アインシュタインの警告
明治日本が目指した富国強兵は、西洋社会の闘争的世界に、日本が参戦することを意味していた。国家の自由と独立を維持するためには、それ以外の選択肢はなかった。しかし、闘争的な世界観は「和をもって貴し」とする日本古来の世界観とは相容れないものであった。
また富国強兵を実現するために、明治日本は西洋の科学技術を学んだ。しかし、近代科学の根底には、自然を征服の対象として、分析し、利用しようとする姿勢があった。それは自然と 一体化しようとする日本人の生き方とは異なるものであった。
西洋近代科学を尊敬し、アインシュタインを熱狂的に歓迎した日本国民の姿勢は、彼が賛嘆した日本人の伝統的な生き方とはまた別のものであった。両者の矛盾対立について、アインシュタインはこう警告している。
たしかに日本人は、西洋の知的業績に感嘆し、成功と大きな理想主義を掲げて、科学に飛び込んでいます。けれどもそういう場合に、西洋と出会う以前に日本人が本来もっていて、つまり生活の芸術化、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保って忘れずにいて欲しいものです。
(同上)
科学技術の進展から、人類は核兵器を持ち、地球環境を危機に陥れてきた。アインシュタインが賛嘆した人間どうしの和、自然との和を大切にする日本人の伝統的な生き方は、いまや全世界が必要としているものである。
文責:伊勢雅臣
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