民進党・新代表に「枝野」はあっても「前原」はあり得ない理由

 

リベラルvs保守という構図になるならそれも結構

といっても、さすがに前原も、安倍首相と同じような9条加憲論を掲げたのでは代表選を戦えないと自覚しているのだろう、その主張を控えて、むしろ安倍首相の「2020年施行」と日程ありきで議論を早々に打ち切ろうとするかの姿勢に対する批判に重点を置く作戦をとるようだが、そんなことをしても頭隠して尻隠さず、タカ派路線の尻は隠しようもない。妙に迂回せずに正面から議論に応じたほうがいいだろう。

そうすることによって、憲法観のみならず外交政策から次期総選挙へ向けての野党選挙協力、とりわけ共産党との関係まで含めて、「リベラルvs保守決着つける戦い』」(7月29日付朝日新聞の見出し)となるなら、それはそれで大変結構なことである。

野党協力に関しては、枝野は岡田克也代表時代の幹事長として参院選での共闘路線を推進した実績があるし、それをさらに進める以外に自民党に勝てる道筋はないと見切っているようである。しかし前原は「共産党はシロアリ」などと、好き嫌いは別にして現に共闘を組んでいる公党に対して下品かつ無礼な口利きをして、私はその一事を以てしてこの大事な時期の野党第一党の代表に相応しくないと断定する。彼はまた「天皇制自衛隊日米安保消費税で共通認識を持てる政党としか組まない」とも言っているが、そこまで基本的な柱で一致するなら一緒の党になってしまえばいい訳で、統一戦線ということの根本を理解していないことを曝け出している。

また野党協力には「脱原発の合意が不可欠で、この点で枝野は3・11当時、官房長官として毎日の会見で「直ちに影響はない」と言い続けたということで、脱原発派の方々からは悪いイメージで見られている。しかし、私に言わせればそれは余りに子供じみた感情論で、あの状況で何政権であろうと誰が官房長官であろうと、徒に不安を煽るようなことは言える訳がない。彼の脱原発志向はハッキリしていて、蓮舫が「30年代」を「30年」に繰り上げようとして連合とモメて行き詰まったことを「意味がない」と批判し、「できるだけ早く脱原発。民進党が野党でいれば遅れますよ、政権を獲ればどんどん早まりますよ、ということでいいのではないか」と考えている。その通りで、野党間では「できるだけ速やかに脱原発自然エネ拡大で合意すればいいのである。

この際、民進党は、リベラルvs保守が相乗りしたまま路線的には「中道」などと意味不明なことを言ってきた積年の悪弊を払拭して、枝野を代表にスッキリとリベラルの旗を掲げ直し、それが気に入らない前原、野田、細野豪志ら主として松下政経塾系は出て行くなら出て行って貰えばいいのではないか。数は多少減っても、そのほうが次の選挙は遥かに闘いやすくなる。しかし枝野がリベラルに徹し切れないと同党の立ち直りは果たせない。

 

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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