平成27年5月より完全施行された「空き家対策特別措置法」。放置している空き家が「特定空家等」に指定されると固定資産税が6倍に跳ね上がり、さらに改善を促す通告を無視し続ければ強制的に解体され、その費用が建物の所有者に請求される、というものです。今回の無料メルマガ『「教養」としての不動産取引』では、著者で不動産活用コンサルタントの楯岡悟朗さんが「特定空家等」に指定されないための対策と、空き家管理の重要性について詳述しています。
空き家を管理することの重要性
今週は空き家を管理することの重要性についてです。遠方の方からは特に空き家の活用でご相談を受けます。
そのたびに「なぜこうなるまで放っておいたのか…」と思うことがよくあります。
空き家特措法が成立してからずいぶん経ちました。成立当初は、マスコミでもしきりに空き家問題がクローズアップされたこともあり、空き家所有者の関心は非常に高いものでした。ただ、
- 固定資産税が減税措置を受けられなくなる
- 所有者に替わって行政に強制的に解体される(※ 行政代執行)
など、空き家を放置して課せられるペナルティは、「特定空家等」に指定されてはじめて発生します。
実際のところ、特定空家に指定されるような保存状態が悪い空き家がどれだけあるかというと、現場レベルでいうとそれほど多くないというのが実感です。
当時は心配していた人も、いまは楽観的に考えている人の方が多いのではないでしょうか。
当社に空き家の管理を依頼されているオーナーさんの物件は、特定空き家に指定されるような、保存状態の悪い空き家ではありません。多少放置していたとしても問題ない物件ばかりです。
では、そのような物件は空き家の管理を行う必要はないかというとそうではありません。これは実際あった事例です。当社が相談を受けた時、物件は以下のような状態でした。
- 建物に問題はない
- 庭は荒れ放題
- 室内はゴミだらけ
室内を見なければ、どこにでも存在する普通の一戸建てです。特定空家等に指定されるどころか、見方によってはいまだに誰かが住んでいるようにも見えます。
そこでオーナーと相談の結果、人に貸すことにしました。しかし、建物外観は問題なかったとしても、室内の状態はゴミの多さ含めてひどい状態でした。
- 敷地内の水道管から水漏れ(※ 放置が原因で気づかず)
- お風呂の換気扇は腐食(※ 放置が原因)
- 網戸破れ多数
- 窓枠腐食により開閉不能(※ 放置が原因)
- 水道の蛇口腐食(※ 放置が原因)
- キッチン取り換え(※ ある意味放置が原因)
壁紙やフローリングは当然交換が必要でしたが、上記1~6は月に1度や2度、巡回管理を行うだけで防止することができる問題です。結局、これら箇所を修繕することで大きな費用がかかることになってしまいました。
とはいえ、修繕費用は数年で回収できるので投資効率としては悪くありません。今までは何ももたらさないどころか、固定資産税が垂れ流されるマイナス資産だったものが、今後は収益を生み出す資産に生まれ変わるわけですから。
このように空き家を適正な状態で維持し続けることのメリットは大いにあるのです。空き家は構造物ですが生き物でもあります。利用・使用されることでいつまでも適正な状態を維持し続けることが出来るのです。
事情によって、すぐに利用・使用できないのであれば、多少の費用を払ってでも、きたるべきその時のために管理を依頼すべきだと考えます。
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