666円)を受給中。現在は短時間労働者として厚生年金には加入していない。給与月額は12万円。

この人の年金記録。

ア.20歳になる昭和52年(1977年)2月から平成2年(1990年)6月まで国民年金保険料納付済(161ヶ月)。なぜ昭和52年2月から国民年金加入かというと、3月1日生まれで2月28に歳をとるから。だから2月分から保険料納付義務が生じる。

イ.平成2年(1990年)7月から平成18年(2006年)6月まで厚生年金(192ヶ月)。

ウ.平成18年7月から平成20年(2010年)6月まで国民年金保険料4分の1免除(24ヶ月)。

エ.平成20年7月から平成26年3月まで未納(69ヶ月)。

オ.平成26年4月から60歳到達月の前月の平成29年1月(ここまで年金保険料納付義務あり)まで国民年金保険料全額免除(34ヶ月)。

年金月数の数え方の一例(参考メルマガ記事)

老齢厚生年金(報酬比例部分)50万円。で、65歳まではこの年金額で続いてしまうんですが、65歳からは老齢基礎年金が支給され始めるので年金総額は増えます

老齢基礎年金は国民年金から支給されますが、国民年金の全体の期間は161ヶ月+厚生年金加入の部分192ヶ月+4分の1免除の24ヶ月+国民年金保険料全額免除34ヶ月。未納期間除く。

ちなみに国民年金保険料全額免除は老齢基礎年金の2分の1に反映(平成21年3月以前は老齢基礎年金の3分の1に反映)。基礎年金の2分の1が税金だから。

国民年金保険料4分の1免除というのは、本来の年金額の8分の7の金額に相当する。

国民年金保険料免除がどのように老齢基礎年金に反映するのか?(手書き図説明参考記事)

このままだと、老齢基礎年金額はいくらか。

平成29年度老齢基礎年金満額77万9,300円。

779,300円÷480ヶ月×{161ヶ月+192ヶ月+(24ヶ月÷8×7)+(34ヶ月÷2)}=779,300円÷480ヶ月×391ヶ月=63万4,805円(月額5万2,900円)

よって、65歳からは老齢厚生年金50万円+老齢基礎年金63万4,805円=113万4,805円月額9万4,567円)となる。

さて、まだこの女性は65歳まで5年くらいありますよね。だから何とかまだ年金は増やせます

まず、過去10年以内(今月からであれば平成19年3月以降の間)の免除(4分の1免除の16ヶ月と全額免除の34ヶ月)の部分の保険料を納める(免除部分を納める場合を追納という。年金事務所で追納用の納付書を発行してもらう必要がある)。

なお、直近5年以内である、平成24年3月から平成26年3月までの25ヶ月間の未納期間は、国民年金保険料の「後納」という措置で老齢基礎年金を増やせますが、とりあえずこの記事では省いています。

国民年金保険料後納(日本年金機構)平成30年9月までの措置

追納する場合は一番古い部分から納めないと返金されてしまうので注意(返金は還付請求書が年金事務所から送られてくるので、自分で請求しなければならない)。

3年度以前の保険料を追納する場合は、当時の保険料に一定の加算金が付く為、当時よりやや多めに保険料を支払わなければならない

国民年金保険料平成28年度追納額(日本年金機構)

そして、今月(平成29年3月)から65歳到達月の前月(平成34年1月)までの59ヶ月国民年金に再度加入する(任意加入)。

※ 参考

一応、任意加入と共に国民年金基金に加入する事も可能。

すると、老齢基礎年金額はどうなるか。

老齢基礎年金→77万9,300円÷480ヶ月×(161ヶ月+192ヶ月+4分の1免除(8ヶ月÷8×7)+16ヶ月+34ヶ月+59ヶ月=469ヶ月)=77万9,300円÷480ヶ月×469=76万1,441円

ちなみに分母の480ヶ月というのは国民年金保険料を納めれる最大月数。年額だと12万6,636円(76万1,441円-63万4,805円)増えました

なお、60歳から65歳までの任意加入ができる間は希望により付加年金の保険料も合わせて納付可能。もしこの女性が付加年金の保険料(月額400円)も国民年金保険料と一緒に納めるなら、更に200円×59ヶ月=1万1,800円増えます

※ 注意

国民年金基金に加入する場合は付加年金は納められないから注意。すでに国民年金基金に付加年金分が含まれているから。

国民年金基金(国民年金基金連合会HP)

だから、老齢厚生年金50万円+老齢基礎年金76万1,441円+付加年金1万1,800円=127万3,241円(月額10万6,103円)となる。厚生年金や共済組合で20年以上、または、厚生年金と共済組合合わせて20年以上の期間が有る配偶者がいる場合は、この女性の生年月日を見ると振替加算4万4,900円(平成28年度価額)もプラスになる事もある

加給年金と振替加算(日本年金機構)

なお、60歳から65歳の途中で厚生年金に加入すると国民年金の任意加入は出来なくなり、喪失(加入から脱退って事)という形になる。

厚生年金は70歳まで加入出来るから、厚生年金に加入出来るのであれば70歳まで老齢厚生年金を増やすという事になる。

ちなみに65歳以降は下記のリンクのような年金の増やし方もあります。あまり利用されてる制度ではありませんが、余裕があれば検討する価値はあるかもしれません。

不安しかない年金額を、最大42%もあっさり増せる現実的な裏ワザ

※追記

老齢基礎年金の受給権が発生する65歳誕生日(誕生日の前日)を迎えると、過去の国民年金保険料を納めて増やすという事は基本的には出来ないが、この事例の女性は国民年金保険料に任意加入している場合は少し異なります。

仮に国民年金保険料納付の時効である2年以内にこの任意加入している部分の保険料を未納にしていた場合は、65歳を過ぎても時効の過去2年以内であればそれを納付する事により、65歳時に遡って金額を変更してもらう事は出来ます(再裁定という)。65歳過ぎての任意加入の部分の保険料を納付する場合は年金事務所に一旦相談を

あと、国民年金保険料免除の過去10年追納は65歳誕生日の前日を迎えた時点で完全不可になる。今は過去5年以内の未納部分の保険料を納める後納制度(平成30年9月までの措置)もありますが、この後納も老齢基礎年金の受給権が発生する65歳になると納付不可

国民年金保険料後納制度(日本年金機構)

なお、老齢基礎年金を例外的に65歳前から貰う「年金の繰り上げ」をした場合も不可になる。

image by: Shutterstock.com

 

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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