【書評】全メディアから袋叩き。なぜ百田尚樹氏はめげないのか?

 

『永遠の0』の誕生秘話が素敵だ。仕事を減らして執筆活動に励んでいると、妻が来て聞く。その原稿いつ終わるの、いま家計が大変なの、と深刻。原稿は半分くらい書き進み、乗ってきたところで一気に書きあげたい。「とりあえず、書いたところまで読んでくれへんか」とプリントアウトの束を渡す。

3時間後、妻は再びやってきてこう言う。「家計のことは私が何とかやりくりするから、これを仕上げて下さい」。10年前のこのときの言葉を思い出すと今も感謝の気持ちでいっぱいになるという。500万部越えの大ベストセラーになったが、その時は出版のあても、まして売れるかどうかも分からなかった。

数か月後、原稿を完成、幸運にも出版できた。小説家として第二の人生に漕ぎ出すことができた。原稿を読んだ妻は、いま夫がやるべきはテレビの仕事を復活させることでなくこの原稿を書き上げることだと思ったのだ。臆面もなくこんなエピソードを出して、と思う人もいるだろうが、わたしは感動した。

百田が自分の悪口を検索して、それを読んで大笑いしているので家族はあきれ果て、あの神経は理解できない、あれは鋼のメンタルやで、と言ったという話をしていたら編集者が食いつき、どうしたら百田のようなメンタルを持てるのか、それを書いてくれということで出来た本。新書判一冊だからすぐに読了。

残念ながら、これ読んでも「鋼のメンタルは持てない。メンタル強化メソッドが書かれた本ではない軽量級。よし、明日から言いたいことをもっと言ってみよう、と思えた人は素直ないい読者だ。あとがきで、「空気を読むな」という。それだったら、わたしは達人だ。いいことはあまりないが……。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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