内閣府は官邸の意のままに動く組織になっている。国民からはその仕事が見えない。いわばブラックボックスだ。安倍政権はこれをあたかも官邸を守る“要塞”のように使い、手勢を養っている。
官邸に陣取る官房長官と三人の副長官。テレビを見ていたら分かるように、いつも安倍首相の後ろにひかえて、記者の質問ぶりに鋭い目を光らせているあの大男が、萩生田副長官だ。
彼が官房副長官になった今も、加計学園系列の千葉科学大名誉客員教授であるのは、加計孝太郎理事長が安倍首相の30年来の親友であることと無関係ではないだろう。萩生田氏自らブログに安倍、加計両氏とバーベキューを楽しむ写真をアップしているほどだ。
そんな萩生田氏が、「広域的に」「限り」を獣医学部設置の条件に加えるよう指示し、内閣府の藤原審議官が手書きで挿入したとしたら、これはもう誰が考えても、安倍首相との「共謀」を疑わざるを得ない。
萩生田氏の関与を裏づける内閣府職員からのメールは、周知の通り、「文書の存否を確認できない」と言い張っていた文科省の再調査によって出てきたものだ。
官邸は、箝口令を敷かれながらも文科省の現職官僚から「文書は存在する」という証言が湧き上がってくる状況を見て、存在を認めないかぎり報道は終息しないと判断し、文科省の再調査を指示。「対象を拡大して調べたら出てきた」と発表させたうえで、内閣府が防波堤になって、安倍官邸への波及を食い止めようと画策した。
ところが、計算外のことが起きた。文科省はこの「萩生田副長官指示」メールを紛れ込ませ、民進党の玉木雄一郎議員の言う「最後の一刺し」をやってのけたのである。松野文科相は、省内の不満のガス抜きをはかるためにも、官邸からの叱責を覚悟で認めたと見える。
文科省の再調査で文書の存在を認める以上、圧力をかけたとされる内閣府の調査も要求される。そこで内閣府は言われる前に形だけの調査をした。その結果は、「総理のご意向」「官邸の最高レベル」と記した文書は確認されず、発言した職員もいなかったと、大方の想像通りだった。
しかし、文科省の出してきたメールの「一刺し」があまりにきつかったため、山本大臣は部下をスパイ呼ばわりするほどに、うろたえたのだろう。
加計学園の獣医学部新設をめぐる文科省文書の発覚で浮き彫りになったのは、文科省職員たちの官邸、内閣府に対する不信感だろう。









