萩生田官房副長官の「ご発言」を紛れ込ませた、文科省「最後の一刺し」

 

およそ、加計学園の獣医学部の新設が国家戦略といえるようなものとは思えない。まともに申請すれば文科省の認可が下りないから、特区でということになった。

だが、特区でも不要なものは不要だ。ただでさえ、大学は多すぎる。ほんとうに税金を使わねばならないところに投入してこそ規制緩和の意味がある

安倍首相はそんなことにお構いなしだ。とにかく、自分が主導する国家戦略特区の実績をつくりたいのである。

6月19日夜に放映されたNHKの「クローズアップ現代」では、文科省の現役職員が匿名で出演し、加計学園問題について「これは安倍総理の関係する総理マターだ。十分な議論のないまま結論まで行ってしまった」と証言した。

その番組では、萩生田副長官が文科省の局長に語った昨年10月21日付けのメモが暴露された。「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる」などと書かれている。

これも牧野課長補佐が書いたと言われている。クローズアップ現代を見て、文科省はすぐにこのメモを公表したが、萩生田氏がこの発言を否定し激怒したため、松野文科大臣、義家副大臣が「正確さを欠いていた」と謝罪するぶざまなことになった。

文科省内では、誠実な仕事ぶりで定評のある牧野課長補佐に同情する声が強いと聞く。部下たちの思いを受けとめながらも、萩生田氏の剣幕を鎮めるために、大臣、副大臣が、あたふたと謝罪に駆けつけるというのも、情けない限りだ。

安倍首相の「徹底調査を」という単なる強がりを真に受けて、一度は、萩生田氏の関与を裏づけるメールの公表に踏み切ったのである。文科省職員の松野大臣らに対する信頼は完全に崩れ落ちたのではないか。

ともあれ、前川前次官や現職官僚の“反乱”により、加計学園・獣医学部新設にからむ権力乱用の真相が首相周辺にまで迫ってきたのは確かである。

省益優先の官僚体制を打破するのはいいが、その代りに官邸支配が暴走して政治の私物化が進んでは、どうにもならない。安倍首相は深刻な危機に直面していることを自覚するべきだろう。

image by: WikimediaCommons

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