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人の自転車をカジュアルに盗むやつが、警察に語りがちな「言い訳」

メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官Tさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。今回は、夜の繁華街でなぜか多いという「自転車の盗難」について。警察官が問い詰めた際、放置自転車に乗っていた彼らは、どんな言い逃れをしようとしたのでしょうか?

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吉田:自転車の取り締まりは複雑でわけわからなくなりそうですが、地域ごとに違うのは煩わしく感じませんか?

Tさん:所轄ごとにルールがあったりなかったりとか、警察機関というのは地域ごとに特殊な部分もありますのでこれは難しい問題ですね。ですが、自転車の盗難に関してはどこの所轄も厳しく対応してますよ。私たちのところでは飲み屋が多い繁華街での夜のパトロールを重点的に行なってます。コンビニやパチンコ屋に停めてある自転車を盗む人が多いんですね。酒を飲んだ後に徒歩が面倒になって自転車を盗んで自宅へ帰るような方ばかりなんですが、盗難したら道路交通法違反ではなく犯罪ですからペナルティーのレベルが違います。

吉田:自転車の盗難ってそんなカジュアルに盗んでいくもんなんですね!

Tさん:所有者の方が鍵をしないで置いておくケースが多いのも問題なんですが、盗んだ側の言い訳ですと「不法に放置されていたから警察に届けてやろうと思ったんだよ」と語る方が圧倒的に多い。しかし、コンビニですと防犯カメラがハッキリと捉えてますのでその嘘は立証できます。パチンコ屋だと厳しいですけどね(苦笑)。パチンコ屋から盗む人は”道端に放置されていたから歩行の邪魔になるので交番に届けるところだった”との言い訳が多いですが、ここから警察官との水掛け論になることもしばしば。

吉田:それはどういうことですか?

Tさん:盗んだ側は歩行者が邪魔になることからの善意で放置されていた自転車を交番へ届けようとしていた……と言うんですけども、まぁ私たちは頭から自転車を盗んだ者の目線で対応しますから、「交番へ届けようとしているのにどうしてこの放置自転車に乗って走っているんですか? 他人の所有物なんですからそれを乗って届けるよりも押して届けに来てくださいよ」と追及します。すると相手は「わざわざ走れる状態の放置自転車をこっちは善意で交番に届けようと思っているのにどうして押してまでしてそんな面倒なことしなくちゃならないんだよ」と言ってくるんですね。そこから盗んだ・盗んでないの問答的なやりとりになってしまうので、こちらが負けないように対応するのは「あなたが善意で自転車を届けてくれるのは大変有難いのですが、お酒飲んで自転車を走行させるのは道路交通法違反ですから!」と釘を刺すと大抵おとなしくなります(笑)。

吉田:おー、面白い話ですね。そんな言い訳の面倒な輩には自転車指導警告カードも発行するのでさえ大変そうですが……。

Tさん:放置自転車を交番へ届けようとしていたと言い張りますから、そんなもんを発行でもしたら余計に面倒なことになりますので、それこそお互いの言い分が交錯してしまい水掛け論が終わらなくなります。ですので厳重注意で相手の住所等のインフォメーションを得るようにしてます。

吉田:自転車を盗んだのか、盗んだのではなく交番に届けようとしていたのか、その辺りの判別は難しいですけど……あきらかにクロ判定で皆さん対応しているんですよね?

Tさん:もちろんですよぉ(笑)。1ミリたりとも善意で届けようとしてるなんて思ってません

吉田:まぁ夜は自転車の盗難が多いということですが、無灯火で走っている自転車が多いじゃないですか? ああいうサイクリストに違反キップを切っている姿を僕は見たことがないんですが……。

Tさん:これも所轄によって様々なのですが、私が所属している署では違反キップを適用している警察官はいませんね。夜の無灯火はクルマからしたら本当に気付きませんし危険すぎるのですが、厳重注意をしつつ職務質問の対象にしている感じです。厳しいところでは徹底して無灯火運転を取り締まっている所轄もあります。大抵そういう所轄では無灯火の自転車と車両との接触事故が3度4度と多発すると住民の方々から声高く聞こえてきますからね。

吉田:最近ではタイヤに接触させて自走式で点灯させるライトのほうが随分少なくなりましたから、無灯火で走っている自転車がいましたら徹底的に違反キップを切るぐらいの行動を警察官には積極的にお願いしたいですけどね。電池式で100円ショップでも行けば簡単に入手できるライトなんか山ほど売ってるんですから、無灯火で走る自転車は正直言って自殺行為だと思います。本当に危ないし、運転しているサイクリスト側は自身だけが視界はいいかもしれませんが、他の車からしたら見えないってことをもっと理解するべきです。

Tさん:そうですよね。おっしゃるとおりです。自転車の取り締まりは特に夜間が多いんですけども、基本は盗難自転車探しか無灯火、あとは二人乗りの自転車を見つけては職務質問というテンプレートな対応が主ですから、その際は徹底して交通違反という認識をさせたいところです……が、私の勤めている所轄の範囲ではたまたまなんですが、自転車と車両が接触する重大な交通事故が年間通してごく僅かなんです。そうなると自転車に対してそこまで徹底しての取り締まりがされなくなってしまい、事故が毎月毎月多発しているエリアでない限り積極的に取り締まりがされないという不自由な警察のやり方には、正義感の強い若い警察官なんかは不満タラタラだったりしますけどね。

吉田:結局、自転車ごときで交通違反としてキップ切りまくってしまうと、一件一件を処理していくのが面倒という……のが答えなんでしょうか?他の警察官の方から「小さな違反ばかりを検挙していると仲間内からバカにされる」とか伺ったことがありましたし、「沢山小さな違反でキップを切っていると処理を忘れたりすることもたまにあったりして他の仕事にも差し障りもある」とかいうことも聞いたことがあるんです。

Tさん:吉田さん……凄く答えづらい質問してきますねぇ(苦笑)。

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私を知る方の多くは「ビデオゲーム関係に強い映画人」なるマスメディア人的イメージが定着してますが、パーキングメーターが59分までならば厳密的に路上駐車が未納状態で可能という事実を2015年に公表したことで環境が一変。以降多くの相談事や取材申請等話を伺いたいとのリクエストが多数来まして、少しでも人助けができるならばと思い、自称・交通ジャーナリストの肩書で有料メルマガへこの度参戦させて頂くことになりました。運転者への有益情報や会員の方々から募った質問を代表して警察へ聞きに行ったり等、お得なネタ盛り沢山!

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